契約書の内容と実際の取引条件が違うとき、どうすればいい?
「契約書にはこう書いてあるけれど、実際には別の条件で取引している」
「契約書を作った後に、相手と話し合って条件を変更した」
このような状況は、決して珍しいものではありません。
たとえば、契約書には「毎月末締め・翌月末払い」と書いてあるのに、実際には相手との話し合いで「翌々月末払い」に変更していた。
あるいは、契約書には「納品後30日以内に支払う」と書いてあるものの、メールでは「今回は納品後60日でお願いします」と合意している。
このように、契約書の内容と実際の取引条件が食い違っている場合、どう考えればよいのでしょうか。
まず確認したいのは「何が合意されているのか」
契約において重要なのは、契約書という紙そのものだけではありません。
契約書は、当事者間で成立した合意を記録する重要な証拠です。
一方で、契約書を作成した後に、当事者同士が改めて話し合い、契約条件を変更することもあります。
そのため、
「契約書に書いてあるから、必ずその内容だけが有効」
と単純に考えることはできません。
実際に条件が変更されているのであれば、いつ、誰が、どのような条件について合意したのかを確認する必要があります。
口頭で変更した場合は特に注意
問題になりやすいのが、契約条件を口頭で変更しているケースです。
たとえば、
「今月分については支払いを少し待ってもらえませんか?」
「分かりました。来月末で大丈夫です」
というやり取りがあったとします。
当事者同士では「支払期限を変更した」という認識でも、それを裏付ける書面が残っていなければ、後になって認識が食い違う可能性があります。
相手から、
「契約書では今月末払いですよね」
と言われたとき、
「いや、口頭で変更しました」
と主張しても、その内容を証明することが難しくなる場合があります。
だからこそ、契約条件を変更するときには、できるだけ記録を残しておくことが重要です。
メールやチャットで変更した場合は?
では、契約書とは異なる条件について、メールやチャットでやり取りしていた場合はどうでしょうか。
この場合も、単に「メールがあるから大丈夫」と考えるのではなく、そのやり取りの内容を確認する必要があります。
たとえば、
「納期を9月30日に変更することでお願いします」
「承知しました」
というやり取りが残っていれば、契約書とは異なる納期について合意したことを示す資料になる可能性があります。
一方で、
「9月30日くらいになりそうです」
「分かりました」
という程度のやり取りでは、正式に契約条件を変更したのか、それとも単なる予定の確認だったのかが分かりにくいでしょう。
重要なのは、条件変更について当事者双方の意思が一致していることが分かるかどうかです。
「契約書」と「実際の取引」、どちらを優先するの?
ここが最も気になるところかもしれません。
結論からいうと、ケースによって異なります。
契約書の内容と実際の合意内容が違っている場合には、
- 契約書を作成した後に条件変更の合意があったのか
- その変更は一時的なものなのか、今後も適用するものなのか
- 変更されたのは契約のどの部分なのか
- メールやチャットなどの記録が残っているか
- 実際の取引が変更後の条件に沿って継続しているか
などを確認する必要があります。
特に注意したいのが、契約書を修正しないまま、変更後の条件で取引を続けているケースです。
取引が長期間続いていると、「実際にはずっとこの条件だった」という状態になることがあります。
しかし、後になってトラブルが発生すると、
「契約書にはそう書いてあります」
「いや、実際の条件は違います」
という争いになってしまいます。
条件変更は「その都度」書面にしておく
このようなトラブルを避けるためには、契約条件を変更したら、その変更内容を記録しておくことが大切です。
たとえば、
「本契約第○条の支払期限について、当初の『翌月末日』から『翌々月末日』に変更する。」
というように、何をどのように変更したのかを具体的に記録します。
変更する内容が多い場合には、契約書そのものを作り直したり、「変更契約書」や「覚書」を作成したりする方法もあります。
特に、
- 金額
- 支払条件
- 納期
- 契約期間
- 業務内容
- 契約解除の条件
- 損害賠償に関する条件
など、後からトラブルになりやすい部分については、曖昧なままにしないことが重要です。
「契約書はあるから大丈夫」とは限らない
契約書を作成していることは、もちろん大切です。
しかし、本当に注意したいのは、
「契約書を作った後」
です。
取引を進めていく中で、
「今回は特別に納期を延ばす」
「この作業も追加する」
「今回はこの金額で対応する」
など、当初の契約条件とは違う話が出てくることがあります。
そのときに、口頭だけで済ませてしまうと、後から契約書との食い違いが問題になる可能性があります。
契約書は、作成した時点で完成するものではありません。
取引の実態が変わったら、契約内容もそれに合わせて整理する。
この意識が、契約トラブルを防ぐうえで重要です。
すでに契約書と実際の条件が違っている場合は?
もし現在、
「契約書と実際の取引条件が違っている」
という状態であれば、まずは慌てて契約書を書き換えるのではなく、次のような資料を整理してみましょう。
確認したい資料
- 現在の契約書
- 契約書の変更・修正に関する覚書
- メール
- チャットの履歴
- 見積書
- 発注書
- 請求書
- 納品書
- 実際の支払記録
- その他、条件変更を確認できる資料
そして、
「契約書には何と書いてあるのか」
「実際にはどのような条件で取引しているのか」
「いつ、どのように条件が変更されたのか」
を整理します。
この3点を整理するだけでも、問題の所在がかなり見えやすくなります。
契約書は「作ったら終わり」ではない
契約書は、トラブルが起きたときのためだけに存在するものではありません。
取引条件を明確にし、当事者双方が同じ内容を認識するためのものでもあります。
だからこそ、実際の取引条件が変わったのであれば、その変更を契約書や覚書などに反映させることが大切です。
「相手も分かっているから大丈夫」
「今までこのやり方で問題なかった」
と放置していると、担当者が変わったり、会社の経営状況が変わったりしたときに、突然問題になることがあります。
契約書と実際の取引条件は、できるだけ一致させておく。
これが、契約トラブルを防ぐための基本的な考え方です。
まとめ
契約書の内容と実際の取引条件が違っている場合、単純に「契約書が絶対」「実際の取引が絶対」と決めつけることはできません。
重要なのは、
- どのような契約が成立しているのか
- その後に条件変更の合意があったのか
- 変更内容を示す証拠が残っているのか
- 実際の取引がどのように行われてきたのか
を整理することです。
そして、これから契約条件を変更するのであれば、できるだけ口頭だけで済ませず、変更内容を文書やメールなどで明確に残しておくことをおすすめします。
契約書は「一度作ったら終わり」ではありません。
取引の内容が変わったときには、契約書もその変化に合わせて見直すことが、将来のトラブルを防ぐことにつながります。
関連するサポート
感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野