法務部がない会社は契約書をどうしてる?社長や担当者が確認するときの注意点
「うちの会社には法務部がありません。契約書はみんなどうしているのでしょうか?」
中小企業やスタートアップの経営者の方から、このような疑問を聞くことがあります。
大企業であれば、契約書を法務部が確認し、必要に応じて修正案を作成したり、リスクを整理したりする体制が整っていることがあります。
しかし、すべての会社に法務部があるわけではありません。
法務部がない会社では、社長や営業担当者、総務・経理担当者などが契約書の確認を担当しているケースも少なくありません。
では、法務部がない会社は、実際にどのように契約書を処理しているのでしょうか。
この記事では、法務部がない会社でよくある契約書対応の方法と、それぞれの注意点について解説します。
法務部がない会社では、誰が契約書を確認している?
法務部がない会社では、契約書の確認を専門部署ではなく、次のような人が担当していることがあります。
- 社長・代表者
- 営業担当者
- 総務担当者
- 経理担当者
- 事業責任者
- 外部の専門家
特に中小企業では、社長自身が契約書を確認して、そのまま締結することも珍しくありません。
また、営業担当者が取引先から契約書を受け取り、
「特に問題なさそうなので、このまま進めて大丈夫です」
と社内で判断することもあります。
しかし、契約書の内容を確認することと、契約書のリスクを適切に判断することは、必ずしも同じではありません。
一見すると問題がなさそうな契約書でも、実際には、
- 損害賠償責任が広く設定されている
- 契約期間が長く、自動更新される
- 解約が難しい
- 成果物や著作権の帰属が一方的になっている
- 秘密保持義務が過度に広い
- 支払条件が自社に不利になっている
- 契約終了後も義務が残る
といった問題が含まれていることがあります。
法務部がない会社の契約書対応①:社長が自分で確認する
最もよくある方法の一つが、社長や代表者が自分で契約書を確認する方法です。
社長は会社の事業内容や取引の実態をよく理解しています。
そのため、契約書の内容が実際の取引と合っているかを判断するという点では、社長自身が確認することには大きな意味があります。
例えば、
「この業務は実際にはここまでしか対応しない」
「この作業は相手方が担当する予定だ」
「この成果物の著作権は自社に残したい」
といった事情は、外部の専門家よりも、実際に事業を行っている社長の方がよく把握しています。
一方で、社長が契約書を確認する場合には、注意すべき点もあります。
「読んだ」ことと「リスクを確認した」ことは違う
契約書を一通り読んで、
「特におかしなことは書いていなさそうだ」
と思っても、それだけで契約上のリスクを把握できているとは限りません。
契約書では、重要な内容が一つの条文だけで完結していないことがあります。
例えば、契約解除に関する条項と損害賠償に関する条項を組み合わせることで、実質的に大きな責任を負うことになるケースもあります。
また、契約書の内容が自社の実際の取引と合っていない場合、契約書に書かれた内容が後から問題になる可能性もあります。
法務部がない会社の契約書対応②:営業担当者や担当部署が確認する
取引先から契約書を提示された場合、まず営業担当者が内容を確認する会社もあります。
営業担当者は取引先との関係や、実際の商談内容を把握しています。
そのため、
「この契約書は、実際の話と違う部分がある」
「この条項は、取引先との間では別の説明を受けている」
といった点を発見できることがあります。
これは、契約書を確認するうえで重要な役割です。
ただし、営業担当者だけで契約上のリスクまで判断するのは難しい場合があります。
例えば、営業担当者が、
「取引先も普通に使っている契約書だから大丈夫だろう」
「この業界では一般的な内容だから問題ないだろう」
と判断しても、その契約書が自社にとって有利とは限りません。
契約書は、相手方にとって一般的な内容であっても、自社にとっては不利な内容になっている可能性があります。
法務部がない会社の契約書対応③:ひな形をそのまま使う
自社で契約書を作成する場合、インターネット上のひな形や、過去に使用した契約書を利用する方法もあります。
これは、毎回ゼロから契約書を作成する必要がないため、非常に便利です。
例えば、
- 業務委託契約書
- 秘密保持契約書
- 売買契約書
- 継続的取引契約書
など、ある程度定型的な取引であれば、ひな形を利用することが合理的な場合もあります。
しかし、ひな形を使う場合に注意しなければならないのは、
そのひな形が、自社の取引に本当に合っているのか
という点です。
契約書は、同じ「業務委託契約書」であっても、実際の業務内容によって必要な条項が異なります。
例えば、
- 成果物を納品するのか
- 継続的な役務を提供するのか
- 著作権は誰に帰属するのか
- 再委託は可能なのか
- 顧客情報を取り扱うのか
- 秘密情報をどの程度扱うのか
によって、契約書の内容は変わります。
ひな形はあくまで出発点です。
そのまま使用するのではなく、実際の取引内容に合わせて修正することが重要です。
法務部がない会社の契約書対応④:AIを使って契約書を作成・確認する
最近では、生成AIを利用して契約書を作成したり、契約書の内容を確認したりする方法も増えています。
AIを使えば、契約書のたたき台を短時間で作成できます。
また、
「この契約書の注意点を教えて」
「この条項を分かりやすく説明して」
「自社に不利な条項があるか確認して」
といった使い方も可能です。
法務部がない会社にとって、AIは契約書業務を効率化する有力な手段の一つです。
ただし、AIを利用する場合にも注意が必要です。
AIは契約書を作れても、取引の実態を完全には把握できない
契約書で重要なのは、条文そのものだけではありません。
実際の取引では、
- 誰が何をするのか
- どのような成果を求めるのか
- 問題が起きた場合に誰が対応するのか
- どの程度の損害まで負担するのか
- 契約終了後に何が残るのか
といった事情を踏まえて、契約内容を設計する必要があります。
AIに入力した情報が不十分であれば、作成された契約書も不十分なものになる可能性があります。
そのため、AIを使って契約書を作成した場合でも、
「自社の実際の取引に合っているか」
「必要な内容が抜けていないか」
「自社にとって過大な責任を負う内容になっていないか」
を確認する必要があります。
AIは契約書作成を効率化できますが、AIが作成した契約書をそのまま使用すれば安全というわけではありません。
法務部がない会社の契約書対応⑤:必要なときだけ外部の専門家に依頼する
法務部を設置するほどの契約書業務がない会社では、必要なときだけ外部の専門家に依頼する方法もあります。
例えば、
- 重要な取引を開始するとき
- 取引先から契約書を提示されたとき
- 高額な契約を締結するとき
- 新しいビジネスを始めるとき
- 自社で作成した契約書に不安があるとき
- AIやひな形で作った契約書を確認したいとき
などです。
この方法であれば、常勤の法務担当者を雇用しなくても、必要な場面で専門的な確認を受けることができます。
すべての契約書を毎回外部に依頼する必要はありません。
重要度やリスクに応じて、
- 社内で対応する契約書
- ひな形を利用する契約書
- 外部の専門家に確認を依頼する契約書
を分けることも一つの方法です。
法務部がない会社は「すべてを専門家に任せる」必要はない
法務部がないからといって、すべての契約書を外部の専門家に任せなければならないわけではありません。
重要なのは、契約書の内容や取引の重要性に応じて、対応方法を使い分けることです。
例えば、次のような考え方があります。
比較的定型的な契約
自社で管理しているひな形を利用し、社内で確認する。
重要な契約
社内で取引内容を整理したうえで、外部の専門家に確認を依頼する。
相手方から提示された契約書
自社に不利な条項がないか確認する。
新しいビジネスに関する契約
契約書を作る前に、取引の仕組みそのものを整理する。
契約書は、すべて同じように扱う必要はありません。
契約金額、取引期間、事業への影響、損害が発生した場合の大きさなどを考慮して、対応を分けることが重要です。
法務部がない会社で、まず整えておきたい契約書の管理方法
契約書の内容を確認することだけでなく、締結した契約書を管理することも重要です。
例えば、最低限でも次のような情報を管理しておくとよいでしょう。
- 契約相手
- 契約の種類
- 契約締結日
- 契約期間
- 自動更新の有無
- 解約期限
- 契約書の保存場所
- 担当者
特に注意が必要なのが、自動更新条項です。
契約書を締結した時点では問題がなくても、解約期限を過ぎてしまうと、契約が自動的に更新されることがあります。
契約書を締結して終わりにするのではなく、
いつまで契約が続くのか
いつまでに解約を申し入れる必要があるのか
を管理しておく必要があります。
法務部がない会社の契約書対応は「社内+外部専門家」の組み合わせが現実的
法務部がない会社では、
社長がすべて確認する
営業担当者がすべて確認する
ひな形をそのまま使う
といった対応が行われることがあります。
これらの方法が必ずしも間違っているわけではありません。
実際の取引内容を最もよく知っているのは、社長や担当者だからです。
ただし、契約書の法的なリスクや、条項同士の関係まで社内だけで確認することが難しいケースもあります。
そのため、
取引の実態を把握している社内担当者が内容を整理し、必要に応じて外部の専門家が契約書を確認する
という役割分担が、法務部のない会社にとって現実的な方法の一つです。
法務部を設置するほどの業務量がなくても、重要な契約書だけ専門家に確認を依頼することはできます。
AIで作成した契約書や、ひな形を利用した契約書も確認サポートできます
最近では、AIやインターネット上のひな形を利用して、契約書を作成する会社も増えています。
しかし、重要なのは、
どのような方法で契約書を作ったか
ではなく、
最終的に自社の取引内容に合った契約書になっているか
ということです。
AIやひな形で作成した契約書について、
- この内容で締結して問題ないか
- 自社に不利な条項がないか
- 条項が不足していないか
- 実際の取引内容と合っているか
- どこを修正すべきか
といった確認を依頼することもできます。
法務部がない会社であっても、すべてを自社だけで判断する必要はありません。
契約書の作成や内容確認について不安がある場合には、契約書の内容だけでなく、実際の取引内容も踏まえて確認することが大切です。
まとめ:法務部がない会社でも、契約書のリスク管理はできる
法務部がない会社では、社長や営業担当者、総務・経理担当者などが契約書の確認を担当していることがあります。
また、ひな形やAIを利用して契約書を作成する会社も増えています。
重要なのは、法務部があるかどうかではありません。
自社にとって重要な契約書について、
誰が確認するのか
どのような基準で確認するのか
いつ外部の専門家に相談するのか
をあらかじめ決めておくことです。
すべての契約書を専門家に依頼する必要はありません。
一方で、重要な契約や複雑な取引については、契約を締結する前に専門家へ相談することで、後から問題が発生するリスクを減らせる場合があります。
法務部がない会社の契約書について、
- 取引先から提示された契約書を確認してほしい
- 自社の契約書を作成したい
- AIやひな形で作成した契約書を確認してほしい
- 自社の取引内容に合わせて契約書を見直したい
といった場合には、契約書の内容確認・作成をご相談ください。
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大野