会社を設立しようとする際、出資が必要です。

出資というと現金によるものと考えるのが通常だと思いますが、現金以外のものでも出資が可能となっています。

会社を設立しようと考えている方であれば、現物出資という言葉を聞いたことがあるのではないでしょうか。

今回は、現物出資について解説したいと思います。

現物出資とは

現物出資とは、金銭以外の財産による出資を言います。

金銭以外の財産による出資である「現物出資」であっても、出資金として扱うことが可能で、現金による出資なく、現物出資のみによる会社設立が可能となっています。

金銭以外の財産であることから、その価値(評価額)が過大に評価されるおそれがあり(評価が一定ではない)、会社法では現物出資について規制を設けています。

規制が設けられている理由は、現物出資の目的物が過大に評価されることによって、設立時には経済基盤の脆弱な会社を保護し、ひいては株主・会社債権者を保護するためです。

具体例

現物出資の具体例としては、以下のものがあげられます。

  1. 動産
    自動車・パソコン・OA機器
  2. 不動産
    土地や建物
  3. 債権
    ゴルフ会員権など
  4. 有価証券
    株式や債券
  5. 知的財産権
    特許権や表証券など
  6. 事業の全部または一部

現物出資の規制

現物出資をする際、原則として裁判所が選任する検査役の調査を受ける必要があります(会社法第33条)。

以下に該当する場合には、検査役の調査は不要です(会社法第33条10項各号)。

  1. 現物出資の目的物が500万円の超えない場合
  2. 市場価格のある有価証券であって市場価格を超えていない場合
  3. 現物出資の目的物の価額が相当であると弁護士、税理士、不動産鑑定士等との証明を受けた場合

現物出資ができる者

現物出資は誰でもできるわけではありません。

現物出資ができるのは、発起人だけです。

発起人とは、定款に署名又は記名押印した人です。
もっと簡単に言うと、会社設立の手続きを行う責任者です。

現物出資者が発起人に限られるのはなぜでしょうか。

①形式的理由
発起人以外の人は、金銭の払い込みを行うことしか規定がされていません(会社法第63条1項)。
発起人については金銭の払い込みと金銭以外の給付を予定しています(会社法第34条1項)。
この対比から、現物出資は発起人にしかできないとされています。

②実質的理由
現物出資の目的物の価値(価格)が定款に記載されている価値(価格)より著しく低い(不足)場合には、現物を出資した者が無過失責任として瑕疵担保責任を負うことになります(会社法第52条2項本文かっこ書き)が、その責任を履行することができる資力については、発起人にしかわからないためです(発起人以外の人の資力については確認することが難しいため)。

現物出資する際の定款記載事項

現物出資をする場合、その内容を定款に記載する必要があります。

  1. 現物出資をする者の名前と住所
  2. 現物出資の目的物とその価額
  3. 現物出資者に対して与える設立時株式の種類と数

最後に

現物出資は、金銭に代わるもので出資方法となります。
多額の金銭を用意せずとも、資本金を増やすくことが可能となるメリットがあります。

ただ、一定の金額を超える財産を出資する場合には、検査役や弁護士等の証明が必要となり、手続きが煩雑となるデメリットがあります。

メリットデメリットを踏まえ、会計面・税務面との兼ね合いを踏まえたうえで現物出資の方法を採用するかどうかを決めるのをおすすめいたします。

南本町行政書士事務所 大阪