情報は代々受け継がれていくことを表した画像

人が亡くなると相続が開始します(民法第882条)。

相続が開始するとなると、被相続人(亡くなられた方)の遺産を誰に相続させるのか、遺産分割・遺産の名義変更等の各種手続きが行われます。

遺産の名義変更、例えば、金融機関等での手続きでは相続人であることを客観的に証明するために、被相続人の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本の提出が求められます。

戸籍謄本の提出は一度ではありません、複数の金融機関に口座を持っていた場合には、その金融機関の数だけ戸籍謄本を収集し・提出をしなければなりません。

また、相続登記をする際にも戸籍謄本の提出が求められます。

相続手続きの数だけ戸籍書類一式の提出を求められますから、束となった戸籍謄本を何度も収集・持ち歩かなければなりません。

戸籍を何度も収集するのは面倒ですし、何度も持ち運ばなければならないのは大変です。

そこで、法定相続情報証明制度が平成29年5月29日に全国の法務局で開始されました。

法定相続情報証明制度とは

この制度は、相続人が法務局(登記所)で戸籍謄本等や法定相続情報一覧図(必要な書類)を提出し、登記官が内容を確認し、法定相続人が誰であるのかを登記官が証明する制度です。

この制度を利用することにより、相続登記、被相続人名義の預金の払戻しや相続税の申告などの各種相続手続きで大量の戸籍謄本の束をまとめて提出する必要がなくなり、戸籍書類一式の提出の省略が可能となっています。

交付された認証文付き法定相続情報一覧図の写し(相続関係の証明書)を戸籍謄本の束の代わりに各種相続手続きで利用・活用してもらうことで、きちんと相続手続きを行ってもらおうとする制度です。

戸籍収集の煩雑さ

戸籍謄本は戸籍のある自治体でしか取得することができません。

被相続人の戸籍がいくつかの自治体に存在する場合、それぞれの市区町村役場で取得手続きをしなければなりません(郵送で取得するとしても時間がかかります)。

また、収集するだけでも面倒な戸籍謄本ですが戸籍の形式や種類、記載方法、書式に違いがあることから収集・解読に時間がかかってしまいます。

  1. 戸籍の形式
    明治19年式戸籍
    明治31年式戸籍
    大正4年式戸籍
    昭和23年式戸籍
    コンピュータ化された戸籍
  2. 戸籍の種類
    ・現戸籍
     現在存在している戸籍です

    ・除籍
     戸籍に記載されている人が死亡・結婚・転籍などにより、その戸籍から除かれることを言います。
     戸籍に記載されてい人全員が戸籍から除かれたときには、その戸籍を除かれた戸籍(除戸籍)といいます。

    ・原戸籍
     戸籍は法改正で様式などが変わる場合があり、新しい戸籍が運用されるまでに使われていた古い戸籍のことを言います。

  3. 戸籍の収集
    ・戸籍謄本
     戸籍内に記載されている全情報を写したものです。

    ・戸籍抄本
     戸籍謄本の一部を抜き出したものです。

  4. 手書きのものもある
    古い戸籍の場合、手書きかつ毛筆体で書かれているため、なんて書いてあるか判読できない場合もあります。

少し複雑な戸籍の収集を相続手続きの数だけしなければならないと考えると、億劫になってしまいます。
そのため、一度の収集で終わらせることに越したことはありません。

喉かな街並みの画像

法定相続情報証明制度のメリット

法定相続情報証明制度は、煩雑となることが多い相続手続きを簡略化することで、相続人に相続手続きを促すという目的を持った制度です。

そのメリットは以下のようなものがあげられます。

  1. 手続きがシンプルに
    認証文付き法定相続情報一覧図の写しが交付されますので、これを利用することで、戸籍謄本の束を何度も提出する必要がなくなり、手続きがスムーズに進みます。
  2. 登記官が確認してくれる
    登記官が戸籍の内容を確認してくれるため、相続人自身で戸籍の内容を確認するよりも確実です。
  3. 代理申請も可能
    法定相続情報証明の申請を専門家に代理してもらうことが可能です。
    弁護士、司法書士、行政書士、土地家屋調査士、税理士、社会保険労務士、弁理士、海事代理士などです。
  4. その他
    戸籍謄本の収集には手数料がかかりますが、法定相続情報証明制度は手数料がかからずに利用できます。
    また、5年間なら何度でも法定相続情報一覧図を発行してくれます(5年間保管してくれます)。

法定相続情報証明制度のデメリット

法定相続情報証明制度そのもののデメリットではありませんが、デメリットを強いてあげるとすると、以下のようなものになります。

  1. 戸籍収集は必要
    相続登記や各種相続手続きを簡略化できる法定相続情報証明制度ではありますが、この手続きを利用するためには、戸籍謄本の収集が必要となります。
  2. 万能ではない
    始まったばかりの制度であることから、金融機関の窓口で法定相続情報一覧図ではなく、戸籍謄本そのものの提出を求められることがあります。
手続きのステップを示した画像

法定相続情報証明制度の手続き

法定相続情報証明制度の手続きの流れは、以下になります。

  1. 必要書類を収集します。
    ①被相続人の戸除籍謄本
     出生から死亡までの連続した戸籍謄本及び除籍謄本
    ②被相続人の住民票の除票
    ③相続人の戸籍謄抄本
     相続人全員の現在の戸籍謄本または抄本(被相続人が死亡した日以後の証明日のもの)
    ④申請者(相続人の代表となって手続き進める人)の氏名・住所を確認することができる公的書類
     運転免許証・マイナンバーカード・住民票の写しなど

    ※上記以外に必要となる書類がある場合があります(委任状など)

    ①被相続人の本籍地の市区町村役場
    ②被相続人の最後の住所地の市区町村役場
    ③各相続人の本籍地の市区町村役場      で取得することができます

  2. 法定相続情報一覧図の作成
    家系図みたいなものを作成します法定相続情報一覧図の例
  3. 申請書の作成
    法務局のHPに申請書の様式がありますので、それを利用し必要箇所記入してください。
    必要書類、法定相続情報一覧、申請書をもって、法務局に提出(申出)し、登記官に証明してもらいます。

    ※提出できる法務局
     ・被相続人の本籍地(死亡時の本籍地)
     ・被相続人の最後の住所地
     ・申請人の住所地
     ・被相続人名義の不動産の所在地    を管轄する法務局

  4. 認証文付き法定相続情報一覧図の写しを請求し、交付してもらう
    交付してもらった認証文付き法定相続情報一覧図を利用して、相続手続きを進めます。

法定相続情報証明なら当事務所へ

法定相続情報証明制度は相続手続きを簡略化することができるメリットの大きい制度です。

相続財産として複数の不動産や自動車、株、銀行口座などが多く存在している場合、その数だけ名義変更手続きをしなければなりません。

名義変更の分だけ戸籍謄本等を収集していては、時間がかかってしまいます。

そのような方には、法定相続情報証明制度はメリットがあるといえます。

この制度は専門家が相続人様の代理人として申請することも認められています。

戸籍収集、法定相続情報証明制度の申請にお困りの方は、ぜひ南本町行政書士事務所へお問い合わせください。