契約書の「一切責任を負わない」は有効?免責条項を確認するときのポイント
契約書を確認していると、「当社は一切の責任を負わない」「いかなる場合も責任を負わない」といった条項を目にすることがあります。
このような条項を見ると、
「本当に何があっても責任を負わなくていいのか」
「この条項に同意してしまって大丈夫なのか」
「契約書に書いてあれば、すべて有効なのか」
と疑問に感じる方も多いでしょう。
結論からいうと、契約書に「一切責任を負わない」と書かれているからといって、常にそのまま有効になるとは限りません。
免責条項は、契約上の責任をどこまで制限するものなのか、どのような損害を対象としているのか、そして法律上の制限を受けないかを確認する必要があります。
この記事では、契約書の免責条項を確認するときの基本的なポイントを解説します。
「一切責任を負わない」と書けば何でも免責されるのか
契約書は、当事者間の権利義務を定めるものです。
そのため、当事者間でどのような責任を負うのか、反対にどの範囲の責任を負わないのかを契約で定めること自体は、一般的に行われています。
例えば、次のような条項です。
当社は、本サービスの利用によって生じた損害について、一切責任を負わないものとします。
しかし、「一切責任を負わない」と書かれているからといって、どのような場合でも責任を免れるとは限りません。
契約書の条項は、単に文言だけで判断されるものではありません。
実際には、
- 何について責任を負わないのか
- どのような損害が対象なのか
- 免責の原因は何か
- 当事者間にどのような力関係があるのか
- 消費者契約法などの法律に違反しないか
といった点を総合的に確認する必要があります。
つまり、免責条項は「書いてあるかどうか」ではなく、「どのような内容の免責なのか」が重要です。
免責条項とは?
免責条項とは、契約当事者の責任を一定の範囲で制限したり、責任を負わない場合を定めたりする条項です。
例えば、次のようなものがあります。
損害賠償責任を制限する条項
当社は、本契約に関連して相手方に生じた損害について、賠償責任を負わないものとします。
賠償額に上限を設ける条項
当社が負う損害賠償責任の総額は、相手方が当社に支払った金額を上限とします。
間接損害を対象外とする条項
当社は、逸失利益、営業上の損失その他の間接損害について責任を負わないものとします。
特定の原因による損害を免責する条項
天災地変、通信回線の障害その他当社の責めに帰することのできない事由により生じた損害について、当社は責任を負わないものとします。
このように、免責条項には「すべての責任を免除するもの」だけでなく、「責任を一定の範囲に限定するもの」もあります。
実務上は、全面的な免責よりも、責任を負う範囲や賠償額の上限を具体的に定める方法がよく利用されます。
「一切責任を負わない」という条項を確認するときのポイント
1. 何について免責されるのか
まず確認したいのは、「何について責任を負わないのか」です。
例えば、
本サービスの利用により生じた損害について一切責任を負わない
と書かれている場合でも、対象となる損害が広すぎる可能性があります。
一方で、
サービス提供者の責めに帰することのできない事由により生じた損害について責任を負わない
という条項であれば、免責の原因がある程度限定されています。
「一切責任を負わない」という結論だけを見るのではなく、免責の対象となる原因や損害がどのように定められているかを確認することが重要です。
2. 「損害」の範囲が広すぎないか
契約書では、損害賠償の対象が具体的に定められていることがあります。
例えば、
- 直接かつ通常の損害のみ
- 直接損害のみ
- 逸失利益を除く
- 間接損害を除く
- 特別損害を除く
といった定めです。
例えば、次の2つの条項では、責任の範囲が大きく異なります。
当事者は、相手方に生じた一切の損害を賠償する。
一方、
当事者は、通常かつ直接の損害に限り賠償する。
後者では、損害賠償の範囲が限定されています。
契約書を確認するときは、「責任を負うかどうか」だけでなく、「責任を負うとして、どの損害まで対象になるのか」を確認する必要があります。
3. 損害賠償額の上限が定められていないか
免責条項とあわせて確認したいのが、損害賠償額の上限です。
例えば、
当社が負う損害賠償責任の総額は、直近6か月間に相手方が当社に支払った利用料金の総額を上限とする。
という条項です。
この場合、実際に発生した損害が大きくても、契約上の賠償額には上限が設定されます。
ただし、上限額が妥当かどうかは取引内容によって異なります。
例えば、月額1万円のサービスを利用している会社が、そのサービスの不具合によって数百万円の損害を受ける可能性がある場合、賠償額の上限が「直近1か月分の利用料金」とされていれば、利用者側にとっては大きなリスクになる可能性があります。
免責条項を確認するときは、賠償額の上限と実際に想定される損害の大きさを比較することが重要です。
「故意・重過失」まで免責する条項には注意が必要
免責条項で特に注意したいのが、故意や重大な過失がある場合まで免責する内容です。
例えば、
当社は、いかなる場合も一切の責任を負わない。
という条項があった場合、文言上は、当事者の故意や重大な過失によって損害が発生した場合まで免責するように読める可能性があります。
しかし、免責条項の有効性は、契約の種類や当事者の関係、適用される法律などによって異なります。
少なくとも、相手方に故意や重大な過失がある場合まで一律に責任を免除する内容になっていないかは、重要な確認ポイントです。
実務上は、例えば次のように例外を設けることがあります。
ただし、当社の故意または重大な過失により生じた損害については、この限りではありません。
このように、免責条項に例外が設けられているかを確認することが大切です。
消費者との契約では免責条項に法律上の制限がある
事業者と消費者との契約では、免責条項について特に注意が必要です。
消費者契約法では、事業者の損害賠償責任を免除する条項について一定の制限があります。
そのため、
事業者は、いかなる場合も一切の損害賠償責任を負わない。
といった条項を契約書に入れれば、必ず有効になるわけではありません。
特に、事業者の故意や重大な過失による損害まで免責する内容などは、問題となる可能性があります。
また、消費者との契約では、契約書の文言だけでなく、利用規約や申込画面、サービスの表示なども含めて、契約全体を確認する必要があります。
「契約書に書いてあるから大丈夫」と考えるのではなく、法律上の制限を受ける可能性がないかを確認することが重要です。
免責条項があっても、すべての責任がなくなるわけではない
免責条項がある場合でも、その条項がすべての責任を消滅させるとは限りません。
例えば、
本サービスの利用により発生した損害について一切責任を負わない。
という条項があったとしても、実際には、
- 契約書全体の他の条項
- 免責条項が置かれた目的
- 取引の内容
- 損害が発生した原因
- 当事者間の交渉経緯
- 適用される法律
などを踏まえて解釈されることになります。
また、免責条項が広すぎる場合、相手方にとっては契約上のリスクが非常に大きくなります。
特に、サービスを提供する側の責任がほとんどなく、利用者側だけが大きなリスクを負う内容になっている場合は注意が必要です。
免責条項は「誰にとって有利な条項か」を確認する
契約書のチェックでは、条項の意味だけでなく、「誰にとって有利なのか」を考えることも重要です。
例えば、次のような条項があるとします。
当社は、本サービスに関連して発生した一切の損害について責任を負わないものとします。
この条項は、サービス提供者にとっては有利な内容です。
一方、サービスを利用する側から見ると、
「サービスに問題があっても責任を追及できないのではないか」
というリスクがあります。
契約書を確認するときは、単に「この条項は有効か」だけではなく、
- 自分はどのようなリスクを負うのか
- 相手方はどのような責任を負うのか
- 事故やトラブルが起きた場合に誰が負担するのか
を考えることが大切です。
契約書は、法律の問題であると同時に、取引上のリスク分担を決めるものでもあります。
免責条項を確認するときのチェックリスト
契約書に「一切責任を負わない」という条項があった場合は、次の点を確認してみましょう。
免責の対象
- 何について責任を負わないのか
- 免責の原因は具体的に定められているか
- 「一切」「いかなる場合も」など、過度に広い表現になっていないか
損害の範囲
- 直接損害が対象になるのか
- 間接損害は対象外なのか
- 逸失利益は除外されているのか
- 特別損害の扱いはどうなっているのか
損害賠償額
- 賠償額の上限があるか
- 上限額はいくらか
- 取引規模と比較して妥当か
- 上限の例外はあるか
免責の例外
- 故意の場合の扱い
- 重大な過失の場合の扱い
- 秘密保持義務違反の場合の扱い
- 個人情報漏えいの場合の扱い
- 知的財産権侵害の場合の扱い
法律上の問題
- 消費者との契約ではないか
- 強行法規に違反しないか
- 契約の種類に応じた特別な規制がないか
免責条項は「有効か」だけでなく「受け入れてよいか」が重要
契約書の免責条項を確認するとき、「この条項は有効ですか?」という質問はよくあります。
しかし、実際の契約では、法律上有効かどうかだけでなく、
「このリスクを自社が負ってよいのか」
を考えることが重要です。
例えば、ある免責条項が法律上有効であったとしても、その内容が自社にとって非常に不利であれば、契約締結前に修正を求めることが考えられます。
反対に、免責条項が広く見えても、取引の性質上、合理的なリスク分担として受け入れられる場合もあります。
重要なのは、「有効か無効か」だけで契約書を判断しないことです。
まとめ
契約書の「一切責任を負わない」という免責条項は、書かれているだけで、どのような場合でも有効になるわけではありません。
確認するときは、
- 何について免責されるのか
- 対象となる損害の範囲
- 損害賠償額の上限
- 故意や重大な過失の場合の扱い
- 消費者契約法などの法律上の制限
- 自分が負うことになる取引上のリスク
を確認することが重要です。
特に、相手から提示された契約書に広範な免責条項が入っている場合、「契約書に書いてあるから仕方ない」とそのまま署名するのではなく、自社がどのようなリスクを引き受けることになるのかを確認する必要があります。
契約書は、トラブルが起きた後に読むものではありません。
「この条件で契約して大丈夫か」「もし問題が起きたとき、誰がどこまで責任を負うのか」を契約締結前に確認しておくことが、契約書を作成・確認する大きな意味の一つです。
南本町行政書士事務所では、契約書の作成だけでなく、相手方から提示された契約書の内容確認や、免責条項・損害賠償条項などの確認にも対応しています。
契約書に「一切責任を負わない」「いかなる損害についても責任を負わない」といった条項があり、内容に不安を感じている場合は、契約締結前にご相談ください。
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大野