特定物の物権移転等以外の双務契約において、旧法では、当事者の責めに帰すべき事由でない場合で債務を履行することが出来ないケースにおいて、債務者は反対給付を受けることが出来ないとされていた。

例えば、ある講演をする依頼があり(特定物の物権移転以外の双務契約)、当日台風で行けなかったとする(履行不能)。このケースでは、講演家は依頼料をもらえないとする規定である(旧法における債務者主義)。

この場合、契約自体は存続していると考えられているため、別日にやり直すなど、新たな債務履行を求められることがある。

新法下ではこのケースの場合に双方から契約の解除が出来るとし公平性を担保したということになった。

契約の解除は、⑰で後述するが、新法下では「解除」の概念が大きく変わる。

簡単に説明すると、債務不履行による損害賠償請求をするには債務者の帰責性を求めるが(新415条1項)、債務不履行による解除をするには帰責性を要求しないということである。

よって、上記ケースのように、債権者、債務者双方に帰責性のない不可抗力のような事案であっても損害賠償請求は出来ないが、解除は出来るということになる。

解除は履行遅滞、不完全履行、履行不能とあり、債務不履行の損害賠償請求と要件が重なっていたので、従来型の理解でいる場合にはなかなか頭に入ってこないかもしれないが、解除の相手方の帰責性を要求すると、今回のようなケースで弊害が生じることからこのように改正されたのである。

西本