「契約書を作るほどではない」と思う取引に残しておきたい記録

「今回の取引は小さいから、契約書まではいらない」

「いつもの取引先だから、口頭で話しておけば大丈夫」

「メールでやり取りしているから、特に書面を作る必要はない」

事業をしていると、このような場面は意外と多くあります。

もちろん、すべての取引で正式な契約書を作らなければならないわけではありません。

しかし、契約書を作らないことと、取引の記録を何も残さないことは別の話です。

契約書を作るほどではないと思う取引ほど、最低限の記録を残しておくことで、後から「言った・言わない」の問題を防ぎやすくなります。

目次

契約書を作らないなら、何を残しておく?

重要なのは、立派な書類を作ることではありません。

後から見返したときに、

  • 何を依頼したのか
  • いくらだったのか
  • いつまでに行うのか
  • どこまでが仕事なのか
  • どのような条件だったのか
  • 相手がその内容に同意しているのか

が分かる状態にしておくことです。

そのため、メールやチャット、見積書、発注書など、普段の業務で使っているものでも十分役に立ちます。

1.取引内容をメールなどで残す

口頭で話がまとまったとしても、できればその内容をメールなどで確認しておきましょう。

例えば、

「本日お電話でお話ししたとおり、○○の作業を5万円でお願いします。納期は○月○日、納品方法は○○ということでお願いいたします。」

というように、話した内容を簡単にまとめて送ります。

相手から「その内容でお願いします」と返信があれば、取引条件を確認した記録になります。

大切なのは、文章をきれいに作ることではありません。

後から見たときに、当時どのような条件で話がまとまったのかが分かることです。

2.見積書を残しておく

見積書も重要な記録になります。

特に、

  • 商品・サービスの内容
  • 数量
  • 金額
  • 納期
  • 有効期限
  • 追加料金の条件

などを記載しておけば、取引条件を振り返る資料になります。

ただし、見積書を作っただけで、相手がその内容に同意したとは限りません。

そのため、見積書を送った後に「この内容でお願いします」という発注や承諾の記録も残しておくと、より分かりやすくなります。

3.発注・依頼の内容を残す

仕事を受ける側だけでなく、仕事を依頼する側も記録を残しておくことが大切です。

例えば、

「○月○日までに、○○を納品してください」

「○○の作業をお願いします。費用は○万円です」

といった依頼内容です。

電話で依頼を受けた場合でも、電話の後にメールなどで内容を確認しておけば、後から確認しやすくなります。

4.変更された条件も残す

実務では、最初に決めた内容から変更されることがあります。

「納期を1週間延ばした」

「作業範囲を追加した」

「料金を変更した」

「納品方法を変えた」

といったケースです。

ここで注意したいのが、最初の条件だけを残して、変更後の条件を記録していないケースです。

後になって問題になった場合、

「最初はこういう話だった」

「いや、その後に変更した」

という話になりやすくなります。

変更があったら、その都度メールやチャットなどで確認しておきましょう。

5.納品・受け取りの記録を残す

取引が終わった後の記録も重要です。

例えば、

「○月○日に納品しました」

「確かに受け取りました」

「納品物を確認しました」

といったやり取りです。

特に、後から「納品されていない」「受け取っていない」「まだ仕事が終わっていない」といった問題が起こる可能性がある取引では、完了したことが分かる記録を残しておく意味があります。

6.チャットのやり取りだけに頼りすぎない

最近は、LINEやChatwork、Slackなど、チャットで取引の話をすることも珍しくありません。

チャットも取引内容を確認するための記録になります。

ただし、注意したいのが、チャットは後から探しにくくなることがあるという点です。

メッセージが大量に流れてしまったり、担当者が変わったり、サービスやアカウントの利用状況が変わったりすると、必要な情報をすぐに確認できないことがあります。

重要な条件が決まったら、その内容をメールや社内の管理資料などにも整理しておくと安心です。

「記録を残す」と「証拠を作る」は少し違う

ここで一つ注意したいことがあります。

記録を残しておけば、どんなトラブルでも解決できるわけではありません。

また、メールやチャットがあれば、それだけで正式な契約書とまったく同じになるというわけでもありません。

取引の内容や当事者間のやり取りによって、法的な意味は変わります。

だからこそ、

「契約書を作るほどではないから、何もしない」

ではなく、

「契約書は作らないけれど、取引条件は残しておく」

という考え方が重要です。

どこまで残せばいいか迷ったら

すべての取引について大量の書類を作る必要はありません。

まずは、その取引について後から確認したいことを考えてみましょう。

最低限、

「誰と、何を、いくらで、いつまでに、どのような条件で行うのか」

が分かるようにしておく。

そして、途中で条件が変わったら、その変更も残しておく。

これだけでも、「そんな話はしていない」「そこまで頼んでいない」「金額が違う」といった行き違いを防ぐための材料になります。

契約書を作らない取引こそ、内容を整理しておく

契約書という形にしなくても、取引には必ず条件があります。

問題は、その条件が当事者の頭の中だけにあることです。

「いつもの取引先だから」

「少額だから」

「簡単な仕事だから」

という理由で記録を残さないまま進めると、後になって担当者が変わったり、時間が経ったりしたときに、当時の話を確認できなくなることがあります。

契約書を作るかどうかを考えるときも、まずは**「この取引で、後から確認できなければ困ることは何か」**を整理してみることが大切です。

そのうえで、メール、見積書、発注書、チャットなど、取引に合った方法で記録を残しておきましょう。

そして、取引内容が複雑になってきた場合や、金額が大きくなった場合、継続的な取引になる場合などは、「本当に契約書を作らなくてもよいのか」を一度考えてみるのも一つの方法です。

契約書を作らないことよりも、取引の内容が曖昧なまま残らないことのほうが大切です。

小さな取引であっても、「何を約束したのか」が後から確認できる状態を作っておく。それが、トラブルを防ぐための基本的な備えになります。

大野

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