社労士試験の日に考える「働く」と契約書|労働条件と契約条件は同じではない
今日は、2026年度(令和8年度)の社会保険労務士試験の日です。
第58回社会保険労務士試験は、2026年8月23日(日)に実施されています。
社会保険労務士試験といえば、労働基準法、労働安全衛生法、雇用保険法、健康保険法、厚生年金保険法など、働く人や会社に関わるさまざまな法律・制度が出題される試験です。
受験されている方にとっては、長い時間をかけて勉強してきた知識を、今日一日で答案にする日。
試験が終わるころには、きっと大きな疲労とともに、さまざまな思いが残るのではないでしょうか。
今回は、そんな社労士試験の日に、少し違った角度から「働くこと」と「契約書」について考えてみたいと思います。
「働く」と「契約書」は切り離せない
人が働くときには、さまざまな法律や制度が関係します。
給与、労働時間、休日、休暇、社会保険、雇用保険、退職など、働くことには多くのルールがあります。
一方で、実際の仕事では、それだけではありません。
「何をするのか」
「いつまでにするのか」
「いくら支払うのか」
「どのような方法で仕事をするのか」
「成果物の権利は誰に帰属するのか」
「秘密情報をどのように扱うのか」
こうした具体的な条件を、当事者同士で取り決める場面があります。
そのときに登場するのが、契約書です。
つまり、法律や制度が「働くこと」に一定のルールを与える一方で、契約書は、その取引で当事者が何を約束したのかを具体的に残すものともいえます。
「働く人=労働者」とは限らない
ここで注意したいのが、「仕事をしている人がすべて労働者とは限らない」ということです。
会社に雇用されて働く人であれば、労働法上のさまざまなルールが関係してきます。
しかし、個人事業主やフリーランスとして仕事を請け負う場合には、雇用契約とは異なる契約関係になることがあります。
例えば、
- Webサイト制作を依頼する
- デザインを外部の事業者に依頼する
- 動画制作を依頼する
- システム開発を外注する
- コンサルティングを依頼する
- 継続的に業務を委託する
といったケースです。
仕事の内容だけを見ると、「会社で働いている人」と似ているように感じることもあります。
しかし、契約の形や実際の仕事の進め方によって、関係する法律や当事者の権利義務は変わってきます。
だからこそ、「仕事をお願いする」という一言だけでは、契約関係を十分に説明できません。
契約書があれば、それですべて解決するわけではない
では、契約書を作っておけば安心なのでしょうか。
ここも、そう単純ではありません。
例えば業務委託契約書に、
「受託者は、委託者の指示に従って業務を行う。」
と書かれていたとします。
一見すると、普通の条項に見えるかもしれません。
しかし、実際の仕事では、
- 毎日決められた時間に出勤している
- 仕事の進め方について細かく指示を受けている
- 休む場合に会社の許可が必要
- 報酬が毎月固定されている
- 他の仕事をすることが事実上難しい
など、さまざまな事情が存在することがあります。
このように、契約書に書かれた名称や一つの条項だけを見て、その契約関係を考えることはできません。
契約書に何と書いてあるのかだけではなく、実際にどのような関係で仕事をしているのか。
そこまで考える必要があります。
これは、契約書を作るときにも、確認するときにも重要なポイントです。
「業務委託だから大丈夫」ではない
近年は、会社と個人が業務委託契約を結ぶケースも珍しくありません。
会社側からすると、
「社員ではなく業務委託だから、雇用契約書は必要ない。」
と考えることもあるでしょう。
反対に、仕事を受ける側からすると、
「業務委託契約書に書いてあるから、この条件で問題ない。」
と考えてしまうこともあります。
しかし、契約書はタイトルだけで内容が決まるものではありません。
「業務委託契約書」という名前が付いていても、実際の業務内容や仕事の進め方、報酬、責任分担などを確認していかなければなりません。
また、業務委託については、取引の内容によって関係する法令もあります。
そのため、「業務委託だからこのひな形で作ればいい」と単純に考えるのではなく、実際の取引内容を整理したうえで契約書を作ることが重要になります。
社労士試験と契約書は、実は遠い話ではない
社労士試験は、労働や社会保険に関する知識を問う試験です。
一方、行政書士が扱う契約書は、業務委託契約書や秘密保持契約書、売買契約書など、さまざまな取引に関するものです。
一見すると、別々の分野に見えるかもしれません。
しかし、実際のビジネスでは、
「誰が、誰に、何をしてもらうのか」
「その対価として、いくら支払うのか」
「どこまで責任を負うのか」
「問題が起きたときにはどうするのか」
という問題が、さまざまな場面で出てきます。
その意味では、「働くこと」と「契約すること」は、実務の中でつながっています。
契約書を作るときは「仕事の実態」から考える
契約書を作るとき、最初から条文を書き始める必要はありません。
むしろ重要なのは、その前に取引の内容を整理することです。
例えば業務委託契約書なら、
- どのような業務を依頼するのか
- 業務を行う場所はどこなのか
- いつまでに行うのか
- 報酬はいくらなのか
- 支払時期はいつなのか
- 成果物がある場合、その権利はどうするのか
- 再委託は認めるのか
- 秘密情報をどのように扱うのか
- 契約を終了するときはどうするのか
といったことを整理していきます。
そして、その内容を契約書に落とし込んでいきます。
契約書は、条文を並べることそのものが目的ではありません。
実際の取引を整理し、それを当事者間の約束として文章にすること。
そこに契約書を作る意味があります。
社労士試験を受験された皆さんへ
今日は、長い間勉強してきたことを一日で出し切る日です。
選択式試験は午前、択一式試験は午後に行われ、択一式は3時間30分に及びます。
ここまで勉強を続けてきたこと自体、簡単なことではありません。
試験が終わった後は、できた問題が気になったり、逆に「あの問題を間違えたかもしれない」と考えてしまったりするかもしれません。
それでも、まずは今日一日を終えたことを大切にしてください。
そして、もし今回の試験をきっかけに、労働や社会保険だけでなく、実際の仕事の現場で交わされる「契約」にも興味を持っていただけたらと思います。
働くことには、法律があります。
そして、取引には契約があります。
その二つが重なるところには、会社と働く人、発注者と受注者、それぞれの立場から考えなければならない問題があります。
社労士試験の日だからこそ、そんな「働くことと契約書」の関係について、少し考えてみるのもよいかもしれません。
本日受験された皆さん、本当にお疲れさまでした。
これまで積み重ねてきた努力が、良い結果につながることを願っています。
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感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野