戦力外通告と「契約」について考える――契約が終わるとき、何が起こるのか

プロ野球のシーズン終盤になると、「戦力外通告」という言葉を目にする機会が増えます。

選手にとっては、これまで所属していた球団から「来季の契約を結ばない」と伝えられる、非常に重い出来事です。

2026年も9月28日から第1次戦力外通告期間が始まり、各球団から来季の契約を結ばない選手が発表されています。

ところで、「戦力外通告」と聞いたとき、

「その場で契約が終わるのでは?」

と思う方もいるかもしれません。

しかし、ここには「契約があること」と「契約を終わらせること」の違いがあります。

今回は、プロ野球の戦力外通告をきっかけに、少し身近な「契約」について考えてみます。

目次

「戦力外通告」=その瞬間に契約が消滅する、ではない

戦力外通告で球団が選手に伝えているのは、基本的には、

「来季の契約を結ばない」

という意思です。

つまり、現在の契約期間が残っている場合には、「今日から契約がなくなる」という意味とは限りません。

ここが、契約を考えるうえで重要なポイントです。

契約には、

  • いつから始まるのか
  • いつまでなのか
  • どのような条件なのか
  • 契約期間が終わった後はどうなるのか
  • 途中で契約を終了できるのか

といった条件があります。

「契約を終了する」と一言でいっても、

契約期間が満了する場合

と、

契約期間の途中で契約を終了する場合

では、意味がまったく違います。

プロ野球の場合には一般の会社との雇用契約とは異なる特殊なルールがありますが、「契約期間」という基本的な考え方を見るうえでは、分かりやすい例といえるでしょう。

「契約満了」と「契約解除」は違う

たとえば、1年間の契約を結んだとします。

契約期間が、

2026年4月1日から2027年3月31日まで

だったとしましょう。

この場合、原則として2027年3月31日までが契約期間です。

そして、その期間が終われば契約も終了します。

これが「契約期間の満了」です。

一方で、

「まだ契約期間が残っているけれど、途中で契約を終了したい」

となれば話は変わります。

途中で終了させることができるのか。

できるとして、どのような条件なのか。

相手方の同意が必要なのか。

違約金や損害賠償の問題はないのか。

こうしたことは、契約書の内容によって変わってきます。

だからこそ、

「契約を結ぶときに、終わるときのことまで考えておく」

ことが大切になります。

契約書で大切なのは「始まり」だけではない

契約書を作るとき、

「何をするのか」

「いくら支払うのか」

といった内容に目が向きがちです。

もちろん、それらは重要です。

しかし、それと同じくらい重要なのが、

「この契約がどのように終わるのか」

という部分です。

たとえば業務委託契約なら、

  • 契約期間はいつまでか
  • 自動更新されるのか
  • 更新しない場合、いつまでに通知するのか
  • 途中で解約できるのか
  • どのような場合に解除できるのか
  • 契約終了後も守らなければならない義務はあるのか

といった点を決めておく必要があります。

契約を結んだ直後には、こうした条項があまり気にならないこともあります。

しかし、実際に問題になるのは、

「契約を終わらせたい」

となったときです。

「そんなつもりではなかった」がトラブルになる

契約書について相談を受けるとき、

「契約したときには、そこまで考えていなかった」

というケースは珍しくありません。

契約を結ぶ段階では、

「とりあえず1年間で」

「問題がなければ更新で」

「途中でやめることはないと思うので」

という程度の認識だったものが、数か月後には状況が変わることがあります。

相手方との関係が悪くなった。

事業方針が変わった。

予定していた仕事がなくなった。

費用負担が大きくなった。

別の会社に依頼したくなった。

こうした事情が生じて初めて、

「この契約、どうやって終わらせればいいの?」

という問題が出てきます。

だからこそ、契約書は「契約を始めるための書類」だけではありません。

契約がうまくいかなかった場合まで含めて、当事者間のルールを決めておくための書面

でもあります。

「契約する」より「契約内容を決める」ことが重要

契約書を作るというと、決まった書式に必要事項を入れれば完成するように思われるかもしれません。

しかし、実際にはそう簡単ではありません。

たとえば業務委託契約なら、

「何を依頼するのか」

だけでなく、

「どこまでを業務に含めるのか」

「成果物は何なのか」

「報酬はいつ発生するのか」

「修正は何回までなのか」

「途中でやめた場合の費用はどうするのか」

など、実際の取引内容に応じて決めなければならないことがあります。

つまり、契約書作成で大切なのは、単に文章を書くことではありません。

実際の取引内容を整理し、必要な条件を確認し、それを契約書という形に落とし込むこと。

そこに契約書を作成する意味があります。

戦力外通告から考える「契約の終わり」

プロ野球の戦力外通告は、選手にとって非常に大きな出来事です。

一方で、契約という視点から見ると、

「いつまで契約が続くのか」

「契約が終わると何が変わるのか」

「次の契約を結ぶことができるのか」

という、契約終了後の問題も見えてきます。

実際、NPBでは「自由契約選手」という制度があり、自由契約選手として公示された後は、他球団とも選手契約を締結できる仕組みになっています。

また、「任意引退」は自由契約とは異なる扱いです。NPBの野球協約では、任意引退選手について一定の条件のもとで契約が解除されることなどが定められています。

同じ「球団を離れる」という結果でも、

どのような形で契約が終了するのかによって、その後の扱いが変わる。

これは、プロ野球に限った話ではありません。

契約は「結ぶとき」だけではなく「終わるとき」も考える

契約を結ぶときには、どうしても、

「何を約束するのか」

に意識が向きます。

しかし、本当に重要なのは、その約束が最後まで問題なく続くとは限らないということです。

だからこそ、

契約期間

更新

解約

解除

契約終了後の義務

といった部分についても、最初の段階で確認しておく必要があります。

「契約書を作る」ということは、きれいな文章を作ることだけではありません。

その取引が実際にどう進むのか。

何が起きたら困るのか。

どこまでを約束するのか。

そして、どうなれば契約を終えるのか。

そこまで考えて、初めて実際の取引に合った契約書になります。

戦力外通告というニュースを見たとき、

「選手が戦力外になった」

という結果だけではなく、

「契約とは、始まるときだけでなく、終わるときにもルールが必要なのだ」

と考えてみると、契約書の役割が少し違って見えてくるかもしれません。


契約書は、その先まで。

南本町行政書士事務所では、定型的な書式に当てはめるだけではなく、実際の取引内容を整理し、必要な条件を確認したうえで、契約書という書面に落とし込んでいます。

業務委託契約、金銭消費貸借契約、秘密保持契約(NDA)など、取引内容に応じた契約書の作成・見直しについてご相談ください。

大野

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