売り手と買い手が合意して握手をしている様子

事業を売りたい企業、事業主様へ

現在の御社の事業を継続していくことが困難、又は後継者不足で事業を廃業されるという決断をされたのであれば、現在の事業をこれからどうするのかという問題を考えなければなりません。

不採算により事業継続が続行できないと判断された場合であっても、その事業を買いたいという希望を持つ企業や事業家の方は多く存在します。

当事務所ではこのような事業譲渡をご検討されている企業、個人事業主の皆様の事業を売却するためのお手続きのご相談をお受けします。

お手続きの流れ

  1. 売却する物の目録の作成、従業員の承継(従業員の雇用条件を維持させる等の説明会を従業員向けに行うこと、誓約書を交わす等)
  2. 売却目録の値段を設定する。
  3. 事業譲渡契約書の作成。作成後ご依頼者様とご相談して、契約書を見直す。
  4. 買い手との面談
  5. 交渉成立となりましたら、事業譲渡契約書を作成いたします。ご契約を売り手、買い手で交わしていただき契約締結となります。
  6. その後は実際の売却にかかる税務上の処理、不動産等の資産がある場合にはその登記手続きなど、ご希望であれば専門家をご紹介し、進めていきます。

〇売却対象物件(不動産などの資産、動産、従業員、対象事業のノウハウ、取引先、ホームページ等のドメイン情報など)の選定を入念にヒアリングします。

事業承継時の注意点

1,経営基盤の確立と株式

 個人事業主の場合であれば、その事業がお医者様のような資格が必要な業種の場合はその資格をお持ちの第三者、又は親族に承継して頂く方法と、経営者は特に資格がなく、従業員として資格のあるお医者様に勤務して頂く方法とがあります。

これは今までやってこられた事業スタイルによりますが、一般的には資格者を代表に据えた方が良いことが多いです。

なぜなら、小規模の医院の場合には、勤務する医師、看護師、その他事務員、受付などの働く人達との人間関係が密であり、現場を知らない代表が経営をすることに反発する従業員も少なくないからです。

株式会社の場合には、承継させたい親族がいらっしゃる場合には、経営権掌握のための最低限51%以上の株式を承継させる必要があります。最低限と申し上げたのは、相続が始まると遺留分の問題があるため、遺言書で51%の株式譲渡を明言したとしても、全株式が相続対象となると遺留分で他の相続人に株式が行き渡り思うように相続させることが出来ない場合があるからです。

先代の死後に相続によって議決権が後継者以外の親族に分散されることで、実質的に後継者が自由に経営できず、立場が不安定になります。

株式が分散されていることで後に株主総会で後継者が解任されてしまうといったこともあり得ます。

ですので出来る限り後継者に株式を集中させる必要があります。

この場合の一般的な手続きとしては、「株式譲渡契約書の作成」と「取締役会または株主総会で株式譲渡の承認を得ること」の2つが必要になります。

もっとも遺留分については対策方法があります。それが「除外合意制度」です。

これは、「中小企業における経営の承継の円滑化に関する法律」で認められている、自社株やその他の事業用財産を遺留分の算定対象から除外する制度です。

これを実現する手続きとして「他の相続人の合意が必要である点」と「経済産業大臣への申請と裁判所の許可が必要な点」の二つがあります。

これが叶わない場合には、どうしても後継者以外の相続人に株式が渡ってしまうことになります。この場合には事前に株式の種類を変えておくこともできますもできます。例えば、先代の持つ自社株を「議決権のある株式」と「議決権の制限された株式」にわけて後者だけを分配するという方です。

これは現在議決権制限株式を発行していない場合には定款の変更手続きが必要ですが、通常定款変更には株主総会が必要になります。

また、後継者以外の相続人が相続した自社株がある場合には、それを会社が強制的に買い取れる仕組みを作ることも出来ます(会社法107条1項3号)。

また行方不明の株主の株式を会社が買い取れるための仕組み「所在不明株主の株式売却制度」の利用も株式を後継者に集約するための有効な手段となり得ます。

2,取引先、従業員の雇用を守る。

これは、取引先との関係において、今現在どのような取引をしていて、それがいつまで続くのかといったことを明確にし契約書を作成しておくことになります。

契約に生涯有効ということはありませんから、必ずどこかのタイミングで契約書を整備し直すことが必要になります。また、2020年の民法改正施行のように法改正もあります。

従業員との雇用契約書、就業規則の見直しも必要になるでしょう。

そこで、契約書等の作成のための知識、ひな形を社内に残しておくこと、契約書の精査をいつでも出来るような体制を整えておくことです。

3,後継者の育成

御社の事業形態、業務内容が複雑であればそのノウハウを構築するには時間がかかります。

資格のいる事業であれば、資格を取る必要もあります。

免許、許可、認可が事業で必要であればその名義変更も行う必要があります。

関連法令にある程度精通すること、コンプライアンスの意識を持つことも経営者としては必須の条件となります。

また、未来の御社の形を創造することも必要になります。

時代に合った、また変化を楽しめるように最先端のテクノロジーを取り入れること、新事業を開始することも場合によっては必要になります。

〇税制の優遇措置について(平成30年税制改正による事業承継税制の特例)

平成30年度税制改正において、事業承継時の贈与税・相続税の納税を猶予する事業承継税制が大きく改正され、10年間限定の特例措置が設けられました。なお、申請書類等の提出先は申請企業の主たる事務所が所在している都道府県庁になります。

今までかかっていた後継者に対する承継株式の多額の贈与税、相続税が実質負担0になります。

また、従業員の雇用についても、現行制度では事業承継後5年間平均で、雇用の8割を維持することが求められていました。しかし改正後は8割要件を満たすことが出来なくても、理由報告書を提出することが必要ですが税制猶予を維持していただけます。

さらに、承継相手についても現行の1人から親族外を含めた複数の株主から代表者である後継者最大3人までの承継も税制優遇の対象になります。

事業承継税制の適用を受ける場合には相続時精算課税制度の適用範囲も拡大され、猶予取り消し時に過大な税負担が生じないようになります。また改正後では、60歳以上の贈与者から、20歳以上の後継者への贈与を相続時精算課税制度の対象となります。