フォース・マジュール宣言とは? 契約との関係を行政書士事務所が解説
新型感染症の流行、戦争、自然災害、サイバー攻撃など、企業活動には予測困難な出来事が発生することがあります。
そのような状況で耳にすることがあるのが「フォース・マジュール宣言(Force Majeure Declaration)」です。
もっとも、日本では法律上の正式な制度として定められているわけではなく、契約実務や国際取引の中で用いられる表現です。
今回は、フォース・マジュール宣言とは何か、契約書との関係も含めて解説します。
フォース・マジュール(不可抗力)とは
フォース・マジュール(Force Majeure)とは、一般的に「当事者の支配や予測を超えた出来事」を指します。
日本語では「不可抗力」と訳されることが多く、例えば以下のようなものが該当します。
- 地震、津波、台風などの自然災害
- 戦争、内乱、テロ行為
- 感染症の大流行
- 政府による輸出入規制
- 大規模停電
- サイバー攻撃
- ストライキ
これらにより契約上の義務を履行できなくなった場合、契約内容によっては責任を免れることがあります。
フォース・マジュール宣言とは
フォース・マジュール宣言とは、
「現在発生している事象が不可抗力に該当するため、契約上の義務の履行に影響が出ていることを相手方へ通知する行為」
を指します。
例えば、
- 部品メーカーが大地震で工場が停止した
- 輸送会社が港湾閉鎖で配送できない
- 海外サプライヤーが戦争により出荷不能になった
といった場合に、
「不可抗力事由が発生しているため、納品が遅れる可能性があります」
という通知を取引先へ行うことがあります。
これが実務上「フォース・マジュール宣言」と呼ばれるものです。
宣言しただけで責任は免除されるのか
結論からいうと、
宣言しただけでは責任が免除されるわけではありません。
重要なのは契約書の内容です。
契約書にフォース・マジュール条項(不可抗力条項)が存在する場合、
- どのような事由が不可抗力に当たるのか
- 通知期限はあるのか
- 履行義務は停止されるのか
- 契約解除できるのか
などが定められています。
そのため、
「不可抗力だから仕方ない」
と一方的に主張しても、契約上認められないケースがあります。
契約書に不可抗力条項がある場合
契約書では次のような規定を置くことがあります。
天災地変、戦争、暴動、感染症の流行、法令の制定改廃その他当事者の合理的支配を超える事由により契約の履行が困難となった場合、当事者はその責任を負わない。
このような条項がある場合でも、
- 本当に不可抗力だったのか
- 回避可能ではなかったのか
- 被害を最小限にする努力をしたのか
などが問題となることがあります。
単に経営状況が悪化しただけでは、通常は不可抗力とは認められません。
国際取引で重要になる理由
フォース・マジュール宣言は、特に国際契約で重要です。
国内取引では民法の考え方によって処理できる場合もありますが、国際取引では準拠法が外国法となることもあります。
また、
- 海外工場の閉鎖
- 国境封鎖
- 経済制裁
- 輸出規制
などの影響を受けやすいため、契約書に詳細なフォース・マジュール条項を設けることが一般的です。
新型コロナウイルス流行時には、多くの企業が不可抗力を理由とした通知や宣言を行いました。
フォース・マジュール宣言を行う際の注意点
① 契約書を確認する
まずは契約書に不可抗力条項が存在するか確認します。
条項によっては、
- 発生から○日以内に通知
- 書面通知必須
- 証明資料の提出
などの条件が定められています。
② 影響内容を具体的に説明する
単に
不可抗力が発生しました
では不十分です。
- 何が起きたのか
- どの契約に影響するのか
- 納期はどうなるのか
- 復旧見込みはあるのか
を具体的に示すことが望ましいでしょう。
③ 証拠を残す
後日紛争になった場合に備え、
- 災害証明
- 行政発表
- 報道資料
- 関係機関の通知
などを保存しておくことも重要です。
日本法上の「不可抗力」との関係
日本の民法には「フォース・マジュール宣言」という制度はありません。
しかし、
- 債務者に責任がない場合
- 履行不能が生じた場合
- 損害賠償責任の有無
などを判断する際に、不可抗力であったかどうかが問題となることがあります。
もっとも、実際の紛争では契約書の条項が重視されるため、事前に適切な契約内容を整備しておくことが大切です。
まとめ
フォース・マジュール宣言とは、地震や戦争、感染症の流行などの不可抗力事由によって契約の履行に影響が出ていることを相手方へ通知する行為です。
ただし、宣言をしただけで責任が免除されるわけではありません。
重要なのは、
- 契約書に不可抗力条項があるか
- どのような事由が対象か
- 通知方法や期限はどうなっているか
を確認することです。
特に企業間取引や国際契約では、フォース・マジュール条項が紛争防止の重要な役割を果たします。契約書作成やリーガルチェックの段階で、将来のリスクに備えた規定を整えておくことが望ましいでしょう。
関連するサポート
感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野