さて、いきなりですが問題です。

AとBが請負契約によりBに建物を建築させてその所有者となり、その後Cに売却した。Cはこの建物をDに賃貸し、Dが建物を占有していたところ、この建物の建築の際におけるBの過失により生じた瑕疵により、その外壁の一部が剥離して落下し、通行人Eが重傷を負った。この場合の不法行為責任に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、正しいものはどれか。

1.Aは、この建物の建築の際において注文又は指図に過失がなく、かつ、その瑕疵を過失なくして知らなかったときでも、Eに対して不法行為責任を負うことがある。

2.Bは、Aに対してこの建物の建築の請負契約に基づく債務不履行責任を負うことがあっても、Eに対して不法行為責任を負うことはない。

3.Cは、損害の発生を防止するため必要な注意をしていたときでも、瑕疵ある土地の工作物の所有者として、Eに対して不法行為責任を負うことがある。

4.Dは、損害の発生を防止するため必要な注意をしていたときでも、瑕疵ある土地の工作物の占有者として、Eに対して不法行為責任を負うことがある。

これは宅建の平成8年の試験問題です。

さて、正解はどれでしょうか。

Aさんは建物の注文者です。
Bさんは建物の請負人です。
Cさんは所有者です。
Dさんは占有者です。

誰がどんな不法行為責任を負う可能性があるのでしょうか?

答えは、3.となります。

Aさんは注文者の責任を負う可能性があります(民法716条)が、それは注文、指図について過失があった場合に限定されますから、過失がないと問題文で規定している以上、責任は負いませんので間違いとなります。

Bさんは過失により生じた瑕疵が原因となってEさんがケガをしていますから、Eさんに対して不法行為が成立します(民法709条)。したがって、不法行為責任を負うことはないとする問題文は間違いとなります。

Cさんは工作物の所有者として責任を負う可能性があります(民法717条1項但書)。そして、工作物の占有者であるDさんが損害発生を防止するために必要な注意をしていたとなった場合、Cさんも損害発生防止のために必要な注意をしていたとしても不法行為責任を負うことになります(無過失責任)。よって問題文は正しいことになります。

Dさんは工作物の占有者として責任を負う可能性があります(民法717条)が、所有者と異なり、損害発生を防止するために必要な注意をしていた場合には不法行為責任を負いません。問題文でもそのように書かれていますから、不法行為責任を負わないため、間違いとなります。

工作物の所有者はAさんではなくCさんである、ということに注意が必要な問題かなと思います。

大野