行政行為の種類と処分性の違いとは?行政書士試験で混同しやすいポイントを解説

行政書士試験の行政法を勉強していると、「許可」「取消し」「拒否処分」「行政指導」「通達」など、さまざまな用語が登場します。

その中で、混乱しやすいのが、行政行為の種類を覚えることと、処分性を判断することの違いです。

例えば、営業許可の取消しは処分に当たります。一方、行政庁が国民に助言をしたり、行政機関内部に通達を出したりしても、それだけでは原則として処分に当たりません。

では、なぜこのような違いが生じるのでしょうか。

この記事では、具体例を使いながら、行政行為の種類と処分性の違いを整理します。

目次

1.そもそも「行政行為の種類」とは?

行政行為の種類とは、行政庁がどのような法的作用を行っているのかを分類したものです。

例えば、次のようなものがあります。

種類意味具体例
許可一般的に禁止されている行為を、特定の場合に認める営業許可
下命一定の行為をするよう命じる違法建築物の除却命令
禁止一定の行為をしてはならないとする営業停止命令
取消し既に成立している法律関係などを消滅させる営業許可の取消し
撤回後から生じた事情などを理由に、行政行為の効力を将来に向かって失わせる許可の撤回

このように、行政庁がどのような法的作用を行っているかを整理するのが、行政行為の種類を学ぶということです。

ただし、ここで挙げた分類には、行政法上の伝統的な分類と、行政実務で使われる分類が含まれています。また、行政庁が行った行為の名称だけで、その行為が必ず行政事件訴訟法上の「処分」に当たると決まるわけではありません。

2.では、「処分性」とは何か?

処分性とは、簡単にいうと、行政庁の行為が取消訴訟の対象となる「処分」に当たるかどうかという問題です。

行政事件訴訟法3条2項は、取消訴訟について、行政庁の処分その他公権力の行使に当たる行為の取消しを求める訴訟と定めています。

つまり、行政庁が何らかの行為をしたからといって、必ず取消訴訟で争えるわけではありません。

例えば、市役所の職員が住民に対して「この建物は危険なので、補修したほうがよいですよ」と助言したとします。

住民にとっては重要な話かもしれません。しかし、通常、その助言だけで住民の権利や義務が直接変わるわけではありません。

そのため、通常の助言は処分には当たりません。

一方、市が法律に基づいて建物の除却を命じた場合には、所有者に法的な義務が生じるため、原則として処分に当たります。

ここで考えているのは、行為の名称ではなく、その行為が持つ法的な性質や効果です。

3.同じ「営業」に関する行為でも、処分性は違う

具体的な例で考えてみましょう。

例① 営業許可を取り消された

行政庁が、法律に基づいて営業許可を取り消したとします。

この場合、営業できる法的地位が失われます。

行政庁の行為によって法的な効果が直接生じるため、原則として処分性が認められます。

例② 営業について行政指導を受けた

行政庁から「営業時間を短くしたほうがよいですよ」と助言されたとします。

この助言だけでは、通常、営業許可が取り消されるわけでも、営業時間を短くする法的義務が発生するわけでもありません。

したがって、通常の行政指導には原則として処分性がありません。

例③ 営業に関する通達が出された

行政庁が、下級行政機関に対して「このような営業は、こういう基準で取り扱いなさい」という通達を出したとします。

通達に従って行政機関が行動することで、国民に現実の不利益が生じることはあります。

しかし、通達は原則として行政組織内部への指示であり、国民の権利や義務を直接変えるものではありません。

そのため、通達そのものは原則として取消訴訟の対象となりません。

通達に基づいて個別の処分がされた場合には、その処分を争えるかどうかを別に検討します。

4.「処分の種類を覚えること」と「処分性を判断すること」は別

ここが、今回のテーマで最も重要なポイントです。

例えば、行政法の勉強で「許可」「取消し」「拒否処分」などを覚えたとします。

しかし、これらの言葉を覚えただけでは、処分性の問題をすべて解けるようにはなりません。

なぜなら、次の2つは、そもそも考えている問題が違うからです。

行政行為の種類を覚えること

「行政庁は、どのような法的作用を行ったのか」を分類することです。

例えば、営業許可を取り消す行為なら、取消しという法的作用に注目します。

処分性を判断すること

「その行政庁の行為は、取消訴訟の対象となる処分なのか」を判断することです。

例えば、行政庁が「許可を取り消す」と言ったとしても、それが単なる説明や予告にすぎないなら、直ちに処分性が認められるわけではありません。実際にどのような行為がされたのか、その法的効果は何かを検討する必要があります。

つまり、行政行為の種類は行為の法的な性質を分類するための知識であり、処分性は取消訴訟の対象となるかどうかを判断するための問題なのです。

5.行政書士試験で重要な「名前だけでは判断できない」という考え方

処分性の判例では、行為の名称だけで結論を出してはいけません。

代表的な例が、病院開設中止勧告事件です。

都道府県知事による病院開設中止勧告は、行政指導の形式をとっていました。しかし、勧告に従わなかった場合に生じる制度上の影響などを踏まえ、最高裁は処分性を認めました(最高裁平成17年7月15日判決)。

通常の行政指導には処分性がないとしても、行政指導という名前だけを理由に、必ず処分性が否定されるわけではありません。

同じように、通達についても、国民に現実の影響が生じることと、通達そのものが取消訴訟の対象となることは別の問題です。

行政書士試験では、行為の名称だけで判断するのではなく、具体的な法的効果や制度の仕組みを考えることが重要です。

6.問題を解くときは、2段階で考える

処分性の問題に出会ったら、次の順番で考えてみましょう。

第1段階:行政庁は何をしたのか?

許可をしたのか、許可を拒否したのか、命令をしたのか、それとも助言や通達をしただけなのか。

まず、問題文に書かれている行為の内容を正確に把握します。

第2段階:その行為は取消訴訟の対象となるか?

その行為自体が、公権力の行使として、国民の権利義務や法的地位に直接影響を及ぼすものなのかを検討します。

通常の助言や内部通達なら、原則として処分性は認められません。

一方、営業許可の取消しや法律に基づく義務付け命令などは、通常、処分性が認められます。

ただし、実際には法令の仕組みや判例の考え方も踏まえて判断する必要があります。

7.まとめ

行政行為の種類を覚えることと、処分性を判断することは、関連していますが、同じ勉強ではありません。

  • 行政行為の種類:行政庁がどのような法的作用を行ったのかを分類する。
  • 処分性:その行為が取消訴訟の対象となる「処分」に当たるかを判断する。
  • 重要な注意点:行政庁の行為の名称だけでは、処分性は決まらない。

行政書士試験では、許可・取消し・拒否処分などの基本的な分類を押さえたうえで、処分性に関する判例を通じて、どのような行為が取消訴訟の対象となるのかを理解していきましょう。

「行政庁が何をしたか」と「その行為を取消訴訟で争えるか」は別の問いである。

この区別を意識することが、処分性の理解につながります。

大野

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