行政事件訴訟法第38条の規定があることによって解ける問題
第38条の準用規定は、単に「どの条文が適用されるか」を覚えるよりも、具体的な問題を見たときに、「あっ、第38条でこの規定が準用されるから、取消訴訟以外でもこの制度が使えるんだ」と気づけることが大切です。
特に、試験問題で意味が出やすいのは、次の規定です。
1.試験問題で「この準用があるから解ける」となる規定
| 優先度 | 準用条文 | 問題を解くときの着眼点 |
|---|---|---|
| 特に重要 | 第38条第3項 → 第25条(執行停止) | 無効等確認の訴えでも、執行停止の制度を利用できるか |
| 特に重要 | 第38条第4項 → 第8条(審査請求との関係) | 不作為の違法確認の訴えを提起する前に、審査請求をしなければならないか |
| 特に重要 | 第38条第1項 → 第33条(判決の拘束力) | 義務付けの訴えや差止めの訴えなどでも、拘束力の規定が準用されるか |
| 重要 | 第38条第1項 → 第21条(訴えの変更) | 取消訴訟以外の抗告訴訟でも、国・公共団体に対する請求への変更ができるか |
| 重要 | 第38条第1項 → 第16条~第19条(請求・訴訟の併合) | 取消訴訟以外の抗告訴訟でも、関連する請求を併合できるか |
| 重要 | 第38条第2項 → 第10条第2項 | 無効等確認の訴えと裁決に係る抗告訴訟を提起する場合、原処分の違法を裁決の違法として主張できるか |
準用関係の一覧と試験問題での論点を照らし合わせると、特に覚えておきたいのは、「準用されるもの」と「準用されないもの」の違いです。
2.具体的に、どんな問題が解けるのか?
① 無効等確認の訴えでも、執行停止を申し立てられる
根拠:第38条第3項 → 第25条
例えば、行政庁から営業許可を取り消された事業者が、「そもそも、この処分は無効だ」と主張して、無効等確認の訴えを提起したとします。
裁判が終わるまでの間も処分の効力が問題になる場合、執行停止を申し立てることができるのでしょうか。
ここで第38条第3項を思い出します。
第25条の執行停止に関する規定は、無効等確認の訴えについて準用されています。したがって、無効等確認の訴えでも、執行停止の申立てが可能です。
ただし、申し立てれば必ず認められるわけではなく、執行停止の要件を満たす必要があります。
② 不作為の違法確認の訴えでは、審査請求を先にしなければならないのか
根拠:第38条第4項 → 第8条
例えば、営業許可を申請したのに、行政庁がいつまでも回答しないとします。
この場合、申請者は不作為の違法確認の訴えを提起する前に、審査請求をしなければならないのでしょうか。
第38条第4項は、第8条を不作為の違法確認の訴えに準用しています。
第8条は、原則として、審査請求を経ずに取消訴訟を提起できることを定めています。これが準用されるため、不作為の違法確認の訴えについても、原則として審査請求を先にする必要はありません。
ただし、法律に審査請求前置の特則がある場合などは別です。
③ 義務付けの訴えや差止めの訴えにも、判決の拘束力がある
根拠:第38条第1項 → 第33条
行政庁がすべき処分をしない場合に、その処分をするよう求める義務付けの訴えや、一定の処分をしないよう求める差止めの訴えがあります。
では、これらの訴訟でも、第33条の拘束力に関する規定が準用されるのでしょうか。
第38条第1項は、第33条を取消訴訟以外の抗告訴訟に準用しています。したがって、義務付けの訴えや差止めの訴えにも、第33条の規定が準用されます。
ここで大切なのは、取消訴訟以外の抗告訴訟でも、判決の拘束力に関する規定が適用されるということです。
ただし、義務付け判決や差止め判決の具体的な効力は、それぞれの訴訟の性質や個別の規定も踏まえて考える必要があります。
④ 不作為の違法確認の訴えには、執行停止が準用されない
これは、準用関係を利用した典型的な比較問題です。
| 訴訟の種類 | 執行停止の規定 |
|---|---|
| 取消訴訟 | 第25条が適用される |
| 無効等確認の訴え | 第38条第3項により準用される |
| 不作為の違法確認の訴え | 第38条による準用はない |
無効等確認の訴えには執行停止が準用されますが、不作為の違法確認の訴えには、第38条による執行停止の準用がありません。
不作為の違法確認の訴えは、行政庁が処分をしないことの違法確認を求める訴訟です。処分の効力や執行を一時的に止める執行停止とは、制度の性質が異なります。
このように、第38条第3項と第4項の違いを押さえていれば、準用の有無を問う問題に対応できます。
3.結局、何を覚えておくべきか
私なら、次の3点を優先して覚えます。
- 無効等確認の訴えには、執行停止が準用される。(第38条第3項)
- 不作為の違法確認の訴えには、第8条が準用され、審査請求との関係が問題になる。(第38条第4項)
- 取消訴訟以外の抗告訴訟にも、第33条の拘束力に関する規定が準用される。(第38条第1項)
条文番号を暗記するだけでは、準用規定の意味はなかなか見えてきません。しかし、具体的な事例と結びつければ、「この訴訟でも執行停止ができるのはなぜか」「なぜ審査請求を先にしなくてもよいのか」という形で、条文を使って問題を解けるようになります。
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感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野