刑事裁判において、事実がどうであったかがはっきりしない場合、被告人の不利なようには扱わず、有利なように扱わなければならないという法の諺があります。
疑わしきは被告人の利益に、とも言います。

刑事裁判の場合、立証責任を負うのは検察側です。
証明の程度は、「合理的な疑いを超える」ものである必要があります。

根拠としては刑事訴訟法336条に規定があり、「被告事件が罪とならないとき、又は被告事件について犯罪の証明がないときは、判決で無罪を言い渡さなければならない」とされています。

そんな疑わしきは罰せずですが、これが貫徹されているのかというのは難しいところがあります。
その一つが裁判員裁判です。
証明が不十分と考えられるような場合、法諺の通りに行けば「被告人は無罪」となるべきですが、世論の声が批判的な事件であれば、これを無視した判決を出せにくくなっているのもあると思います。
さらに、重罰化が求められるようになっていることからも、無罪とは言いづらいようになっています。

犯人であれば罪は償うべきですが、犯人でないにもかかわらず犯人として判決を出した場合、その人の苦労は想像を絶してしまいます。

刑事裁判の立証責任は検察側にありますから、検察官には丁寧に証拠を積み上げて証明していただくことが重要だと思います。
それを受けて、裁判官も裁判官の良心に従い、判決を出していただきたいと思います。

大野