同じ凶悪犯罪でも検察官の求刑に差が出るのはなぜか
ニュースを見ていると、
「同じような殺人事件なのに片方は死刑求刑、もう片方は無期懲役求刑」
「こちらは懲役30年求刑なのに、別事件では20年求刑だった」
このように感じることがあります。
「同じ犯罪なら同じ刑になるべきではないのか」
そう思われる方も少なくありません。
しかし、刑事事件においては、罪名だけで刑が決まるわけではありません。
今回は、なぜ同じように見える凶悪犯罪でも、検察官の求刑に差が生じるのかについて考えてみます。
そもそも「求刑」とは何か
まず重要なのは、求刑は「判決」ではありません。
求刑とは、検察官が裁判所に対して、
「この事件ではこの程度の刑罰が相当だと考えます」
と意見を述べるものです。
つまり、
求刑=検察官の意見
であり、
判決=裁判所の判断
です。
そのため、求刑がそのまま採用されるとは限りません。
「同じ犯罪」に見えても実際には同じではない
例えば、
A事件:強盗殺人で1名死亡
B事件:強盗殺人で1名死亡
罪名だけを見ると同じです。
しかし、実際には、
・計画性はあったのか
・突発的だったのか
・被害者との関係
・残虐性
・犯行動機
・前科前歴
・共犯の有無
・被害弁償の有無
・反省の程度
・遺族感情
・再犯可能性
など、多数の事情が存在します。
刑事裁判では、こうした事情を総合して評価します。
つまり、
「同じ罪名」
と
「同じ事件」
は必ずしも一致しません。
求刑は「過去の事件」と比較される
検察官は求刑を決める際、過去の裁判例や量刑傾向も考慮します。
これは、
「似た事件なら極端に違う刑にしない」
という公平性の観点があります。
もっとも、
過去事件と完全に一致する事件は存在しません。
そのため、
「似ているが少し違う」
という部分をどう評価するかで差が生まれます。
被告人側の事情でも変わる
意外に思われるかもしれませんが、
犯罪結果だけではなく、
「犯人側の事情」
も考慮されます。
例えば、
・自首した
・被害者遺族へ賠償した
・示談が成立した
・捜査へ協力した
・深い反省が見られる
こうした事情は量刑に影響する可能性があります。
逆に、
・証拠隠滅
・責任転嫁
・再犯
・組織性
などは重く評価されることがあります。
感情と法律は必ずしも一致しない
凶悪事件では、
「軽すぎる」
「重すぎる」
という声が出ることがあります。
もっとも、刑事裁判では、
感情だけでなく、
証拠
法律
量刑判断
過去事例
などを踏まえて判断が行われます。
そのため、
社会的印象と法的評価が一致しないこともあります。
求刑が違うことは「不公平」とは限らない
同じような凶悪犯罪でも求刑が違う理由は、
単純に、
「検察官によって気分で変わる」
からではありません。
むしろ、
事件ごとの事情を細かく評価した結果、
差が生まれている場合が多いのです。
刑事事件は、
罪名だけを見ると同じでも、
背景・経緯・証拠・当事者事情まで含めると、
全く別の事件であることも珍しくありません。
だからこそ、
ニュースの見出しだけでは見えない部分も存在するのです。
まとめ
同じ凶悪犯罪でも求刑に差が出る理由は、
・求刑は判決ではなく検察官の意見だから
・罪名が同じでも事件内容が異なるから
・過去事例との比較が行われるから
・被告人側事情も考慮されるから
・感情だけではなく法律的評価が必要だから
という点にあります。
刑事事件では、
「何の罪か」
だけでなく、
「どのように起きた事件なのか」
が非常に重要なのです。
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大野