契約書の「なお書き」って何?意味・使い方・注意点をわかりやすく解説

契約書を読んでいると、

「なお、○○の場合はこの限りではない。」

「なお、甲は乙に対し、別途○○を請求することができる。」

といった「なお」という表現が出てくることがあります。

普段の文章ではあまり使わないため、「この『なお』は何のために書いてあるの?」と疑問に感じる方もいるでしょう。

契約書における「なお書き」は、本文で定めた内容に関連して、補足的な条件や例外、追加の取り決めを示すために使われる表現です。

ただし、「なお」と書いてあるからといって、必ずしも重要度が低いとは限りません。

むしろ、なお書きの部分に契約上重要な条件が入っていることもあります。

この記事では、契約書の「なお書き」とは何なのか、具体例を交えながら分かりやすく解説します。

目次

契約書の「なお書き」とは?

契約書の「なお書き」とは、ある条文で基本的なルールを定めたうえで、それに関連する補足事項や例外、追加条件などを続けて記載する部分を指します。

例えば、次のような条文です。

第○条(契約期間)
本契約の期間は、2026年10月1日から2027年9月30日までとする。
なお、期間満了の1か月前までに甲乙いずれからも書面による申し出がない場合、本契約は同一条件で1年間更新されるものとする。

最初の文章では「契約期間」を定めています。

そのうえで「なお」から始まる部分では、契約期間が終了した後の更新についてのルールを補足しています。

このように、なお書きは、本文だけでは足りない関連事項を付け加えるために使われます。

「なお」は「重要ではない」という意味ではない

ここは特に注意したいポイントです。

「なお書き」という名前から、単なるおまけのように感じるかもしれません。

しかし、契約書ではそうとは限りません。

なお書きとして書かれている内容も、契約当事者が合意した契約条件の一部です。

例えば、

なお、振込手数料は乙の負担とする。

と書かれていれば、振込手数料を誰が負担するのかという具体的な契約条件になります。

また、

なお、納品後に発生した修正については、別途費用を請求するものとする。

となっていれば、追加費用が発生する条件を定めています。

つまり、「なお」と書いてあるから重要ではない、ということではありません。

契約書を読むときは、「なお」の後に何が書かれているのかもしっかり確認する必要があります。

「なお書き」では何が書かれる?

なお書きには、さまざまな内容が記載されます。

代表的なのは次のようなものです。

1.例外を定める

本文のルールに対する例外を示す場合です。

甲は、毎月末日までに乙へ報酬を支払うものとする。
なお、末日が金融機関の休業日に当たる場合は、翌営業日を支払日とする。

基本的な支払日を定めたうえで、休日の場合について補足しています。

2.追加の条件を定める

本文に関連する追加条件を記載することもあります。

乙は、納品物を納品するものとする。
なお、納品に必要となる交通費は乙の負担とする。

納品義務について定めた後、その際に発生する費用について追加しています。

3.特定の場合の取り扱いを定める

通常の場合とは異なるケースについて補足することもあります。

本契約に基づく業務は原則としてオンラインで実施する。
なお、甲乙が合意した場合には、対面で実施することができる。

基本的な方法を定めたうえで、別の方法を認めています。

4.本文の内容を補足する

本文だけでは分かりにくい部分を具体化するために使うこともあります。

報酬は月額10万円とする。
なお、業務量が通常の範囲を大幅に超える場合には、甲乙協議のうえ、別途報酬を定めることができる。

この場合、「通常の範囲を大幅に超える」という条件が、後半のなお書きで追加されています。

「なお」と「ただし」はどう違う?

契約書では「なお」だけでなく、「ただし」もよく使われます。

似ているように見えますが、使われ方には違いがあります。

簡単に整理すると、

「なお」=前の内容に関連する事項を補足する

「ただし」=前のルールに対する例外・制限を示す

というイメージです。

例えば、

甲は、乙に対して毎月末日までに報酬を支払うものとする。
なお、振込手数料は甲の負担とする。

これは、支払日に関する規定に関連して、振込手数料について補足しています。

一方、

甲は、乙に対して毎月末日までに報酬を支払うものとする。
ただし、乙が必要な請求書を提出しなかった場合は、この限りではない。

こちらは、原則として「毎月末日までに支払う」というルールに対して、一定の場合にはそのルールを適用しないという例外を設けています。

そのため、契約書を作成するときには、「補足したいのか」「例外を設けたいのか」を考えて表現を選ぶことが重要です。

「なお書き」を使えば何でも書いていいわけではない

なお書きは便利な表現ですが、何でも「なお」で付け足せばよいわけではありません。

例えば、次のような条文があったとします。

第○条(報酬)
乙の報酬は月額10万円とする。
なお、契約期間は1年間とし、秘密保持義務を負うものとし、損害賠償については別途定める。

これでは、一つの「なお書き」の中に、

  • 契約期間
  • 秘密保持義務
  • 損害賠償

という複数の重要事項が詰め込まれています。

このような書き方では、どこまでが「報酬」の話なのか分かりにくくなります。

契約書では、単に条件を入れるだけではなく、何についての条件なのかが読み手に分かる構造にすることが大切です。

重要な事項であれば、独立した条項として整理したほうが分かりやすい場合もあります。

「なお書き」は契約書を読みやすくするための工夫でもある

契約書では、すべての条件を一つの文章に詰め込んでしまうと、かえって読みにくくなります。

そこで、

原則としてこうする。
なお、この場合はこうする。

という形で関連する内容を整理すると、文章の流れを保ちながら条件を追加できます。

ただし、契約内容が複雑になるほど、「なお書き」で済ませるのが適切なのかを考える必要があります。

例えば、例外が何種類もある場合や、重要な条件が複数存在する場合には、なお書きでつなげるよりも、条項を分けたり、項や号を使ったりしたほうが明確です。

契約書の「なお書き」は、最後まで読むことが大切

契約書を読むとき、「なお」から始まる文章を飛ばしてしまうのはおすすめできません。

なお書きには、

  • 例外
  • 追加料金
  • 費用負担
  • 契約更新
  • 特定の場合の取り扱い
  • 当事者の追加義務

など、実際の取引に影響する条件が書かれていることがあります。

契約書は、条文の見出しだけを見ても内容のすべては分かりません。

「なお」「ただし」「この限りでない」などの表現が出てきたときは、その前のルールに対して何が追加・変更されているのかを確認すると、契約内容を理解しやすくなります。

まとめ

契約書の「なお書き」は、本文で定めた内容に関連して、補足事項や追加条件などを示すために使われる表現です。

「なお」と書いてあるから重要ではないというわけではなく、その中に契約上重要な条件が含まれていることもあります。

一方で、重要な事項を何でも「なお」でつなげてしまうと、契約書の構造が分かりにくくなることがあります。

契約書を作成するときには、

「何を補足したいのか」
「例外なのか、追加条件なのか」
「独立した条項にしたほうが分かりやすくないか」

を考えて文章を組み立てることが大切です。

契約書は、単に条件を書き並べれば完成するものではありません。

実際の取引内容を整理し、必要な条件を確認したうえで、当事者双方が誤解しにくい形に落とし込むことが重要です。

大野

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