ターミネーターは現実になるのか ― AI時代に考える「機械による侵略」
映画好きの方であれば、一度は見たことがあるかもしれません。
ターミネーター
人類が生み出した人工知能「スカイネット」が自我を持ち、人類を脅威と判断して核戦争を引き起こす。そして機械軍と人類との戦争が始まる――という有名なSF作品です。
かつては「そんなことはあり得ない」と思われていました。
しかし近年、AI技術が急速に発展したことで、「本当にSFの話だけなのだろうか」と考える人も増えているように思います。
もちろん、現実にはロボットが銃を持って街を歩き、人類と戦争を始める状況にはなっていません。
ですが、少し視点を変えると、すでに別の形で機械による侵略は始まっているのではないか、とも考えられます。
侵略とは何か
一般的に侵略というと、
- 軍隊による侵攻
- 領土の占領
- 武力による支配
をイメージします。
しかし歴史を振り返ると、必ずしも侵略は軍事だけではありません。
文化による侵略。
経済による侵略。
技術による侵略。
こうしたものも存在します。
人々の生活様式や価値観が変わり、気付けば以前とは全く違う社会になっている。
そのような変化も、ある意味では支配や侵略の一種といえるかもしれません。
かつて言われていた未来
少し前まで、
「AIが発達すると単純作業がなくなる」
と言われていました。
工場作業員。
運転手。
倉庫作業員。
いわゆるブルーカラー職が真っ先に置き換わるという予測です。
確かに一部は現実になっています。
しかし実際には予想と違う現象も起きています。
文章を書く。
資料を作る。
データを整理する。
会議内容を要約する。
契約書のたたき台を作る。
こうしたホワイトカラー業務の方が、先にAIの影響を受け始めています。
かつて「知的労働」と呼ばれていた分野に、AIが次々と入り込んできているのです。
なぜ逆転現象が起きたのか
考えてみれば不思議ではありません。
文章を生成すること。
情報を整理すること。
計算すること。
これはコンピュータが得意な分野です。
一方で、
- 現場で状況を判断する
- 重い物を運ぶ
- 配管を修理する
- 建物を建てる
- 高齢者を介護する
こうした仕事は、身体そのものが必要になります。
AIは非常に賢くなりました。
しかし、身体はまだ持っていません。
そのため、頭脳だけの仕事ほど先に影響を受けるという現象が起きているのでしょう。
人間がブルーカラーになっていく時代
ここで少し面白い見方があります。
昔は、
「人間が考え、機械が従う」
という関係でした。
しかし現在はどうでしょう。
AIが文章を作る。
AIが分析する。
AIが提案する。
そして人間は、その結果を実行する。
まるで、
AIが頭脳。
人間が手足。
という構図にも見えます。
もちろん最終決定権は人間にあります。
しかし現場感覚として、
「AIが考え、人間が動く」
場面は確実に増えています。
これは侵略なのか
軍事的な意味では侵略ではないと思います。
しかし社会構造という観点では、ある種の侵略に近い現象が起きているようにも感じます。
人類は長い歴史の中で、
蒸気機関に仕事を奪われ、
電気に仕事を奪われ、
コンピュータに仕事を奪われてきました。
そして今、AIによって知的労働の一部が代替され始めています。
ただし重要なのは、
「機械が人間を排除している」
のではなく、
「人間が便利だから機械を選んでいる」
という点です。
スカイネットが人類を攻撃しているわけではありません。
私たち自身がAIを導入し、AIに仕事を任せているのです。
ターミネーターとの決定的な違い
映画の世界では、
機械と人類は敵同士です。
しかし現実世界では、
AIは人類が作った道具です。
少なくとも現時点では、自らの意思で国家を攻撃したり、人類絶滅計画を立てたりしているわけではありません。
むしろ問題になるのは、
AIそのものではなく、
AIを使う人間です。
歴史上、多くの技術がそうでした。
火薬も。
飛行機も。
インターネットも。
技術は善でも悪でもありません。
使う人間によって結果が変わります。
終わりに
ターミネーターのような機械軍団が明日現れる可能性は、少なくとも今の技術水準では極めて低いでしょう。
しかし別の意味では、機械はすでに私たちの社会へ深く入り込んでいます。
昔は機械が肉体労働を代替しました。
今はAIが知的労働を代替し始めています。
そう考えると、私たちは「機械に侵略される未来」を生きているのではなく、「機械と共生する未来」の入り口に立っているのかもしれません。
問題は、AIが人類を支配するかどうかではありません。
AIが考え、人間が動く社会の中で、人間はどのような価値を持ち続けるのか。
本当に考えるべきなのは、その点なのではないでしょうか。
関連するサポート
感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野