AI契約書のチェックを専門家に依頼するときに準備しておきたいもの
ChatGPTなどの生成AIを使えば、契約書のたたき台を短時間で作れるようになりました。
「まずはAIに契約書を作ってもらい、その内容を専門家に確認してもらう」
このような進め方も、契約書を作成する一つの方法です。
ただし、AIが作った契約書を専門家にチェックしてもらう場合、契約書そのものだけを渡せば十分というわけではありません。
契約書は、実際の取引内容を前提として作られるものだからです。
契約書だけを見ても、「この条項は必要なのか」「この条件で本当に問題ないのか」を判断できないケースがあります。
そこで今回は、AIで作った契約書のチェックを専門家に依頼するときに、あらかじめ準備しておきたいものについて解説します。
1.まずはAIで作った契約書そのもの
当然ですが、最初に必要になるのは、AIで作成した契約書です。
WordやPDFなど、現在使用している形式のままでも構いません。
可能であれば、AIにどのような指示を出して契約書を作成したのかも残しておくとよいでしょう。
たとえば、
- 「業務委託契約書を作成してください」
- 「できるだけ発注者側に有利な内容にしてください」
- 「フリーランスとの契約を想定してください」
- 「著作権の帰属について明確にしてください」
といったプロンプトです。
AIがどのような前提で契約書を作成したのかが分かれば、専門家も内容を確認しやすくなります。
ただし、AIとのやり取りをすべて提出する必要があるとは限りません。
「どのような条件をAIに伝えたのか」が分かる程度に整理しておけば十分な場合もあります。
2.誰と誰が契約するのか
次に重要なのが、契約当事者についての情報です。
たとえば業務委託契約書なら、
- 自社が発注者なのか受託者なのか
- 相手方は法人なのか個人なのか
- 相手方の会社名・屋号
- 契約を締結する予定の相手
などを整理しておきます。
同じ「業務委託契約書」でも、自社が発注する側なのか、仕事を受ける側なのかによって、確認すべきポイントは変わります。
AIに「業務委託契約書を作って」とだけ指示して作った場合には、ここが曖昧になっていることもあります。
専門家に依頼する前に、「自分はこの契約でどちらの立場なのか」を整理しておくと、チェックがスムーズです。
3.実際にどのような取引をするのか
契約書以上に重要なのが、実際の取引内容です。
たとえば「Web制作の業務委託契約書」でも、
- Webサイトを制作するのか
- デザインだけを依頼するのか
- 保守・管理まで含むのか
- 素材は誰が用意するのか
- 修正回数に制限があるのか
- 納品後の不具合にはどう対応するのか
などによって、必要な契約条件は変わります。
そのため、専門家に依頼するときには、契約書だけでなく、
「実際には何をする契約なのか」
を説明できるようにしておくことが大切です。
長い説明文を用意する必要はありません。
箇条書きで、
「○○を依頼する」
「納期は○月○日」
「報酬は○万円」
「月○回まで修正」
「納品後も○か月間は修正対応」
などと整理しておくだけでも、かなり違います。
4.すでに決まっている条件
契約書をチェックしてもらう際には、すでに当事者間で決まっている条件も伝えておきましょう。
たとえば、
- 報酬額
- 支払時期
- 契約期間
- 納期
- 納品方法
- 修正回数
- 解約条件
- 秘密保持
- 著作権の帰属
- 損害賠償の範囲
- 再委託の可否
などです。
特に重要なのは、口頭やメール、チャットなどで既に合意している条件がある場合です。
AIが作った契約書に、その条件が反映されているとは限りません。
契約書と実際の合意内容が食い違っていないかを確認するためにも、専門家にはできるだけ正確な情報を伝えましょう。
5.「ここが心配」というポイント
専門家に依頼するときは、気になっているところを遠慮なく伝えて構いません。
たとえば、
「著作権を相手に渡してしまって大丈夫なのか心配」
「途中で契約をやめられるようにしたい」
「相手が納期を守らなかった場合が心配」
「損害賠償が大きくなりすぎないか確認してほしい」
「この契約書で自社が不利になっていないか知りたい」
といった内容です。
これは非常に重要です。
契約書のチェックを依頼する目的は、単純に誤字脱字を探すことではありません。
「この契約で自分が本当に実現したいことが、契約書に反映されているか」
を確認することにもあります。
そのため、「何となくこの条項が気になる」というレベルでも、専門家に伝えておくとよいでしょう。
6.契約書だけでは分からない事情
さらに、契約に関係する事情があれば伝えておきましょう。
たとえば、
「今回が初めての取引」
「今後も継続的に取引する予定」
「相手から提示された契約書をAIで修正した」
「以前、似たような取引でトラブルになった」
「今回だけの特別な条件がある」
などです。
契約書に直接書かれていない事情でも、契約内容を確認するうえで重要になることがあります。
特に、「なぜこの契約書を作ったのか」という背景は、専門家にとって重要な情報です。
7.相手方から提示された資料
AIで契約書を作った場合でも、相手方から何らかの資料を受け取っているのであれば、それも準備しておきましょう。
たとえば、
- 相手方から提示された契約書
- 見積書
- 発注書
- 仕様書
- 業務内容の説明資料
- メール
- チャットでのやり取り
などです。
契約書だけを確認すると問題がないように見えても、メールや仕様書を見ると、契約書に書かれていない重要な条件が見つかることがあります。
特に、契約書と実際のやり取りに食い違いがないかは確認しておきたいポイントです。
8.「どこまでチェックしてほしいのか」を決めておく
専門家に依頼するときは、チェックしてほしい範囲についても考えておきましょう。
たとえば、
「誤字脱字だけ確認してほしい」
という依頼と、
「契約内容そのものに問題がないか確認してほしい」
という依頼では、意味が大きく異なります。
また、
「自社に不利な条項がないか確認してほしい」
「著作権について重点的に確認してほしい」
「損害賠償について確認してほしい」
など、特に重点的に見てほしい部分がある場合には、最初に伝えておくとよいでしょう。
AI契約書は「完成品」ではなく「たたき台」と考える
AIで作った契約書は、短時間で契約書の形を整えるうえでは非常に便利です。
一方で、AIはその取引の当事者ではありません。
「この会社が何を大切にしているのか」
「今回の取引で何を避けたいのか」
「相手との関係を今後どうしていきたいのか」
といった事情を、AIが正確に把握しているとは限りません。
そのため、AIで作った契約書を専門家に確認してもらう場合には、
契約書+取引内容+決まっている条件+気になっていること
をセットで伝えることが重要です。
契約書だけを渡して「問題ありませんか?」と聞くよりも、必要な情報を整理してから依頼したほうが、より具体的なチェックにつながります。
まとめ
AIを使えば、契約書のたたき台を自分で作ることは難しくなくなりました。
だからこそ、これからは「AIが作った契約書をどう確認するか」が重要になります。
専門家にチェックを依頼するときは、最低限、
- AIで作成した契約書
- AIへの指示内容
- 契約当事者
- 実際の取引内容
- すでに決まっている条件
- 気になっているポイント
- 契約に関係するメールや資料
などを整理しておくとよいでしょう。
そして大切なのは、契約書だけを見ても、その契約が自社にとって適切なのかまでは分からないことがあるということです。
AIには「契約書の文章を作る」という役割を任せ、専門家には「その契約書が実際の取引内容や自社の希望に合っているかを確認する」という役割を任せる。
このように役割を分けることで、AIを活用しながら、より実態に合った契約書へ仕上げていくことができます。
「AIで契約書を作ったけれど、このまま使って大丈夫なのか分からない」という場合には、契約書だけでなく、実際の取引内容や気になっている点も整理したうえで、専門家への確認を検討してみるとよいでしょう。
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大野