行政書士は書類作成の専門家です。作成した書類を代行して提出することも可能です。

当事務所も大阪に拠点を置く、行政書士の事務所です。

行政書士が作成できる書類は1万~2万種類といわれています。

その所以は何でしょうか。

行政書士法の規定

行政書士法から考えてみましょう(行政書士法1条の2)。
条文には以下のような行為を報酬を得て行うことができることが規定されています。

  1. 官公署に提出する書類の作成
    役所などへの許可書、認可書、届出書などがあげられます。
  2. 権利義務に関する書類の作成
    契約書、遺産分割協議書、内容証明書などがあげられます。
  3. 事実証明に関する書類の作成
    議事録、実地調査に基づく図面書類などがあげられます。

行政書士の仕事は少ない?

どうでしょう、作成できる書類を「分類」すると少なく感じるかもしれません。

行政書士が作成できる書類は1万~2万種類といわれています。

そうです。許可書一つにしても「営業許可」「設置許可」など様々な種類があります。
そして、その許可を必要としている職業・職種は何種類も存在します。
産業廃棄物処理場設置許可・看板設置許可・原子炉設置許可・公園施設設置許可など数多く存在します。

これが上記1.2.3.それぞれに存在するとなると、1万~2万種類の書類が存在しているといわれてもおかしくはありません。

それだけ行政書士の仕事が多く存在するということになります。

行政書士の仕事はたくさん

行政書士の仕事は行政書士法1条の2のされる書類作成業務にとどまりません。

行政書士法1条の3に以下のような行為を報酬を得て行うことができると規定があります。

  1. 官公署に提出する書類を提出する手続き
  2. 官公署に提出する書類に係る許認可等に関して行われる聴聞または弁明の機会の付与の手続き、その他の意見陳述のための手続き
  3. 官公署に提出する書類に係る許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申し立ての手続きの代理、その手続きについて官公署に提出する書類の作成(特定行政書士のみ可能 行政書士法1条の3第2項)
  4. 行政書士が作成することができる契約その他に関する書類を代理人として作成すること
  5. 行政書士が作成することができる書類の作成について相談に応じること

書類作成に加え、手続き代理業務・相談業務も可能であることが規定されています。

官公署に提出する書類をかける専門家であるとしながら提出ができないとなると不便ですし、官公署に提出する書類・権利義務関係に関する書類について相談に応じることができないとなると、そもそも書類を書くことは難しいですから、当然といえば当然な規定かもしれません。

特定行政書士

平成26年に行政書士法が改正され、特定行政書士という分野ができました。

特定行政書士は、行政書士が行うことができる業務に加えて、不服申し立ての業務についても行うことができるようになります。

不服申し立て制度とは、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為に関して、不服があるものが行政機関に対し不服を申し立て、審査をさせることを言います。

この不服申し立ては、行政機関に対して紛争解決を求めるものであるため(行政機関が行政審判を行うときなどにとる訴訟手続に準ずる手続き 準司法手続)、弁護士が取り扱う業務でした。

行政書士に行政機関に関する書類を作成してもらったにもかかわらず、不服申し立ては弁護士に依頼しなければならないとなると手間がかかってしまいます。

いっそのこと、行政書士に依頼したいというニーズが多くありました。

そのニーズにこたえるために行政書士法が改正され、特定行政書士制度が創設されました。

特定行政書士になれば、建設業の許可申請に対する不許可処分がなされた場合、申請者に代わって不服申し立てをすることが可能となります。

愛知県行政書士会HPより転載

特定行政書士が不服申し立てをすることができる要件

特定行政書士による不服申立てをするためには、以下の要件に当てはまることが必要となります。

  1. 行政書士が関与することのできる行政手続きであること(行政書士が作成できる書面であること)
    例えば、建設業許可、産業廃棄物処分業許可、農地法許可などの許可申請、及び著作権登録、保育所開設の認可などの登録・認可申請手続です。これらについては特定行政書士による不服申立てができます。 これに対し、裁判所・検察・法務局に提出する書類(弁護士・司法書士業務)、特許申請書類(弁理士業務)、税務申告書類(税理士業務)、年金機構や労働局に提出する書類(社会保険労務士業務)などは、行政書士は作成をすることができません。従って、これらについては特定行政書士による不服申立てはできません。
  2. 行政書士が作成した書面を提出したことにより不許可などの不利益処分がなされたこと
    不服申立てを行う特定行政書士が関与した申請のみならず、他の行政書士が作成し、不許可となった場合でも特定行政書士による不服申立てができます。 これに対し、申請者本人が作成した書面を本人が提出し不許可となった場合は、特定行政書士による不服申立てはできません。
  3. 特定行政書士による不服申立てであること
    すべての行政書士が、不服申立ての代理ができるわけではありません。日本行政書士会連合会が実施する「特定行政書士法定研修」を修了(全講義の受講及び考査に合格)した「特定」行政書士のみが、不服申立ての代理業務を行うことができます。

愛知県行政書士会HPより引用

不服申立て

〇対象

  1. 行政庁の性分その他公権力の行使に当たる行為(許認可の取消し等)に関して不服がある場合
    →もう一度審査をし直してくれ
  2. 法令に基づく申請から相当の期間を経過しても、行政庁の不作為(法令に基づく申請に対し何らの処分をもしないこと)がある場合
    →手続きを進めてくれ

〇種類

  1. 審査請求(原則)
  2. 再調査の請求(個別法に特別の定めがある場合に限り)、審査請求の前に処分庁に対して行う
  3. 再審査請求(個別法に特別の定めがある場合に限り)、審査請求の裁決後に個別法に定める行政庁に対して行う

〇請求先

  1. 審査請求
    処分庁の最上級行政庁(大臣、都道府県知事、市町村長など)
    上級処分庁がない場合は処分庁
    上級行政庁が主任の大臣や外局としておかれる庁の長等である場合には、その大臣や庁の長
  2. 再調査の請求
    処分庁
  3. 再審査請求
    個別法で定める行政庁

政府広報オンラインより転載

業務のまとめ

  1. 書類作成業務
    ・官公署に提出する書類の作成
    ・権利義務に関する書類の作成
    ・事実証明に関する書類の作成
    ・許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申立ての手続きについて官公署に提出する書類の作成(特定行政書士のみ可能)
  2. 手続代理業務
    ・官公署に提出する書類の代理提出
    ・許認可等に関して行われる聴聞または弁明の機会の付与の手続き、その他の意見陳述のための手続きの代理
    ・許認可等に関する審査請求、再調査の請求、再審査請求等行政庁に対する不服申し立ての手続きの代理(特定行政書士のみ可能)
  3. 相談業務
    行政書士が作成できる書類の作成について相談に応じること

業際に注意

行政書士ができる仕事はたくさんあると考えられています。

ただし、行政書士法1条の2第2項では、行政書士が作成できる書類と分類される場合であっても、他の士業(司法書士、税理士、社会保険労務士など)が作成する書類であると法律上に定めがある場合については、行政書士の仕事(作成できる書類)にはならない旨が定められています。

いわゆる「独占業務」の範囲の問題です。

行政書士としてできる仕事は多くありますが、常に他の士業の業務に抵触していないか注意しながら業務に取り組むことが必要な職業でもあります。