社員やバイトが突然来なくなったら?「何日休んだらクビ?」と復職できるかを契約から考える
「社員が突然来なくなった」
「アルバイトが連絡もなくシフトに来なくなった」
「何日くらい来なかったら、もう辞めたことにしていいの?」
「1か月後に突然『また働きたい』と言ってきたら、復職させなければならないの?」
会社を経営していると、このような問題に直面することがあります。
いわゆる「飛んだ」という状態です。
しかし、法律上は「○日間無断欠勤したら、自動的に退職」「○か月来なければ会社は自由にクビにできる」といった単純なルールになっているわけではありません。
ここでは、社員・アルバイト・パートが突然出勤しなくなった場合について、労働契約や就業規則との関係から考えてみます。
「何日休んだら退職になる」という決まりはある?
まず気になるのが、
何日間、無断で休んだら退職になるのか?
という問題です。
結論からいうと、法律上、一律に「○日休んだら退職」と決められているわけではありません。
労働者と会社との間には労働契約があります。
労働者は、契約に従って労務を提供し、会社はその対価として賃金を支払います。
そのため、正当な理由なく出勤しないことは、労働契約上の義務に違反する可能性があります。
ただし、
「無断欠勤した」
↓
「契約違反だから即日解雇」
というわけにもいきません。
解雇については、労働契約法第16条により、客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められない場合には無効とされています。厚生労働省も、解雇については労働者の落ち度の程度や行為の内容、会社が受けた損害、故意・悪意の有無、やむを得ない事情など、さまざまな事情を考慮すると説明しています。
つまり、「何日」という数字だけで決まる問題ではありません。
では、就業規則に「○日無断欠勤したら退職」と書いてあれば?
ここで重要になるのが、就業規則や労働契約の内容です。
会社によっては、無断欠勤や長期間の欠勤について、就業規則に一定のルールを設けている場合があります。
たとえば、
- 正当な理由なく無断欠勤を続けた場合
- 会社からの連絡に応じない場合
- 一定期間、無断欠勤が継続した場合
などを懲戒事由や解雇事由として定めているケースです。
これは、会社側が従業員の突然の離脱に対応するうえで重要なルールになります。
ただし、就業規則に書いてあるから、その条件に該当すれば必ず自由に解雇できる、というわけではありません。
厚生労働省も、解雇事由については就業規則に定める解雇事由への該当性が重要な争点となる一方、それだけでなく、解雇そのものが相当であるかどうかも検討されるとしています。
したがって、
「無断欠勤○日=自動的にクビ」
という単純な発想ではなく、
どのような行為を問題とし、どのような手続きを経て、どのような処分をするのか
まで考えておくことが大切です。
「飛んだ=退職した」と考えていいの?
ここも注意が必要です。
従業員が突然来なくなったからといって、会社が一方的に
「もう辞めたんだな」
と判断してしまうのは危険です。
本人には、
- 体調不良
- 事故
- 家族の事情
- スマートフォンの故障
- 精神的な問題
- その他のやむを得ない事情
などがある可能性もあります。
もちろん、単純に「働くのが嫌になった」というケースもあるでしょう。
しかし、会社側からすると、本人が退職の意思を示していない以上、まずは本人の意思や事情を確認することが重要です。
連絡がつかない場合には、電話やメール、書面など、会社として適切に連絡を試みた記録を残しておくことも重要になります。
「いつ電話したのか」
「何回連絡したのか」
「メールを送ったのか」
「本人からどのような返答があったのか」
こうした記録が、後になって重要になることがあります。
「無断欠勤したから即日解雇」は大丈夫?
原則として、慎重に考える必要があります。
解雇は会社側から一方的に労働契約を終了させる行為です。
労働契約法第16条では、解雇について「客観的に合理的な理由」と「社会通念上の相当性」が求められています。
したがって、
「昨日来なかったから今日付けで解雇」
という対応が、常に有効になるわけではありません。
たとえば、たった1日の無断欠勤だけで、いきなり解雇することが適切なのか。
本人にどのような事情があったのか。
これまでの勤務状況はどうだったのか。
会社にどの程度の影響が出たのか。
会社から本人に連絡を取ったのか。
就業規則にはどのように定められているのか。
こうした事情が問題になります。
厚生労働省も、1回の失敗だけですぐに解雇が認められるわけではなく、さまざまな事情を踏まえて解雇の正当性が判断されるとしています。
「30日」という数字にも注意
無断欠勤の問題では、
「30日休んだら解雇できる」
という話を聞くことがあります。
しかし、ここには別のルールが混同されていることがあります。
会社が解雇する場合、原則として30日前に解雇予告をするか、30日分以上の平均賃金に相当する解雇予告手当を支払う必要があります。
これは「30日無断欠勤したら解雇できる」という意味ではありません。
つまり、
「30日」という数字は、無断欠勤を退職扱いにするための基準ではありません。
ここは経営者としても勘違いしやすいところです。
アルバイト・パートなら扱いが違う?
「アルバイトだから、来なくなったらすぐ辞めたことにできるのでは?」
と思われることもあります。
しかし、アルバイトやパートであっても労働契約は成立しています。
そのため、無断欠勤や解雇について、正社員とはまったく別のルールになるわけではありません。
特に注意したいのが、契約期間が決まっているアルバイト・パートです。
たとえば、
「2026年4月1日から2027年3月31日まで」
という有期労働契約を結んでいる場合です。
有期労働契約では、契約期間の途中で会社が労働者を解雇するためには、原則として「やむを得ない事由」が必要とされ、期間の定めのない労働契約よりも厳しく判断されます。
つまり、
「アルバイトだから、来なくなったら簡単に契約を切れる」
とも限りません。
契約期間、契約更新の有無、就業規則、勤務実態などを確認する必要があります。
では、突然戻ってきたら復職させなければならない?
これもよくある疑問です。
たとえば、
「3週間くらい無断で来なかったアルバイトが、突然『また働きたいです』と言ってきた」
というケースです。
この場合、
必ず復職させなければならない
とは限りません。
そもそも、その時点で労働契約がまだ継続しているのか、それとも適法に契約が終了しているのかを確認する必要があります。
もし労働契約が終了していないのであれば、単純に「再雇用する・しない」という話ではありません。
一方、適法に退職や解雇によって労働契約が終了しているのであれば、元従業員が戻ってきたいと言ったとしても、会社が当然に再雇用しなければならないわけではありません。
つまり、
「飛んだ後に戻ってきた=当然に復職できる」
でもなければ、
「飛んだ=当然に退職済み」
でもないのです。
ここでも、最初にどのような労働契約が存在し、会社がどのような対応をしたのかが重要になります。
むしろ重要なのは「契約をどう作っておくか」
ここまでの話を見ると、無断欠勤の問題は、単に従業員の勤務態度だけの問題ではないことが分かります。
会社側にとって重要なのは、問題が起きる前に労働契約と就業規則のルールを整えておくことです。
たとえば、
- 勤務日・勤務時間
- 欠勤・遅刻の連絡方法
- 欠勤時に会社へ連絡すべき期限
- 連絡が取れない場合の対応
- 無断欠勤をした場合の扱い
- 懲戒処分に関する規定
- 解雇事由
- 契約期間
- 契約更新の条件
などです。
もちろん、契約書に書けば何でも有効になるわけではありません。
労働関係には労働基準法や労働契約法などのルールがあり、就業規則についても法令や労働協約との関係などを考える必要があります。
だからこそ、
「とりあえずネットにあった雇用契約書を使う」
のではなく、自社の働き方や実際の勤務形態に合わせて契約や社内ルールを設計することが大切です。
「飛んだ従業員」にどう対応するかは、契約を見るところから
従業員が突然来なくなったとき、
「何日休んだ?」
だけを見るのではなく、
「その従業員との間に、どのような労働契約があるのか?」
から確認してみましょう。
そして、
- 雇用契約の内容を確認する
- 契約期間を確認する
- 就業規則を確認する
- 欠勤に関する規定を確認する
- 本人への連絡を試みる
- 連絡・欠勤の経緯を記録する
- 退職なのか、契約継続なのか、解雇なのかを整理する
- 必要に応じて専門家へ相談する
という順番で考えることが重要です。
特に、「もう辞めたことにしよう」「今日付けでクビにしよう」と感情的に処理してしまうと、後から労働契約上のトラブルに発展する可能性があります。
契約書は「働き始めるとき」だけのものではない
労働契約書というと、
「人を採用するときに作る書類」
というイメージがあるかもしれません。
しかし、実際には、従業員との間でトラブルが発生したときにこそ、その重要性が表れます。
「どんな条件で働くことになっていたのか」
「契約期間はいつまでなのか」
「欠勤した場合はどうすることになっていたのか」
「会社と従業員には、それぞれどのような義務があったのか」
こうしたことを確認するための基礎資料になるからです。
従業員が突然来なくなるという事態は、会社にとって決して珍しい問題ではありません。
だからこそ、問題が起きてから慌ててルールを作るのではなく、採用時点で「もし突然来なくなったら」という場面まで想定して、契約や社内ルールを整えておくことが大切です。
「何日休んだらクビにできるのか」という数字だけを決めるのではなく、
どのような場合に、どのような手続きを経て、労働契約をどう終了させるのか。
そこまで考えておくことが、会社と従業員双方のトラブルを防ぐ契約づくりにつながります。
※本記事は一般的な労働契約上の考え方を説明するものであり、個別の解雇・懲戒・退職の有効性を判断するものではありません。実際に従業員が長期間無断欠勤している場合や、解雇・懲戒処分を検討している場合は、個別事情を踏まえて専門家へご相談ください。
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感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野