転用物訴訟とは?最判昭和38年の判例をわかりやすく解説
法律を学んでいると「転用物訴訟」という言葉を目にすることがあります。
これは民事訴訟法の中でも比較的有名な論点であり、訴権(訴えを起こす権利)との関係で議論される重要なテーマです。
今回は民事訴訟法から見てみます。
この記事では、
- 転用物訴訟とは何か
- 転用物の意味
- 最判昭和38年の内容
- 転用物訴訟と訴権の関係
をできるだけわかりやすく解説します。
転用物訴訟とは
転用物訴訟とは、
本来予定されていない目的で裁判制度が利用される訴訟
をいいます。
つまり、
裁判制度を別の目的に「転用」している訴訟
という意味です。
通常、裁判は
- 権利を実現する
- 法律関係を確定する
ために利用されます。
しかし、場合によっては
- 証拠収集
- 事実確認
- 相手への圧力
などの目的で訴訟が提起されることがあります。
このような訴訟が、転用物訴訟の問題として議論されます。
転用物とは何か
転用物とは、
本来の用途とは異なる用途に使われる物
を意味します。
例えば、
- 空き瓶を花瓶として使う
- 倉庫を店舗として使う
といった場合です。
転用物訴訟では、この考え方を裁判制度に当てはめ、
裁判制度を本来の目的とは違う目的で使うこと
が問題となります。
転用物訴訟が問題になる理由
転用物訴訟が問題になるのは、次のような理由があります。
1 裁判制度の本来の目的
裁判制度は、
- 権利を守る
- 紛争を解決する
という目的で設けられています。
しかし、
- 調査目的
- 情報収集目的
で訴訟が利用されると、
制度の趣旨とズレが生じる可能性があります。
2 訴訟の濫用の可能性
本来の目的とは違う形で裁判を利用すると、
- 不必要な訴訟
- 相手への負担
が生じる可能性があります。
そのため、
どこまで訴訟を認めるべきか
が問題になります。
最判昭和38年(転用物訴訟判例)
転用物訴訟についてよく引用されるのが、
最高裁昭和38年の判例です。
この判例では、
裁判制度を別の目的で利用することが許されるか
が問題となりました。
最高裁はおおむね次のように判断しました。
判例の考え方
裁判制度が本来予定していない目的で利用されていたとしても、
直ちに訴えが不適法になるわけではない
とされました。
つまり、
訴訟の動機が
- 別の目的
- 間接的な目的
であったとしても、
法律上の請求が認められるものであれば、訴え自体は適法
とされる可能性があるということです。
転用物訴訟と訴権
ここで重要になるのが訴権という概念です。
訴権とは
訴権とは、
裁判所に対して訴えを提起する権利
をいいます。
つまり、
- 裁判を起こすことができるか
- 裁判所が審理するべきか
という問題です。
転用物訴訟と訴権の関係
転用物訴訟では、
- 本来の目的ではない訴訟
- 別の目的のための訴訟
であっても、
法律上の請求として成立している限り、訴権は否定されない
と考えられることがあります。
ただし、
次のような場合には問題になる可能性があります。
- 明らかな訴訟の濫用
- 相手方への嫌がらせ
- 権利行使の形をとった不当行為
このような場合には、
訴訟の濫用として制限される可能性があります。
転用物訴訟の具体例
転用物訴訟として説明されることがある例としては、次のようなものがあります。
例
ある人が、
将来の紛争に備えて証拠を確保したい
と考え、
その目的で訴訟を起こす場合です。
この場合、
形式上は
- 権利確認訴訟
- 給付訴訟
であっても、
実際の目的は
証拠収集
ということになります。
このようなケースが転用物訴訟の議論で取り上げられることがあります。
転用物訴訟のポイント
転用物訴訟を理解するポイントは次の3つです。
① 訴訟の目的
その訴訟が
- 権利実現のためか
- 別の目的のためか
を考える必要があります。
② 法律上の請求の有無
たとえ目的が別にあっても、
法律上の請求として成立しているか
が重要です。
③ 訴訟の濫用かどうか
- 嫌がらせ
- 不当な圧力
などの場合には、
訴訟の濫用と評価される可能性があります。
まとめ
転用物訴訟とは、
裁判制度を本来の目的とは異なる目的で利用する訴訟
を指します。
そして最高裁昭和38年判例では、
- 動機が別の目的であっても
- 法律上の請求が成立する限り
直ちに訴えが不適法になるわけではない
と考えられました。
ただし、
- 訴訟の濫用
- 不当な目的
がある場合には制限される可能性があります。
裁判制度の利用と訴権の範囲を考える上で、
転用物訴訟は非常に重要な論点といえるでしょう。
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大野