業務委託契約書を後から締結しても報酬は発生するのか?
「契約書を作っていなかったけれど、仕事はすでに終わっている。」
「業務を依頼して作業も完了したが、契約書を交わしていなかった。」
このような状況は、フリーランスや個人事業主、中小企業間の取引において珍しくありません。
では、業務委託契約書を業務遂行後に作成した場合、報酬は支払われるのでしょうか。
今回は、業務委託契約と報酬請求の関係について解説します。
契約書がなくても契約は成立する
まず前提として、業務委託契約は契約書がなければ成立しないものではありません。
民法上、多くの契約は当事者の意思表示の合致によって成立します。
つまり、
- 「この仕事をお願いします」
- 「引き受けます」
という合意があれば、原則として契約は成立します。
そのため、
- メール
- チャット
- SNSのDM
- 口頭での約束
であっても契約が成立する可能性があります。
したがって、契約書がないという理由だけで直ちに報酬請求ができなくなるわけではありません。
業務完了後に契約書を作成することも可能
業務が完了した後に、
「念のため契約内容を整理しておこう」
ということで契約書を作成すること自体は可能です。
例えば、
- 業務内容
- 報酬額
- 支払期限
- 著作権の帰属
- 秘密保持
などを改めて書面化するケースがあります。
この場合、契約書は新たな契約というよりも、既に成立していた契約内容を確認するための書面という意味合いを持つことになります。
問題は「何を合意していたか」
報酬請求で重要なのは、契約書の有無ではなく、
「どのような内容で合意していたのか」
を証明できるかです。
例えば、
- 報酬額を決めていた
- 成果物の内容を決めていた
- 納期を決めていた
という事実が確認できれば、報酬請求の根拠となり得ます。
一方で、
- 金額を決めていない
- 作業範囲が曖昧
- 無償か有償か不明
という場合には紛争になりやすくなります。
後から作成する契約書には注意が必要
業務完了後に契約書を作成する場合でも注意点があります。
相手方の同意が必要
当然ながら、一方的に契約書を作成しても効力はありません。
双方が内容を確認し、署名や押印などによって合意したことが重要です。
実際のやり取りと異なる内容は危険
後から契約書を作る際に、
- 本来の報酬額と異なる
- 業務範囲を書き換える
- 不利な条件を追加する
などの行為はトラブルの原因になります。
後日の紛争では、
- メール
- チャット履歴
- 見積書
- 請求書
などとの整合性が確認されることになります。
報酬額を決めていなかった場合はどうなる?
実務上意外と多いのが、
「仕事はしたが金額を決めていなかった」
というケースです。
この場合でも直ちに報酬請求が不可能になるわけではありません。
ただし、
- 同種業務の相場
- 過去の取引実績
- 作業量
- 業界慣行
などを踏まえて金額が判断されることがあり、当事者間で争いになることもあります。
最初から報酬額を明確にしておくことが重要です。
フリーランス・事業者は証拠を残しておくことが重要
業務委託契約においては、契約書がなくても契約成立を主張できる場合があります。
しかし、証拠が乏しいと、
- 依頼そのものを否定される
- 報酬額を争われる
- 業務範囲を争われる
といったリスクがあります。
そのため、
- 見積書
- 発注書
- メール
- チャット履歴
- 作業記録
などは保存しておくことをおすすめします。
まとめ
業務委託契約書を業務遂行後に締結したとしても、それだけで報酬が発生したり消滅したりするわけではありません。
重要なのは、
- 当事者間で契約が成立していたか
- どのような内容で合意していたか
- それを証明できるか
という点です。
契約書がないまま業務を開始してしまうケースは少なくありませんが、後日のトラブル防止のためには、できる限り業務開始前に契約内容を書面化しておくことが望ましいでしょう。
南本町行政書士事務所では、業務委託契約書の作成・リーガルチェックのほか、フリーランスや事業者間取引に関する契約内容の整理・文書化についてもご相談を承っております。契約締結のタイミングや契約内容に不安がある場合は、お気軽にご相談ください。
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大野