老親扶養ビザとは、外国に住む身寄りのない高齢の親を日本に呼び寄せて、一緒に生活するためのビザを言います。

老親扶養ビザといいましたが、そのような名前が付いたビザは日本では設けられていません。
また、外国に住む親を呼び寄せ一緒に暮らすためのビザは定められていません。
老親扶養ビザといわれるものは、人道的な理由から、「例外的」に高齢の親を呼び寄せる際に認められているにすぎません。

老親扶養ビザとは

では、老親扶養ビザとはどのようなビザなのでしょう。

外国人が日本に滞在するために必要な在留資格の種類については出入国管理法に規定が設けられています。
いくつかの種類が設けられていますが、その中の1つに「特定活動」というビザが設けられています。

老親扶養ビザと呼ばれるものは、この「特定活動ビザ」に分類されます。

この特定活動ビザというのは、法律で規定されたどの在留資格にも該当しない場合において、法務大臣がどのような活動内容で在留を認めるかの判断を行い、活動を指定したうえで日本に滞在することを認めるビザです。

つまり、法務大臣の裁量が大きいビザとなります。

特定活動は「法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動」と法律上定義されています。

特定活動の内容は「法務大臣が個々の外国人について指定」しますからその内容は法律上わかりません。

そこで、特定活動ビザとして、法務大臣があらかじめ活動を想定しているものを「告示」として出しています。告示されているものを「特定活動告示」といいます。
その例として、ワーキングホリデーがあげられます。

ただ、想定していない活動は一切許されないかというとそうではなく、その活動内容によっては法務大臣が在留を認めてくれる場合があります。
法務大臣が申請する人の個々の事情から判断し特定活動として認めてくれるものがあり、これを「告示外特定活動」といいます。

※特定活動ビザの分類
 ・特定活動告示
 ・告示外特定活動

告示外特定活動の一つとして人道的に認められているのが、「老親扶養ビザ」と呼ばれるものになります。

このビザは法務大臣があらかじめ活動を想定しているというものではないことから、極めて限定的にしか認められません。

つまり個々のケース、事情を鑑みて、人道上その他の特別の事情により、特に日本に在留することが必要であると法務大臣が認めた場合には、特定活動ビザを取得することができる場合がある。というものになります。

告示外特定活動の例

告示外特定活動の例として以下のものがあげられます。

①老親扶養
外国で暮らす高齢の親を日本で扶養する場合。

②就職活動をする既卒留学生
大学、大学院、短大、専門学校を卒業した留学生が、日本で就職を希望しているが、留学期間中に就職先が決まらなかった場合。

その他、いくつか人道上の理由から認められる場合があります。

母国の母と連絡を取っている様子。

高難度ビザ

想定はされていないが、法務大臣が個々のケースに応じて日本に滞在することを認めてくれるものが「告示外特定活動」ビザです。

その一つとして「老親扶養」があげられます。
これは人道的理由から日本に滞在することを認めてくれる場合があるというものです。

ただ、いくら人道的理由であるからと言って、簡単に滞在を認めることはできません。なぜでしょう。

①想定された滞在ではないため
老親扶養ビザというビザは制度上存在していません。つまり、高齢の親の面倒を見るために親を日本に呼び寄せることは現在、日本においては想定されていないということになります。

②財政面から
高齢の親を日本で面倒を見るということは、当たり前ですが日本で生活をするということになります。高齢ですから働くことも難しいでしょう。
また、病院に行く回数も多くなりがちです。ビザが許可されると健康保険にも加入することができますから、日本の税金で医療を受けることができます。
その人数が多くなればなるほど社会保障費が多くなりますので日本の財政を圧迫することになります。

様々な理由はありますが、特に上記2つの理由から「老親扶養ビザ」は取得が難しいビザとなっています。

このビザを取得できた人はごくわずかです。

親が高齢だから日本に呼んで一緒に暮らしたい、という理由だけでは法務大臣はビザを出してくれませんので注意が必要です。

実務上の要件

老親扶養ビザは告示外特定活動の一つですから、明確な要件は公表されていません。

明確な要件は公表されていないものの、ビザを取得することには変わりはありません。したがって、老親扶養ビザであったとしても、なぜ日本に呼び一緒に暮らす必要があるのかという理由を具体的に「書面上」できちん「審査官がわかるよう」に説明し、それを「立証できる書類」を「緻密に集める」必要があります。

実務上必要とされている要件は以下のようなものです。

  1. 親の年齢が概ね70歳以上であること
  2. 親の面倒を見てくれる親族が本国に存在しないこと
  3. 親が本国で1人で生活することが難しいこと
  4. 扶養者が日本在住で本国で生活することが難しいこと
  5. 親を扶養できる経済力を有していること
  6. 親に持病があること
依頼者の話を聞く専門家の様子