社長が変わったら、これまでの約束はどうなる?

会社と長く取引していると、「社長が交代したけれど、これまでの契約はそのままなのだろうか?」と気になることがあります。

たとえば、何年も付き合いのある取引先で社長が交代した場合、

  • 以前の社長と結んだ契約は有効なのか
  • 新しい社長が「そんな約束は知らない」と言ったらどうなるのか
  • 口頭で決めていた条件は引き継がれるのか
  • 新社長になったことを理由に、契約内容を変えられるのか

といった疑問が出てきます。

結論からいうと、会社の社長が交代しただけで、会社がこれまで結んできた契約や約束が当然になくなるわけではありません。

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「社長」と「会社」は同じではない

まず押さえておきたいのが、社長個人と会社は別の存在だということです。

たとえば株式会社の場合、契約を結んでいるのが「株式会社○○」であれば、その契約の当事者は基本的に株式会社○○です。

社長は会社を代表して契約を結びますが、社長が交代したからといって、会社そのものが別の会社になるわけではありません。

そのため、

「前の社長と約束したことだから、社長が変わった今は関係ない」

というだけでは、これまでの契約をなかったことにはできません。

会社として結んだ契約であれば、原則として会社がその契約上の権利や義務を引き継ぎます。

たとえば「毎月この金額でお願いする」という契約

たとえば、A社とB社が継続的に取引をしていて、

「毎月○万円で業務を依頼する」

という契約を結んでいたとします。

その後、A社の社長が交代しました。

新しい社長が、

「この金額では高すぎる。前の社長との約束なので、今後は半額にします」

と言ったとしても、社長が交代したことだけを理由として、契約条件が自動的に変更されるわけではありません。

契約を変更するには、契約内容や変更についての合意などを確認する必要があります。

つまり、「誰が社長だったときに決めたのか」だけではなく、誰と誰が契約していたのかを見ることが重要です。

では、社長個人が約束していた場合は?

ここは少し話が変わります。

たとえば、会社同士の正式な契約ではなく、

「社長同士の付き合いだから、今回は特別にこの条件でやります」

といった話をしていた場合です。

この場合は、

  • 誰が約束したのか
  • 会社としての約束だったのか
  • その約束について記録が残っているか
  • 実際にその条件で取引が続いていたか

など、具体的な事情によって考える必要があります。

「社長が言ったことだから会社の契約になる」とも、「口頭だから何の意味もない」とも、一律にはいえません。

だからこそ、重要な条件ほど、社長同士の口約束だけに頼らないことが大切です。

「前の社長から聞いていない」は通用する?

新しい社長が就任した後、

「その契約については前の社長から何も聞いていません」

と言われることもあるかもしれません。

しかし、会社が当事者となっている契約であれば、社長が交代したことと、その会社の契約上の義務がなくなることは別問題です。

むしろ会社側では、社長交代の際に、

  • どのような契約を結んでいるのか
  • どの取引先と継続的な取引があるのか
  • 特別な条件や例外的な合意がないか
  • 更新時期はいつなのか

などを整理しておくことが重要になります。

社長交代は「契約を見直すきっかけ」にはなる

一方で、社長が変わったことをきっかけに、契約内容を見直すこと自体は珍しいことではありません。

たとえば、

「これまでの取引条件を変更したい」

「契約期間を見直したい」

「業務の範囲を変更したい」

ということであれば、相手方と話し合って契約を変更することはできます。

ここで大切なのは、

「社長が変わったから契約が消える」のではなく、「社長が変わったことをきっかけに、契約を変更することはできる」

という違いです。

変更するのであれば、何が変わったのかを契約書や覚書などに残しておくと、後から話が食い違うことを防ぎやすくなります。

社長交代のときこそ「昔の約束」を整理する

社長が交代すると、それまで一部の人しか把握していなかった取引条件が問題になることがあります。

たとえば、

「この取引先だけ特別価格になっている」

「この会社については契約書に書かれていない条件がある」

「昔からこの方法で処理している」

といったケースです。

前の社長や担当者にとっては当たり前だったことでも、新しい社長には分からないかもしれません。

そのため、社長交代は単に「新しい社長に引き継ぐ」だけではなく、これまで会社がどのような約束をしてきたのかを整理する機会でもあります。

契約書に書いてあることだけがすべてとは限らない

ここで注意したいのが、「契約書に書いていないことは、すべて無効」というわけではないということです。

契約は、契約書という紙だけで成立するものとは限りません。

実際の取引では、

  • メール
  • 発注書・注文書
  • 見積書
  • 請求書
  • 議事録
  • 担当者同士のやり取り
  • これまでの取引実績

など、さまざまな資料から当事者間の合意や取引条件を確認することがあります。

だからこそ、会社として長く続いている取引ほど、「契約書だけ確認すれば大丈夫」とは限りません。

社長交代を機に、契約を一度整理してみる

社長が変わると、会社の方針や事業内容が変わることもあります。

そのときに、

「今まで何となく続いてきた条件を、このまま続けてよいのか」

「契約書の内容と実際の取引内容が合っているか」

「昔の契約書のままになっていないか」

を確認しておくと、後々の行き違いを防ぎやすくなります。

特に、長年続いている取引では、契約書を作った当時と現在の取引内容が変わっていることもあります。

社長交代は、これまでの約束を捨てるタイミングではありません。

これまでの約束を一度整理し、今の会社に合った形に整え直すタイミングと考えると分かりやすいでしょう。

まとめ

社長が交代したからといって、会社がこれまで結んできた契約が自動的になくなるわけではありません。

重要なのは、

「前の社長が決めたかどうか」ではなく、「誰が契約当事者だったのか」そして「どのような内容で合意していたのか」

という点です。

一方で、社長交代をきっかけに、これまでの契約や取引条件を見直すことには意味があります。

特に長年続いている取引では、契約書と実際の取引内容がいつの間にかずれていることもあります。

社長が変わったときは、新しい社長に「昔の約束」をそのまま引き継ぐだけでなく、会社に残っている契約や取引条件を一度整理してみる。

それだけでも、これからの取引を分かりやすくするきっかけになります。

大野

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