さて、いきなりですが問題です。
AさんはBさんと甲土地について売買契約を締結しました。Aさんが買主で、Bさんが売主です。
甲土地を買い受けたAさんはCさんと甲土地を売却する契約を締結しました。
その後、CさんのところにBさんが現れ「Aの強迫で甲土地を売却したので、取消しました。よって、甲土地の所有権はBにある」と言ってきました。
このとき、Bさんは登記を備えていませんでしたが、BさんはCさんに対して所有権を主張できるでしょうか?
さあ、どうでしょう?
強迫については民法第96条に規定があります。
この条文を根拠としてBさんはAさんとの売買契約を取消しています。
しかし、CさんはAさんと甲土地について売買契約を締結していますから、保護が必要ではないでしょうか?
正解は「できない」です。
本件の場合、Cさんは「取消し後の第三者」です。
この場合、AさんからBさんへ、AさんからCさんへ、「Aさん」を起点とした二重譲渡に類似する関係にあるとして、対抗関係として登記を先に備えた方が所有者となると考えられています。
BさんからAさんへ所有権が移転し、取消によりAさんへ移転していた所有権がBさんへ戻ると考えているため(復帰的物権変動)です。
したがって、Bさんは登記を有していないですから、Cさんに対して所有権を主張することはできません。
なお、BさんのAB間の契約の強迫による取消が、AC間の契約の「前」であった場合、Cさんを保護する規定がないため、Bさんは登記がなくともCさんに所有権を主張することができます。
大野