妻の涼子の支えもあり、こどもも一人前にすることができた。
子供も巣立ち、いままで妻に苦労をかけたと思っていた太郎は、船を売り、そのお金で妻を労おうと考えていた。
そう、これからは妻と二人でゆっくりと過ごそうと考えていたのだ。
しかし、運命は残酷で長年の疲労により妻の涼子が病に臥せってしまった。
妻との時間をやっと作れると考えていた太郎はひどく動揺した。
太郎は涼子に頼りっぱなしで、炊事・洗濯もしてこなかったので、生活が少しずつ荒れ始めていった。
子供が月に何日か太郎の身の回りの世話をしに来ていたが、妻の存在の大きさに改めて太郎は気づかされた。
妻の治療費をねん出するため、太郎は多くのバイトをかけ持った。つらく大変なことであったが、昔父親にいわれた「何がしたいんだ」という言葉から大きく成長した太郎には苦ではなかった。
なぜなら、「守りたいものを守る」という信念ができたから。
                            続く(大野)