犯罪の成立要件としては構成要件該当性がまずは必要です。この構成要件該当性の中は実行行為、結果、因果関係が必要でそのあとに検討するのが構成要件的故意の該当性です。

ここでいう故意が犯罪の成立要件に該当するかどうかに対しての認識認容があるかどうかとなります。例えば殺人罪であれば人を殺すという認識認容があるかどうかであり、それが悪いこととまでは必要としません。

ただ後に検討する責任故意という項目ではその行為が悪いと認識しているかどうかが問題となります。

ではその悪いという認識認容はどこまで必要かが問題となります。これを違法性の認識の問題と言います。

つまり、悪いことを今しているという認識といってもそれは具体的にはどこまでのことを意味するのかという問題です。

故意責任の本質は規範の問題が与えられているのにあえて犯罪事実を実現する反規範的人格態度に対する道義的非難にあります。つまり犯罪の成立要件になぜ故意を求められるのかといいますと、そもそも刑罰を課すという行為はその犯罪事実を犯した者に対する非難をするためという側面があり、反省を促す必要があるからです。そうであれば、少なくとも自分が今していることが社会的に見て悪いという事をしているという認識がない人を処罰しても反省はしないので意味がないのです。

そうであれば、強く悪いことをしていると思っていることがあれば非難はできます。しかしそこまで求めてしまうと逆に軽く悪いと思っている人は処罰できず、社会秩序は保てないのです。そこで違法性の認識までは必要でないけれど、その可能性まであれば、非難できるとしました。これを制限故意説と言います。

行政書士 西本