新しい取引先ができたら、契約書は毎回作るべき?

新しい取引先ができるたびに、「また契約書を作ったほうがいいのだろうか」と迷うことがあります。

すでに同じような取引をしている会社があれば、「前の取引先と同じ契約書を使えばいいのでは?」と考えることもあるでしょう。

結論からいうと、新しい取引先ができたからといって、必ず毎回ゼロから契約書を作り直す必要はありません。

ただし、だからといって、以前の契約書をそのまま使えばよいとも限りません。

重要なのは、新しい取引先との実際の取引内容に、契約書の内容が合っているかを確認することです。

目次

新しい取引先だからといって、毎回作り直す必要はない

たとえば、同じ会社が複数の取引先に対して、ほぼ同じサービスを提供しているとします。

業務内容、料金、支払時期、納期、成果物、契約期間などがほとんど同じであれば、基本となる契約書のひな形を用意し、取引先ごとに必要な部分を調整する方法があります。

毎回一から契約書を作るよりも、ひな形を活用したほうが効率的です。

ただし、「同じような取引だから同じ契約書で大丈夫」と考えてしまうのは危険です。

取引先によって、細かな条件が違うことは珍しくありません。

同じ取引でも、取引先によって条件は変わる

たとえば、同じ業務を請け負う場合でも、

  • 料金や支払条件が違う
  • 業務の範囲が違う
  • 納期が違う
  • 成果物の内容が違う
  • 修正回数が違う
  • 秘密保持について特別な条件がある
  • 著作権などの権利の扱いが違う
  • 契約期間や更新方法が違う
  • 中途解約の条件が違う

といったことがあります。

この違いを確認せず、以前の契約書をそのまま流用すると、実際の取引と契約書の内容が食い違うことになります。

契約書を作る目的は、「契約書という書類を用意すること」ではありません。

実際にどのような取引をするのかを整理し、その内容を契約書に落とし込むことが重要です。

「ひな形+取引先ごとの調整」が現実的

では、新しい取引先ができるたびに毎回契約書を作り直すべきなのでしょうか。

実務上は、基本となるひな形を用意し、取引先ごとに必要な部分を調整する方法が現実的です。

たとえば、

「業務委託契約書」という基本のひな形を用意しておき、

  1. 今回の業務内容
  2. 報酬額
  3. 支払時期
  4. 契約期間
  5. 成果物
  6. 修正や追加業務の扱い
  7. 権利関係
  8. 秘密保持
  9. 契約終了・解除の条件

などを、今回の取引内容に合わせて確認します。

共通する部分はひな形を利用し、違う部分だけを調整するわけです。

これなら、契約書作成の負担を抑えながら、取引先ごとの条件も反映できます。

「前回と同じだから大丈夫」が一番危ない

契約書を流用するときに特に注意したいのが、古い契約書に残っている条件をそのまま使ってしまうことです。

たとえば、以前の取引では「納品後30日以内に支払う」という条件だったとしても、今回の取引では「月末締め翌月末払い」になっているかもしれません。

それなのに以前の契約書をコピーして、取引先の名前と金額だけ変更したらどうなるでしょうか。

実際の合意と契約書の内容が違ってしまいます。

また、担当者が変わったり、事業内容が変わったりすると、以前は必要だった条項が現在の取引には合わなくなっていることもあります。

契約書のひな形は便利ですが、コピーして終わりではありません。

契約書を作らなくてもよいケースはある?

新しい取引先との取引だからといって、必ず独立した契約書を作らなければならないわけではありません。

取引の内容によっては、既存の基本契約に個別の発注書や注文書、申込書などを組み合わせて運用することもあります。

たとえば、継続的な取引について基本的なルールを「基本契約書」で定め、個々の仕事については発注書や注文書で、

「今回の業務は何か」
「いくらなのか」
「いつまでなのか」

といった個別条件を定める方法です。

つまり、「新しい取引先ができた=必ず新しい契約書を一から作る」という考え方ではなく、どの書面で、どこまでの条件を定めるのが適切なのかを考えることが大切です。

新しい取引先ができたときに確認したいこと

新規取引先との契約では、まず次のような点を整理してみましょう。

① 以前の取引と本当に同じ内容なのか

「業務委託だから前回と同じ」と決めつけず、具体的な業務内容まで確認します。

② 条件に違いはないか

料金、納期、支払方法、契約期間などに変更がないか確認します。

③ 今回だけの特別な条件はないか

取引先から特別な要望を受けている場合、それが契約書に反映されているか確認します。

④ 以前のひな形が現在も適切なのか

何年も前に作った契約書を使い続けている場合は、現在の取引内容に合っているか見直すことも重要です。

契約書は「取引先ごと」に作るというより、「取引内容ごと」に考える

新しい取引先ができるたびに、毎回まったく新しい契約書を作る必要はありません。

一方で、取引先の名前や金額だけを変更して、以前の契約書をそのまま使うのもおすすめできません。

大切なのは、新しい取引先との取引内容を整理し、既存の契約書で対応できる部分と、今回の取引に合わせて変更すべき部分を分けることです。

契約書は、取引先が増えるたびに増やしていく「書類」ではありません。

実際の取引条件を整理し、それを当事者同士で確認するための「共通の土台」です。

そのため、同じような取引を繰り返す会社ほど、単に契約書のひな形を増やすのではなく、どこが共通で、どこが取引先ごとに違うのかを整理できる契約書の仕組みを作っておくことが大切です。

「新しい取引先だから契約書を作る」のではなく、「新しい取引が始まるから、その取引条件をどう書面にするかを考える」。

この視点を持つと、契約書作成の負担を抑えながら、取引先ごとの条件にも対応しやすくなります。

大野

目次