契約書を作るときに「抜けやすい」項目とは?

契約書を作るときは、契約金額や業務内容、支払期限など、最初に思いつく条件から書き始めることが多いものです。

ところが、実際に契約書を作っていると、「そこまで決めていなかった」「この場合のことを考えていなかった」という項目が意外と出てきます。

契約トラブルは、契約書に書いてある内容だけでなく、本来決めておくべきだったのに書かれていない部分から起こることもあります。

今回は、契約書を作るときに抜けやすい項目を、具体的に見ていきます。

目次

1.契約期間と更新の条件

契約期間そのものは書いていても、「期間が終わった後どうするのか」まで決めていないケースがあります。

たとえば、

  • 契約期間は1年間
  • 期間終了後はどうなるのか
  • 自動更新なのか
  • 更新する場合は何日前までに申し出るのか
  • 更新しない場合はどうするのか

といった点です。

特に継続的な業務委託や取引では、契約期間だけでなく、更新・終了まで含めて整理しておくことが重要です。

2.支払条件の細かい部分

「報酬は○万円」と書いただけでは、支払いについて十分とは限りません。

たとえば、

  • いつまでに支払うのか
  • 請求書はいつ発行するのか
  • 振込手数料はどちらが負担するのか
  • 分割払いの場合、それぞれの支払時期はいつか
  • 追加作業が発生した場合の料金はどうするのか

などがあります。

金額そのものより、実際にどのような流れでお金が動くのかを確認すると、抜けている条件が見つかりやすくなります。

3.追加作業・仕様変更があった場合

契約時には予定していなかった作業が後から発生することがあります。

「最初に決めた業務以外の仕事を頼まれた場合、追加料金は発生するのか」

という問題です。

たとえば業務委託では、当初の依頼内容に含まれていない修正や追加作業が増えてしまうことがあります。

その場合に、

  • 何を契約上の業務とするのか
  • 追加作業とは何か
  • 追加料金が発生する条件
  • 追加作業を依頼する方法

などを決めておくと、後から「これは契約に含まれている」「いや、別料金だ」という争いになりにくくなります。

4.納品・検収の条件

成果物を納品する契約では、納品について書いていても、「納品したら終わり」なのか「相手の確認が終わって初めて完了」なのかが曖昧になっていることがあります。

たとえば、

  • どの時点を納品とするのか
  • 相手は何日以内に確認するのか
  • 修正が必要な場合はどうするのか
  • 検収が終わる条件は何か
  • いつをもって業務完了とするのか

といった点です。

「納品」という言葉だけで済ませず、実際の取引では何が起きるのかを順番に整理することが大切です。

5.契約終了後にどうするか

契約中のことは考えていても、契約が終了した後のことが抜けているケースがあります。

たとえば、

  • 貸与した資料や機器を返却するのか
  • データを削除するのか
  • 秘密保持義務を契約終了後も続けるのか
  • 未払いの報酬はどうするのか
  • 契約終了時点で進行中の業務をどうするのか

などです。

契約は「始めるとき」だけでなく、終わるときまで含めて一つの取引です。

6.秘密情報・個人情報の取り扱い

「秘密を漏らしてはいけない」という内容だけでは、実際の運用まで決まっていないことがあります。

何を秘密情報とするのか、誰に開示できるのか、契約終了後はどうするのかなどを確認する必要があります。

また、業務の中で個人情報を扱う場合には、単に「秘密保持」と書くだけではなく、実際の業務内容に応じてどのように取り扱うのかを整理することも重要です。

7.成果物や資料の権利関係

制作物や資料などを納品する契約では、

「納品したものは、誰がどのように使えるのか」

という点が抜けやすくなります。

たとえば、

  • 作成した資料を相手が自由に利用できるのか
  • 二次利用できるのか
  • 修正・改変できるのか
  • 元データを渡すのか
  • 作成者側にも利用できる範囲を残すのか

などです。

「納品する」という事実と、その後どのように利用できるのかは別の問題として整理する必要があります。

8.途中で契約をやめる場合

契約期間を決めていても、「途中でやめる場合」の条件が抜けていることがあります。

たとえば、

  • どのような場合に解除できるのか
  • 何日前に通知するのか
  • すぐに解除できる場合はあるのか
  • 途中まで行った仕事の報酬はどうするのか
  • 既に支払った費用をどうするのか

といった点です。

契約を問題なく続けられる場合だけでなく、予定どおりに進まなくなった場合の出口も考えておくと、契約内容がより具体的になります。

9.トラブルが起きた場合の対応

契約書を作るときは、できればトラブルになってほしくないものです。

そのため、トラブルが起きた場合のことを後回しにしがちです。

しかし、契約書では、

  • まず当事者間で協議するのか
  • どのような手順で問題を解決するのか
  • どこの裁判所を利用するのか

などを定めることがあります。

もちろん、すべての契約に同じ条項を入れればよいわけではありません。

その取引で実際に起こり得る問題は何かを考えたうえで必要な内容を決めることが重要です。

10.「契約書に書いていないこと」の扱い

意外に見落としやすいのが、契約書に書いていない事項についての扱いです。

契約書を作る際には、決めたことを一つずつ書いていくことに集中します。

しかし、実際の取引では、契約書を作った時点ですべての事態を想定できるとは限りません。

そのため、契約書に定めのない事項が発生した場合に、当事者間で協議して決めるといった規定を置くことがあります。

ただし、これだけで具体的な問題を解決できるわけではありません。

大切なのは、「何が決まっていて、何がまだ決まっていないのか」を契約書を作る段階で把握しておくことです。

抜けやすい項目は「契約書の知識」だけでは見つからない

契約書を作るときに難しいのは、条項の文章を書くことだけではありません。

むしろ、その前にある

「この取引では、実際に何が行われるのか」

「誰が、いつ、何をするのか」

「予定どおり進まなかった場合はどうするのか」

「お金や成果物は、どのタイミングで動くのか」

といった内容を整理することが重要です。

契約書のひな形を使う場合でも、自分たちの取引とひな形の内容が合っているとは限りません。

ひな形には書かれていない条件が必要になることもあれば、逆に、自分たちの取引には関係のない条項が含まれていることもあります。

そのため、契約書を作るときは、ひな形の文章を埋めるだけではなく、実際の取引内容に合わせて一つずつ条件を確認することが大切です。

契約書を作る前に確認したいこと

最後に、契約書を作る前に次のような点を確認してみましょう。

  • 何をする契約なのか
  • 誰が何をするのか
  • いつまでに行うのか
  • いくら支払うのか
  • いつ、どのように支払うのか
  • 追加作業が発生したらどうするのか
  • 納品・確認はどのように行うのか
  • 契約を途中で終了する場合はどうするのか
  • 契約終了後に何をするのか
  • 秘密情報や資料をどう扱うのか
  • 成果物を誰がどのように利用できるのか
  • 問題が起きた場合にどう対応するのか

これらを整理していくと、単に「契約書に何を書けばいいか」ではなく、そもそも当事者間で何を決めておく必要があるのかが見えてきます。

契約書は、文章を整えるだけの書面ではありません。

実際の取引内容を整理し、必要な条件を確認したうえで、それを契約書という形に落とし込んでいくことが大切です。

大野

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