契約書を作ったのにトラブルになるのはなぜ?

「契約書をきちんと作っておいたから大丈夫」

そう思っていたのに、いざ取引が始まると、

  • 「そんな話は聞いていない」
  • 「そこまで対応するとは言っていない」
  • 「この費用は別料金のはず」
  • 「納期が遅れた場合の扱いが書かれていない」
  • 「契約書には書いてあるけれど、実際の取引とは違う」

といった問題が起こることがあります。

では、なぜ契約書を作ったのにトラブルになるのでしょうか。

実は、契約書があることと、トラブルになりにくい契約書になっていることは同じではありません。

目次

契約書があってもトラブルになる理由

契約書でトラブルを防ぐためには、単に必要な項目を並べるだけでは十分ではありません。

大切なのは、実際に行われる取引の内容が、契約書に具体的に反映されていることです。

たとえば、業務委託契約で「業務を委託する」と書かれていても、それだけでは、

「具体的に何をするのか」

「どこまでが業務の範囲なのか」

「追加の作業を頼んだ場合はどうなるのか」

といった点までは分かりません。

契約書に書かれていない部分について、当事者それぞれが違う認識を持っていれば、後から「言った・言わない」の問題になってしまいます。

① 実際の取引内容が契約書に反映されていない

契約書を作るときにありがちなのが、インターネット上のひな形や以前使った契約書をそのまま利用することです。

ひな形は便利ですが、そのまま使えば自分たちの取引に合った契約書になるとは限りません。

たとえば、同じ「業務委託契約」でも、

  • どのような業務を依頼するのか
  • 成果物は何なのか
  • いつまでに納品するのか
  • 修正は何回までなのか
  • 報酬はいくらなのか
  • 追加作業の料金はどうするのか
  • 必要な資料を誰が用意するのか

など、取引によって条件は大きく異なります。

契約書を作る前に、まず実際の取引を整理することが重要です。

② 曖昧な表現が残っている

契約書には、「適切に対応する」「必要に応じて」「速やかに」「別途協議する」などの表現が使われることがあります。

もちろん、すべてを細かく決めることが適切とは限りません。

しかし、当事者によって意味の受け取り方が変わる部分を曖昧なままにしておくと、トラブルの原因になります。

たとえば「納品後、速やかに支払う」と書かれていたとしても、「速やかに」が具体的に何日なのかは明確ではありません。

重要な条件については、可能な範囲で具体的にしておくことが大切です。

③ 契約書に書かれている内容と、実際の話が違う

これも非常に多い問題です。

契約書を作った後に、メールやチャット、口頭で条件が変更されることがあります。

ところが、その変更が契約書に反映されないまま取引が進んでしまうことがあります。

たとえば、

「今回は特別に納期を1週間延ばします」

「この作業も料金に含めておきます」

「追加分については今回は請求しません」

といった話があったとしても、契約書がそのままになっていれば、後になって認識の違いが生じる可能性があります。

契約書は作って終わりではなく、実際の取引条件と一致しているかを確認することも重要です。

④ 「書いていないこと」が問題になる

契約書では、書いてある内容だけでなく、重要なのに書かれていない内容も問題になります。

たとえば、

  • 契約期間
  • 更新の方法
  • 中途解約
  • 支払条件
  • 遅延した場合の対応
  • 損害が発生した場合の扱い
  • 秘密情報の取扱い
  • 成果物の権利関係
  • 再委託の可否
  • 契約終了後の対応

などです。

もちろん、すべての契約書に同じ条項が必要なわけではありません。

重要なのは、その取引にとって必要な条件を漏れなく整理することです。

⑤ 契約書を読んでも、当事者が内容を理解していない

契約書を作ったものの、相手に内容を十分説明しないまま署名してもらうケースもあります。

しかし、契約書は「署名をもらうための書類」ではありません。

何を約束したのか、どこまでが自分の責任なのか、問題が起きたときにどう対応するのか。

当事者が契約内容を理解していなければ、契約書があっても認識のズレは起こります。

特に、専門的な言葉や複雑な条項が多い契約書では注意が必要です。

トラブルになりにくい契約書は「作る前」が大切

契約書を作るというと、「契約書の文章をどう書くか」という部分に目が向きがちです。

しかし、本当に重要なのは、その前の段階です。

まず、

「今回、実際にどのような取引をするのか」

を整理します。

そのうえで、

「何を約束するのか」

「どこまで対応するのか」

「費用や納期をどうするのか」

「予定どおり進まなかった場合はどうするのか」

などを確認し、必要な条件を契約書に落とし込んでいきます。

契約書は、最初から文章を作り始めるよりも、取引の内容を整理してから文章にするほうが、実際の取引に合ったものを作りやすくなります。

契約書は「あること」より「内容」が大切

契約書を作ったのにトラブルになったからといって、契約書そのものに意味がなかったということではありません。

むしろ、契約書はトラブルを防ぐために重要な役割を持っています。

ただし、

「契約書があるから大丈夫」

ではなく、

「実際の取引内容がきちんと整理され、それが契約書に反映されているか」

という視点が大切です。

契約書は、取引が問題なく進んでいるときには意識されないこともあります。

だからこそ、問題が起きたときに初めて「こんなことまで決めておけばよかった」とならないよう、契約を結ぶ段階で取引条件を整理しておくことが重要です。

契約書を作るときに確認したいこと

最後に、契約書を作成するときには、次のような点を確認してみましょう。

  • 実際の取引内容と契約書の内容が一致しているか
  • 業務や商品の範囲が明確になっているか
  • 報酬・支払条件が明確になっているか
  • 納期や契約期間が決まっているか
  • 追加作業や条件変更の扱いが決まっているか
  • 契約を終了するときの条件が決まっているか
  • トラブルが起きた場合の対応が決まっているか
  • 契約書に書かれていない重要な条件が残っていないか

契約書は、単に「それらしい文章」を作ればよいものではありません。

実際の取引を整理し、必要な条件を確認し、それを契約書という形に落とし込む。

この順番で考えることが、トラブルになりにくい契約書を作るための基本です。

大野

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