例えば、殺人罪の場合、作為(何らかの行動をすること)で実行する場合はもちろん成立しますが、不作為(何もしないこと。もちろん殺意はあるとします)であっても殺人が成立することがあります。

これを不作為犯と言います。

不作為犯で特に問題となるのは不真正不作為犯(刑法の条文上〇〇したときはという規定の仕方をしているものを、あえてしないことで成立させる形式をいいます)ですので、今回はこれを取り上げます。

何もしないことが犯罪になる場合、では人が倒れていてそれを見て見ぬふりをして結果その方が亡くなった場合、その見て見ぬふりをした人は罪に問われるのでしょうか?それだと多くに人が罪に問われてしまいます。一方、救命救急士の方がその方を救急車に運び入れた後、かかってきた彼女との電話に夢中になり手当をさぼり死亡させた場合はどうでしょうか?

このように不作為というものは範囲が広く罰するためにはその対象となる不作為を限定する必要があります。

そこで、①作為義務の存在(今回の救命士のようにその人を救命する義務があるような場合や助けようと自己の自動車に引き入れた場合など)、②作為可能性、容易性(手当をしたとしてその段階ですでに手遅れと現代の医学水準に照らし認められる場合には可能性がなかった、とされます)、③作為との構成要件的同価値性が認められる場合には(殺人を犯しているのと同じと言えるほどの不作為といえるかどうか、例えば、生後6か月の赤ちゃんの世話を一人でいしていて、死んでもいいと思ってミルクを与えない行為など)殺人罪が作為と同様成立します。

行政書士 西本