民法653条において、委任の終了事由が列挙されています。
①委任者または受任者の死亡
②委任者又は受任者が破産手続開始の決定を受けたこと
③受任者が後見開始の審判を受けたこと
上記の事由があれば委任契約が終了するといわれています。
委任契約は信頼関係を基礎にした契約ですから、委任者または受任者がが死亡したり、破産した場合には委任契約が終了するとされています。
委任者が死亡した場合、受任者と相続人との間に信頼関係があるとは限らないですから。
最近では、死後事務委任契約という委任契約が注目されています。
少子高齢化社会において、子供がいない家庭、子供も高齢となって老老介護となっている家庭もあります。
そのような場合に限られませんが、委任者が死亡した後に何かの行為を依頼する内容の委任契約を結ぶというのが死後事務委任契約です。
あれ?でも、委任契約が終了する事由として委任者の死亡を掲げていますから、死後事務委任契約を締結しても意味がないのではないでしょうか。
難しい言葉にはなりますが、民法653条が強行規定なのか任意規定なのかが問題となります。
強行規定の場合は当然に委任者の死亡により委任契約は終了することになります(法律の規定が強制的に適用されますので)
任意規定の場合は契約の内容で自由に変えれる、すなわち委任者と受任者との間で委任者の死亡という事由が発生しても委任契約は終了しない、とすることが可能となります。
どちらなんだと問題となった事件において裁判所は、任意規定であるとの判断をしています。
委任者と受任者との契約で自由に決めてもよいと考えられているのです。
そのため、死後事務委任契約は委任者が死亡したとしても終了しないということになります。
これは、明示的に委任者の死亡後も委任契約は継続するとした場合であっても、そのような明記はされていないものの委任者の死亡後の事務に関する契約という黙示的なものであってもよいと解されています。
委任者の死亡後に死後事務委任契約が終了するとなった場合、契約を結んだ意味がないですからね。
まっとうな判断がなされたのだと思います。
ただ、委任者が死亡すると相続が発生する場合があります。
相続人は委任者の地位を承継します(民法896条)ので、相続人が委任者として委任契約の解除(民法651条)ができてしまいます。
せっかく委任者の死亡によっても委任契約が終了しないとされたとしても、相続人に解除されてしまっては意味がありません。
この話はまた別の機会に
大野