ユーチューバーやインフルエンサーは、いったい誰と契約しているのか?
YouTubeで動画を配信したり、Instagramで商品を紹介したりする人たちを、今では珍しく見かけることもなくなりました。
中には、何十万人、何百万人ものフォロワーを抱え、企業の商品を紹介したり、テレビに出演したりする人もいます。
そうした姿を見ていると、ふと疑問に思うことがあります。
いったい、誰と契約して仕事をしているのだろうか。
会社に所属しているのか。それとも、企業から直接仕事を受けているのか。動画を投稿するだけで収入が得られるのか。
実は、ユーチューバーやインフルエンサーの仕事には、さまざまな契約関係が存在しています。
今回は、その仕組みについて考えてみたいと思います。
1.芸能事務所のような会社と契約している人
まず、考えられるのが、インフルエンサーをマネジメントする会社との契約です。
芸能人が芸能事務所に所属するように、ユーチューバーやインフルエンサーも、マネジメント会社などと契約して活動している場合があります。
こうした会社は、例えば次のような業務を担います。
- 企業からの広告案件の紹介
- 報酬や契約条件の交渉
- 撮影やイベント出演などのスケジュール管理
- 活動方針やブランドイメージに関するサポート
ただし、すべてのインフルエンサーが会社に所属しているわけではありません。
また、会社に所属しているからといって、必ずしも会社の社員として働いているとは限りません。
業務委託契約などを結び、個人事業主として活動しているケースも考えられます。
つまり、会社に所属していることと、その会社に雇用されていることは、必ずしも同じではないのです。
2.企業と直接契約している人
次に、企業と直接契約しているケースです。
例えば、化粧品会社が美容系インフルエンサーに商品紹介を依頼する場合を考えてみましょう。
企業は、インフルエンサーに商品を紹介してもらう代わりに、報酬を支払います。
このとき、企業とインフルエンサーの間では、広告や宣伝に関する契約が結ばれることがあります。
契約の内容としては、次のような事項が考えられます。
- どの商品やサービスを紹介するのか
- YouTube動画、Instagram投稿など、どの媒体を使用するのか
- 投稿の回数や公開時期をどうするのか
- 報酬はいくらで、いつ支払われるのか
- 投稿内容について、企業が事前に確認できるのか
- 投稿した動画や写真を企業が広告などに再利用できるのか
一見すると、商品を紹介するだけの仕事に思えるかもしれません。
しかし、企業にとっては、自社の商品やサービスの売上に関わる仕事です。
インフルエンサーにとっても、自分の名前や信用、普段から築いてきたフォロワーとの関係が関わってきます。
だからこそ、何をどこまで引き受けるのか、報酬はいくらなのかといった条件を、事前に整理しておくことが重要になります。
3.商品を無料でもらう場合も、契約関係が生じるのか?
インフルエンサーの投稿を見ていると、「企業から商品を提供してもらいました」という内容を目にすることがあります。
このような場合、必ずしも現金で報酬を受け取っているとは限りません。
商品を無償で提供してもらい、その使用感などを紹介するケースもあります。
では、商品を無料でもらうだけなら、契約とは関係がないのでしょうか。
必ずしもそうとはいえません。
例えば、企業が商品を提供する際に、特定のSNS投稿を依頼したり、投稿を条件として商品を提供したりする場合には、当事者間でどのような約束がなされているかが重要になります。
一方で、商品を無償でもらったからといって、必ず投稿義務が発生するわけでもありません。
商品を提供する側と受け取る側の間で、どのようなやり取りがあったのかによって、関係は変わってきます。
また、広告主から依頼を受けて投稿する場合には、広告であることを消費者に分かるように表示する必要が生じることがあります。
日本では、2023年10月から、広告であることを判別しにくいステルスマーケティングが景品表示法上の規制対象となっています。
商品を提供したという事実だけで一律に判断できるわけではなく、企業と投稿者との関係や、投稿内容の決まり方なども重要です。
企業側にとっても、インフルエンサー側にとっても、曖昧な約束のまま仕事を進めないことが大切です。
4.YouTubeなどのプラットフォームとの関係
ここまで、マネジメント会社や広告主との契約について見てきました。
しかし、ユーチューバーの場合には、もう一つ重要な関係があります。
それが、YouTubeなどのプラットフォームとの関係です。
動画を投稿し、一定の条件を満たしたうえで収益化が認められると、広告収益などを得られる場合があります。
この場合、収益を得るための条件や利用上のルールは、プラットフォームが定める規約や収益化に関する規定などによって決まります。
つまり、企業から動画制作を依頼されていなくても、プラットフォームを通じて収入を得る仕組みがあるわけです。
ただし、動画を投稿すれば必ず収入が発生するわけではありません。
収益化の条件を満たしているか、どのようなコンテンツを配信しているかなどによって、収入の有無や金額は変わります。
このように、同じユーチューバーであっても、企業との広告契約によって収入を得る人もいれば、プラットフォームの収益化制度を利用する人もいます。
複数の方法を組み合わせて活動している人もいるでしょう。
5.動画や写真を作る仕事にも契約が関係する
インフルエンサーの仕事は、商品を紹介することだけではありません。
例えば、企業から依頼を受けて、動画を撮影したり、写真を制作したりする場合もあります。
こうした仕事では、単に「動画を1本作ってください」という約束だけでは、十分とはいえないことがあります。
例えば、次のような点です。
- 動画の企画や撮影、編集のどこまでを担当するのか
- 制作費には何が含まれるのか
- 修正は何回まで対応するのか
- 制作した動画や写真の著作権をどう扱うのか
- 企業が広告やウェブサイトで二次利用できるのか
- 公開後に動画を削除する必要が生じた場合、どうするのか
特に注意したいのが、制作した動画や写真の利用範囲です。
例えば、インフルエンサーが自分のアカウントで動画を公開することと、企業がその動画を自社の広告として長期間利用することは、同じではありません。
企業側は広告として使えることを期待していても、制作者側は自分のアカウントへの投稿だけを想定しているかもしれません。
こうした認識の違いが、後になって問題になることも考えられます。
仕事を引き受ける段階で、何を制作し、誰がどのように利用できるのかを明確にしておくことが重要です。
6.フォロワーが多ければ、契約条件も有利になるのか?
フォロワー数が多い人ほど、企業から依頼を受けやすくなることは考えられます。
しかし、フォロワー数だけで仕事の価値が決まるわけではありません。
例えば、フォロワーが多くても、紹介する商品とフォロワーの関心が合っていなければ、企業が期待する成果につながらない可能性があります。
反対に、フォロワー数がそれほど多くなくても、特定の分野に詳しく、その分野に関心を持つ人たちから信頼されていれば、企業にとって魅力的な依頼先になることもあるでしょう。
こうした事情は、報酬や契約条件を決める際にも関係してきます。
報酬を固定額とするのか、成果に応じた報酬とするのか。投稿だけを依頼するのか、撮影や広告利用まで含めるのか。
同じ商品紹介の仕事でも、内容によって条件は変わります。
だからこそ、仕事を受ける側も、依頼する側も、単純に金額だけを比較するのではなく、何を引き受け、何を提供する契約なのかを確認する必要があります。
7.契約書がなくても、約束は重要
ここまで読んで、「こうした仕事では、毎回きちんと契約書を作っているのだろうか」と疑問に思った方もいるかもしれません。
実際に、どのような書面を作成するかは、取引の内容や当事者間の取り決めによって異なります。
契約は、必ずしも契約書を作成しなければ成立しないわけではありません。法律上、書面が必要となる契約もありますが、一般には口頭の合意でも成立する契約があります。
しかし、契約書がない場合、後になって認識の違いが生じたときに、何を約束していたのかを確認することが難しくなる場合があります。
例えば、次のような問題です。
「動画を1本投稿するだけだと思っていたのに、何度も修正を求められた」
「報酬は決まっていたが、いつ支払われるのか明確になっていなかった」
「自分が制作した動画を、企業が別の広告にも使い始めた」
「投稿後に商品について問題が発生し、削除を求められた」
こうした問題は、インフルエンサーに限った話ではありません。
企業同士の取引でも、個人事業主の仕事でも、約束した内容が曖昧であれば、同じような問題が起こる可能性があります。
なお、取引の内容によっては、フリーランスに業務を委託する場合の法律などが適用され、取引条件の明示といった対応が必要になることもあります。
契約書という形にするかどうかだけでなく、仕事の内容や報酬、権利関係などを事前に明確にしておくことが大切です。
まとめ:華やかに見える仕事も、契約によって成り立っている
ユーチューバーやインスタグラマー、インフルエンサーと聞くと、動画や写真を投稿することが仕事の中心に見えるかもしれません。
しかし、その活動の裏側には、マネジメント会社との契約、企業との広告契約、商品やサービスの提供に関する取り決め、動画制作に関する契約など、さまざまな関係が存在しています。
そして、それぞれの契約には、報酬、業務内容、権利の扱い、責任の範囲など、確認しておくべき事項があります。
これは、インフルエンサーという特別な職業に限った話ではありません。
どのような仕事であっても、相手と約束を交わし、その約束に基づいて仕事を進める以上、契約は身近なところに存在しています。
契約書は、トラブルが起きたときのためだけに作るものではありません。お互いが何を約束したのかを確認し、安心して仕事を進めるためのものでもあるのです。
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感情や立場の違いが関わる問題は、早めに整理しておくことで 将来のトラブルを防げる場合があります。
大野