ChatGPTに契約書を作らせるときの注意点|AIに任せてはいけない部分とは?
「ChatGPTに契約書を作ってもらえば、専門家に依頼しなくてもよいのでは?」
最近では、実際にChatGPTなどの生成AIを使って契約書を作成する方が増えています。
「業務委託契約書を作って」
「秘密保持契約書のひな形を作成して」
「この契約書に不利な条項がないか確認して」
このように入力するだけで、一定の形式を備えた契約書案が作成されます。
実際、契約書のたたき台を作るという意味では、ChatGPTは非常に便利なツールです。
しかし、ここで注意しなければならないのは、ChatGPTが作成した契約書が、そのまま自分の取引に適した契約書になるとは限らないということです。
契約書は、文章として自然に書かれているかだけでなく、
- 実際の取引内容と合っているか
- 想定されるトラブルに対応できるか
- 自社にとって不利な内容になっていないか
- 条項同士に矛盾がないか
- 実際にその条項を運用できるか
といった点まで考えて作成する必要があります。
この記事では、ChatGPTに契約書を作成させる場合の注意点と、AIに任せてはいけない部分について解説します。
ChatGPTで契約書を作ること自体は問題ない
まず、ChatGPTを使って契約書のたたき台を作ること自体が問題というわけではありません。
むしろ、契約書の作成にAIを活用することで、ゼロから文章を作成する負担を大きく減らすことができます。
例えば、
- 契約書の基本的な構成を整理する
- 一般的な条項の例を確認する
- 条文の表現をわかりやすくする
- 契約書の抜け漏れを確認するための視点を得る
- 自分で作成した文章を整理する
といった用途では、ChatGPTは有効なツールです。
ただし、ChatGPTは常に正しい情報を出すとは限りません。
OpenAI自身も、ChatGPTは誤った情報や誤解を招く内容を生成する可能性があり、重要な情報については信頼できる情報源で確認するよう案内しています。
したがって、ChatGPTを契約書作成に利用する場合は、
AIに契約書を完成させてもらう
というより、
AIを使って契約書作成の作業を効率化する
という考え方が重要です。
ChatGPTに契約書を作らせるときの5つの注意点
1.契約書の内容をAIに丸投げしない
最も重要なのは、ChatGPTに「契約書を作って」とだけ指示して、出てきた文章をそのまま使わないことです。
例えば、
業務委託契約書を作成してください。
という指示だけでも、それらしい契約書は作成できます。
しかし、業務委託契約書といっても、実際の取引内容はさまざまです。
例えば、
- Web制作を依頼する契約
- システム開発を依頼する契約
- SNS運用を依頼する契約
- コンサルティングを依頼する契約
- ライティングを依頼する契約
- デザイン制作を依頼する契約
では、必要となる条項や注意すべきポイントが異なります。
成果物を納品する契約なのか、継続的に業務を行う契約なのか。
報酬は固定額なのか、時間単価なのか、成果報酬なのか。
著作権は誰に帰属するのか。
修正回数に制限を設けるのか。
契約終了後も秘密保持義務を残すのか。
このような具体的な取引条件が明確になっていなければ、AIが作成した契約書も一般的な内容にとどまります。
契約書で重要なのは、文章を作ることではなく、実際の取引に合わせて契約内容を設計することです。
2.AIは「実際の取引」を完全には理解していない
ChatGPTに契約書を作成させる際には、できるだけ具体的な情報を入力する必要があります。
例えば、
業務委託契約書を作ってください。
よりも、
当社がクライアントから依頼を受け、Webサイトの制作を行う。制作期間は3か月で、報酬は月額30万円。納品後の修正は2回までとし、追加修正は別途費用とする。制作したデザインやプログラムの権利関係についても定めたい。
というように、具体的な取引内容を伝えた方が、より実態に近い契約書案になります。
しかし、それでもAIが自動的にすべての問題点を把握できるとは限りません。
例えば、依頼者が意識していない次のような問題があります。
- 納品後に修正を何度まで求められるのか
- クライアントからの返事が遅れた場合、納期はどうなるのか
- 素材の権利関係は誰が確認するのか
- 第三者の著作権を侵害した場合、誰が責任を負うのか
- 制作途中で契約を終了された場合の報酬はどうするのか
- 追加作業の料金はどのように決めるのか
これらは、単に「契約書を作ってください」と指示するだけでは出てこない問題です。
契約書に書くべき内容は、取引の中に潜んでいるリスクを発見することから始まります。
この部分は、AIに任せるだけでは十分とは限りません。
3.「抜けている条項」にAI自身が気づかないことがある
AIに契約書を作成させる場合、多くの人は書かれている条項を確認します。
しかし、契約書で問題になるのは、書かれている内容だけではありません。
本来必要だった条項が抜けていることも大きな問題になります。
例えば、業務委託契約書であれば、
- 業務内容
- 報酬
- 支払時期
- 契約期間
- 契約解除
- 秘密保持
- 損害賠償
- 知的財産権
などが一般的な検討事項になります。
しかし、実際の取引によっては、
- 成果物の検収
- 修正回数
- 納期の変更
- 再委託
- データの取扱い
- 競業避止
- 契約終了後のデータ返還
- 生成AIの利用
- 第三者素材の利用
なども重要になる場合があります。
ChatGPTに「この契約書に問題はありますか?」と聞いても、そもそも契約書に書かれていない問題をすべて発見できるとは限りません。
AIに契約書を確認させる場合には、
この契約書に問題はありますか?
だけではなく、
当事者Aが〇〇を行い、当事者Bが〇〇を受ける取引です。この取引を前提に、契約書に不足している条項を列挙してください。
のように、取引の実態を伝えることが重要です。
それでも、最終的には人による確認が必要になることがあります。
4.「AIが大丈夫と言ったから大丈夫」と考えない
ChatGPTに契約書を確認させると、
この契約書に大きな問題はありません。
一般的な契約書として問題なく使用できます。
といった回答が出ることがあります。
しかし、ここで注意しなければならないのは、
「AIが問題ないと言ったこと」と「実際に問題がないこと」は別である
ということです。
ChatGPTは、質問の仕方や与えられた情報によって回答が変わります。
また、AIは回答を自信のある文章で表示することがありますが、回答の自信の強さと正確性は同じではありません。OpenAIも、ChatGPTは誤った内容を自信を持って回答する場合があると説明しています。
特に契約書については、
この契約書は大丈夫ですか?
という質問よりも、
受託者側に不利な条項を指摘してください。
発注者側にとって不足している条項を指摘してください。
この取引でトラブルになりそうな場面を10個挙げてください。
この契約書の条項同士に矛盾がないか確認してください。
など、具体的な視点を与えて確認する方が有効です。
ただし、これらを行ったとしても、AIの回答を最終的な保証と考えるべきではありません。
AIに任せてはいけない4つの部分
では、ChatGPTに契約書を作成させる場合、具体的にどのような部分をAIに任せてはいけないのでしょうか。
1.どのようなリスクを契約書で防ぐのかを決めること
契約書を作る前に、
この契約書で何を防ぎたいのか?
を考える必要があります。
例えば、同じ業務委託契約書でも、
「報酬を確実に回収したい」
という人と、
「納品後の追加修正を防ぎたい」
という人では、重視すべき内容が異なります。
また、
「顧客情報を守りたい」
「制作物の著作権を確保したい」
「途中解約された場合の損失を抑えたい」
など、取引によって契約書の目的は変わります。
AIは、与えられた情報から条文を作成することはできます。
しかし、その契約で何を最も重視するのかを決めるのは、実際に取引を行う当事者です。
そして、そのリスクを契約書のどの部分で、どのように対応するのかを設計する必要があります。
2.自分のビジネスに必要な条件を判断すること
AIは一般的な契約書を作成することはできます。
しかし、一般的な契約書が、そのまま自社にとって最適な契約書とは限りません。
例えば、一般的な契約書では、
損害賠償の上限は、受領した報酬額を上限とする。
という条項が使われることがあります。
しかし、取引の内容によっては、
- 報酬額が非常に低い
- 損害が大きくなる可能性がある
- 故意や重大な過失については上限を設けたくない
という場合もあります。
逆に、相手方との契約関係を重視する場合には、過度に一方的な条項を入れることが取引上の問題になる場合もあります。
重要なのは、
一般的に使われている条項か
ではなく、
自分の取引にとって本当に適切な内容か
という点です。
3.契約書全体のバランスを判断すること
契約書は、条文を一つずつ確認すればよいというものではありません。
条文同士の関係も重要です。
例えば、
- 契約期間は1年間
- いつでも解除できる
- 解除後も一定の義務が残る
- 報酬は契約期間分を前提としている
という内容が同時に存在する場合、全体としてどのような結果になるのかを考える必要があります。
また、
「契約を解除できる」と書いてあっても、
- どのような場合に解除できるのか
- 何日前に通知する必要があるのか
- 解除後の報酬はどうなるのか
- すでに提供した業務はどう扱うのか
などが明確でなければ、実際の場面で問題になる可能性があります。
契約書は、条文の集合ではありません。
一つの取引を全体としてどのようにコントロールするのかを考え、その上で条文を組み立てる必要があります。
4.最終的にその契約書を使ってよいか判断すること
ChatGPTに契約書を作らせた場合、最後に、
この契約書を実際に使ってよいのか?
という判断が残ります。
ここで重要なのは、契約書の文章がきれいかどうかではありません。
- 自分の取引内容と合っているか
- 必要な条件が入っているか
- 不要なリスクを負っていないか
- 相手方との関係で現実的な内容か
- 実際に運用できる内容か
を確認する必要があります。
この判断をAIの回答だけに任せるのではなく、必要に応じて専門家に相談することも選択肢になります。
ChatGPTに契約書を作らせるときの具体的な使い方
では、ChatGPTをどのように使えばよいのでしょうか。
ステップ1:まず取引内容を整理する
いきなり「契約書を作って」と入力するのではなく、まず次のような情報を整理します。
- 誰と誰の契約か
- 何をする契約か
- いつからいつまでか
- 報酬はいくらか
- いつ支払うのか
- どのような成果物があるか
- 途中で契約を終了できるか
- どのようなトラブルが想定されるか
ステップ2:AIに契約書の構成を考えさせる
次に、契約書の条項を作る前に、
この取引で発生し得るトラブルを列挙してください。
この取引で契約書に定めておくべき事項を整理してください。
といった使い方をします。
この段階では、AIにいきなり完成品を作らせるのではなく、契約書に何を盛り込むべきかを考えるための壁打ち相手として使う方法が有効です。
ステップ3:契約書のたたき台を作成する
その上で、
上記の取引内容とリスクを前提として、契約書のたたき台を作成してください。
と依頼します。
この方が、単純に「業務委託契約書を作ってください」と指示するよりも、実際の取引に近い契約書を作成しやすくなります。
ステップ4:複数の視点から確認する
作成された契約書について、
受託者側に不利な条項を指摘してください。
発注者側から見た場合の問題点を指摘してください。
契約書に不足している条項を指摘してください。
条項同士に矛盾がないか確認してください。
といった形で、複数の視点から確認します。
ただし、これらはあくまで契約書を検討するための補助です。
AIの回答だけをもって、「この契約書なら問題ない」と判断することには注意が必要です。
契約書に入力する情報にも注意が必要
ChatGPTに契約書を作成させる場合、入力する情報にも注意が必要です。
契約書には、
- 氏名
- 住所
- 電話番号
- メールアドレス
- 会社情報
- 顧客情報
- 取引金額
- 秘密情報
などが含まれることがあります。
生成AIサービスに個人情報や秘密情報を入力する場合は、利用するサービスの規約や設定、データの取扱いを確認する必要があります。
個人情報保護委員会も、生成AIサービスへの入力情報がAIの学習データとして利用される場合などについて、個人情報保護法上の問題が生じ得るとして注意喚起しています。
そのため、契約書をAIに入力する際には、
- 実名を仮名に置き換える
- 住所や連絡先を削除する
- 会社名を「A社」「B社」とする
- 具体的な金額を必要に応じて置き換える
- 秘密情報をそのまま入力しない
といった対応を検討する必要があります。
ChatGPTで作った契約書は「大丈夫」なのか?
結論として、ChatGPTで作った契約書だから直ちに問題があるわけではありません。
一方で、
ChatGPTが作ったから大丈夫
ということもありません。
契約書の品質を左右するのは、AIを使ったかどうかだけではなく、
- どのような情報を与えたか
- 取引の内容を正確に整理できているか
- 必要なリスクを把握できているか
- 条項を適切に設計できているか
- 完成した契約書を適切に確認できているか
です。
AIは、契約書作成の作業を大きく効率化できます。
しかし、契約書の目的を決め、取引上のリスクを発見し、そのリスクにどのように対応するかを設計する部分まで、AIに完全に任せることはできません。
AI時代だからこそ、専門家の価値は「作ること」から「契約を設計すること」へ移っているともいえます。
AIで作った契約書に不安がある場合は
すでにChatGPTや契約書作成サービスを使って契約書を作ったものの、
このまま使ってよいのか不安
自分の取引に合っているのかわからない
どこを修正すればよいのかわからない
という場合もあるでしょう。
その場合、必ずしも契約書を最初から作り直す必要はありません。
AIで作成した契約書をもとに、
- 実際の取引内容を確認する
- 契約書の目的を整理する
- 不足している条項を確認する
- 条項同士の矛盾を確認する
- 必要な部分を修正する
- 契約書全体を実務に合わせて再構築する
という方法もあります。
南本町行政書士事務所では、AIやひな形を使って作成した契約書についても、実際の取引内容を確認したうえで、契約書の内容を整理・修正する「AI契約書完成サポート」を行っています。
AIで作った契約書をそのまま使うのではなく、実際の取引に合わせて契約書を完成させるという考え方です。
「ChatGPTで作った契約書を使っても大丈夫なのか」
「AIで作成した契約書のどこを確認すればよいのかわからない」
という場合は、契約書の内容だけでなく、実際の取引内容とあわせてご相談ください。
まとめ
ChatGPTに契約書を作成させることは、契約書作成を効率化する有効な方法です。
しかし、AIに任せてはいけない部分もあります。
特に重要なのは、
- 契約書で防ぎたいリスクを決めること
- 実際の取引に必要な条件を判断すること
- 条項全体のバランスを考えること
- 最終的にその契約書を使ってよいか判断すること
です。
ChatGPTは、契約書のたたき台を作るための便利なツールです。
しかし、契約書は文章を作れば完成するものではありません。
AIが作った契約書を、実際の取引に合わせてどのように設計し、必要な内容に仕上げるか。
これからの契約書作成では、AIを使うか使わないかではなく、AIをどこまで活用し、どこから人が判断するのかが重要になります。
- ChatGPTで作成した契約書を確認してほしい
- AIで作った契約書が実際の取引に合っているか確認したい
- AIで作成した契約書に不足している条項を知りたい
- 契約書を一から作るのではなく、AIで作った案を修正したい
このような場合は、AIで作成した契約書をもとに、実際の取引内容に合わせて契約書を整理・修正する「AI契約書完成サポート」をご利用いただけます。
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大野