民法202条1項においては「占有の訴えは本権の訴えを妨げず、また、本権の訴えは占有の訴えを妨げない」と規定している。
占有の訴えと本権の訴えは別物であると考えられています。

占有を侵害された場合、これを排除することができる権利として占有訴権があります。
占有保持の訴え(198条 占有を妨害された場合)
占有保全の訴え(199条 占有を妨害おそれがある場合)
占有回収の訴え(200条 占有を奪われた場合)

本権とは、物の支配を根拠づける法的な権利を言います。すなわち、占有について法律上正当なものとさせる権利を言います。
所有権、賃借権、質権、地上権などが当たります。

占有権は、物を現実上支配している状態を認める権利を言います。すなわち、占有について事実上保護する権利を言います(社会秩序を守るための権利)

よって、占有訴権に基づく訴えは、本権とは別物です。
例えば時計が盗まれた場合、所有者であれば、所有権に基づいて返還請求をすることができます(本権の訴え)
占有していたのであれば、占有回収の訴えをすることができます(占有訴権)

そして、202条1項によると、どちらで訴えてもよいことになりまし、両方を同時に訴えることができます。

大野