契約書の最後にある「以上」の意味とは?
契約書を読んでいると、最後に「以上」と書かれていることがあります。
たとえば、契約条項が終わった後に、
第○条 ……
2 ……以上
という形で締めくくられているものです。
普段何気なく目にする「以上」ですが、そもそもなぜ契約書の最後に書くのでしょうか。
「『以上』がないと契約書として認められないのでは?」
「法律上、必ず書かなければいけないの?」
「何か特別な意味があるの?」
と疑問に思う方もいるかもしれません。
結論からいうと、契約書の最後に「以上」と書くことは、契約を成立させるための必須要件ではありません。
では、なぜ多くの契約書に「以上」と書かれているのでしょうか。
「以上」は契約書の終わりを示す言葉
契約書における「以上」は、簡単にいうと、「ここまでが契約内容です」という区切りを示すための言葉です。
契約書には、契約当事者の名称や契約期間、料金、業務内容、解除条件、損害賠償など、さまざまな内容が記載されます。
そのため、本文がどこで終わるのかを明確にする目的で、最後に「以上」と記載することがあります。
たとえば、
第10条(協議)
本契約に定めのない事項については、甲乙協議の上、決定するものとする。以上
と書けば、「ここまでが契約条項である」ということが視覚的にも分かりやすくなります。
つまり、「以上」そのものが契約上の特別な義務や権利を生み出しているわけではありません。
「以上」がないと契約書は無効になる?
ここは気になるところでしょう。
結論として、契約書に「以上」と書かれていないからといって、それだけで契約が無効になるわけではありません。
契約が成立するかどうかは、「以上」という文字があるかどうかだけで決まるものではありません。
契約の内容や当事者間の合意など、さまざまな事情によって判断されます。
そのため、
「最後に『以上』がないから、この契約書は無効です」
という考え方は適切ではありません。
逆にいえば、「以上」と書いてあれば契約内容に問題がなくなるわけでもありません。
契約書で本当に重要なのは、「以上」と書かれているかどうかではなく、その前に何が書かれているかです。
なぜ「以上」を入れるの?
「以上」は必須ではないのに、なぜ契約書でよく使われるのでしょうか。
大きな理由の一つは、契約書の終わりを明確にするためです。
契約書では、本文の後に署名欄や記名押印欄などが続きます。
たとえば、
本契約の成立を証するため、本書2通を作成し、甲乙各1通を保有する。
以上
令和○年○月○日
甲 住所……
氏名……乙 住所……
氏名……
という構成です。
「以上」を入れることで、契約条項がここで終了し、その後は日付や署名・押印などの形式的な部分が続く、ということが分かりやすくなります。
「以上」の後に契約内容を書いてはいけない?
では、「以上」の後に何か契約内容を書いたらどうなるのでしょうか。
ここは少し注意が必要です。
「以上」と書いた後に、
なお、○○については別途協議する。
など、契約内容に関係する文章を追加してしまうと、どこまでが本文なのか分かりにくくなります。
そのため、契約書の内容として定めたい事項があるのであれば、基本的には「以上」の前にきちんと記載しておく方が分かりやすいでしょう。
「以上」は、契約内容の終わりを示すための区切りとして使うものだからです。
「以上」と「以下」は同じような意味?
契約書では「以上」のほかに、「以下」という言葉もよく登場します。
ただし、両者は意味がまったく違います。
たとえば、
以下「本契約」という。
という表現があれば、「この後に出てくる内容を『本契約』と呼びます」という意味になります。
一方、契約書の最後に単独で置かれる、
以上
は、「ここまでです」という終わりを示す役割を持っています。
また、
100万円以上
のような場合の「以上」は、金額について「100万円を含み、それより多い」という意味です。
同じ「以上」という言葉でも、契約書のどこで使われているかによって意味が変わるので注意が必要です。
契約書で本当に確認したいのは「以上」ではない
契約書をチェックするとき、「最後に『以上』があるか」を気にすることは悪いことではありません。
しかし、それ以上に重要なのは、契約書の中身です。
たとえば、
- 契約期間はいつからいつまでなのか
- 料金はいくらなのか
- 支払期限はいつなのか
- どちらがどこまでの業務を負担するのか
- 契約を解除できるのはどのような場合なのか
- 損害が発生した場合、誰がどこまで負担するのか
- 秘密保持についてどのような義務があるのか
- 契約終了後にも残る義務はあるのか
といった点です。
契約書は、形式が整っているだけでは十分ではありません。
「何を約束したのか」が明確になっていることが重要です。
「以上」があるから安心、ではない
契約書の最後に「以上」と書かれていると、なんとなく正式な書類らしく感じるかもしれません。
しかし、「以上」は契約書を正式なものにする魔法の言葉ではありません。
極端にいえば、
以上
と書かれている契約書でも、重要な条件が抜けていれば、契約内容をめぐってトラブルになる可能性があります。
反対に、「以上」と書かれていないことだけを理由に、その契約書が直ちに無効になるわけでもありません。
大切なのは、契約書の見た目よりも、当事者が何について合意しているのかを具体的に確認することです。
まとめ
契約書の最後にある「以上」は、主に契約書の本文がここで終了することを示すための区切りとして使われています。
「以上」と書かなければ契約書が無効になる、というものではありません。
契約書を作成するときには、「以上」の有無だけに注目するのではなく、
「この契約書で、当事者が何を約束しているのか」
を確認することが大切です。
契約書は、形式を整えることももちろん重要ですが、それ以上に、契約後に起こり得る問題まで考えて内容を設計することが重要です。
「ひな形を使って契約書を作ったけれど、この内容で大丈夫なのか分からない」という場合には、署名・押印をする前に、一度契約内容そのものを確認してみるとよいでしょう。
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大野