発注書だけで仕事を始めてよい?契約書がなくても大丈夫なのかを行政書士が解説
はじめに
「契約書はまだできていないけど、先に発注書だけ送ります。」
このようなやり取りは、企業間取引やフリーランスとの取引では珍しくありません。
では、発注書だけを受け取った状態で仕事を始めても問題はないのでしょうか。
結論からいえば、発注書だけでも契約が成立している場合はあります。しかし、契約内容が十分に定まっていないまま業務を開始すると、後々トラブルになる可能性もあります。
今回は、発注書だけで仕事を始めることの法的な考え方と注意点について解説します。
発注書とは
発注書とは、注文者が受注者に対して、
- どのような業務を依頼するのか
- 数量
- 金額
- 納期
- 作業内容
などを記載して発行する書面です。
会社によっては
- 注文書
- オーダーシート
- Purchase Order(PO)
など様々な名称が使われています。
発注書だけで契約は成立するのか
結論としては、
発注書だけで契約が成立することはあります。
日本の契約は、原則として当事者の意思表示の合致によって成立します。
つまり、
「お願いします。」
「承知しました。」
だけでも契約は成立します。
そのため、
発注書が送られ、
受注者がその内容を承諾したのであれば、
契約書が存在しなくても契約が成立している可能性があります。
発注書だけでは契約内容が不十分なこともある
問題は、
「契約が成立するか」ではなく、「契約内容が十分に決まっているか」です。
例えば発注書には、
- 業務内容
- 金額
- 納期
しか書かれていないケースがあります。
しかし実際の取引では、
- 著作権は誰に帰属するのか
- 修正回数
- 再委託の可否
- 秘密保持
- キャンセル時の対応
- 納品後の責任
- 遅延した場合の取扱い
- 契約解除
など、多くの事項が問題になります。
これらが決まっていないと、
「そんな話は聞いていない」
という紛争につながることがあります。
発注書だけで仕事を始めるリスク
① 報酬でもめる
例えば、
発注書には
「ホームページ制作 一式」
としか書かれていなかったとします。
しかし実際には、
- デザイン変更
- 写真加工
- SEO設定
- サーバー設定
まで依頼され、
受注者は追加料金を請求したいと考えます。
一方で発注者は
「全部込みだと思っていた」
と言うかもしれません。
業務範囲が曖昧だと、このような認識の違いが生じます。
② 発注内容が途中で増える
契約書がないと、
「これもお願い。」
「ついでにこれも。」
という形で業務が増えてしまうことがあります。
受注者としては、
どこまでが当初の依頼なのか分からなくなることがあります。
③ キャンセル時のルールがない
途中で発注者から
「やっぱり中止します。」
と言われた場合、
契約書がなければ
- 途中までの報酬
- キャンセル料
- 制作済みデータ
などの扱いが曖昧になります。
④ 著作権の帰属が不明になる
デザインやホームページ制作、
動画制作、
イラスト、
写真などでは、
著作権の帰属が重要になります。
発注書だけでは、
著作権譲渡について触れられていないことも多く、
納品後に
「自由に使えると思っていた」
「著作権は渡していない」
というトラブルが起きることがあります。
発注書だけで始めてもよいケース
次のような場合は、
発注書だけでスタートすることも比較的多くあります。
- 継続的な取引がある
- 基本契約書を締結済み
- 過去と同じ内容の発注
- 発注書に詳細条件が記載されている
例えば、
最初に基本契約書を締結し、
個別案件ごとに発注書を発行する方式は、多くの企業で採用されています。
この場合は、
契約書が存在しているためリスクは大幅に減ります。
初めての取引では契約書を作成したい
初めて取引する相手であれば、
できる限り契約書を作成することをおすすめします。
特に、
- 高額案件
- システム開発
- ホームページ制作
- コンサルティング
- 動画制作
- デザイン制作
- 業務委託契約
では、
契約書の有無によって後々の紛争リスクが大きく変わります。
発注書しかない場合に確認したいポイント
仕事を開始する前に、少なくとも次の事項は確認しておくと安心です。
- 業務内容
- 報酬額
- 支払時期
- 納期
- 修正対応の範囲
- 成果物の権利関係
- キャンセル時の取扱い
- 追加業務の対応方法
- 秘密保持
- 連絡方法
不足している事項があれば、
メールなどで確認し、その記録を残しておくことも重要です。
行政書士に相談するメリット
「契約書を作るほどではないと思っていた」
「発注書だけで始めてしまった」
というケースでも、
状況によっては契約内容を整理し、後から契約書や覚書を作成できる場合があります。
また、
発注書の内容を確認し、
不足している条項を補う契約書を作成することで、将来のトラブルを未然に防ぐことができます。
業務内容や業界に応じた契約内容は異なるため、実態に合った書面を整備することが重要です。
まとめ
発注書だけでも契約が成立することはあります。
しかし、契約が成立することと、トラブルなく取引を進められることは別問題です。
特に、業務内容や報酬、権利関係、キャンセル時の対応などが曖昧なまま仕事を始めると、後に大きな紛争へ発展する可能性があります。
契約書は相手を疑うためのものではなく、お互いの認識を一致させ、安心して取引を進めるためのものです。
発注書だけで進めるべきか判断に迷う場合や、現在使用している発注書・契約書の内容に不安がある場合は、専門家に確認を依頼することで、将来のリスクを軽減できるでしょう。
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感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野