遺言書は、故人の最終意思を示す大切な書類です。もし家や金庫、銀行の貸金庫などで遺言書を見つけた場合、つい「中を確認したい」と思うかもしれません。しかし、勝手に開封したり、自分に有利に書き換えたりすることは法律違反となり、重大なリスクがあります。今回は、遺言書発見時に想定される事態や、実際に起こりうるトラブル、そして違法行為をした場合の影響について解説します。
目次
1. 遺言書を勝手に開封することのリスク
想定されるトラブル
- 民法上の無効・損害リスク
自筆証書遺言の場合、民法第1004条や第1006条などにより、遺言者本人の署名・押印がない改ざんは無効になります。また、他人が勝手に開封した場合、後日トラブルの原因になります。 - 刑事責任の可能性
遺言書の内容を知るために封を破ることは、遺言書の損壊や窃盗行為とみなされる場合があります。特に自分の利益のために操作した場合、詐欺罪や文書偽造罪など刑事罰の対象となる可能性もあります。
実際に起こったケース
- 遺言書を封を破って読んだ相続人が、内容を勝手に家族に伝えたことで相続争いに発展した例があります。結果として、家庭裁判所が遺言書を正式に検認し、改ざんの有無を調べることになりました。
2. 自分に不利だから書き換える行為のリスク
想定されるトラブル
- 遺言書の無効化
書き換えや付け加えは、遺言書の効力を消失させる原因になります(民法第1025条、刑法第159条文書偽造罪など)。 - 刑事責任
書き換えは文書偽造・変造にあたり、刑法による罰則(最高で10年以下の懲役など)が科せられる可能性があります。 - 相続トラブルの拡大
後から改ざんが発覚すると、信頼性の問題から遺言書全体が無効扱いになり、相続人間の争いが激化することがあります。
実際に起こったケース
- 相続人が遺言書を自分に有利に書き換えた結果、他の相続人が家庭裁判所で「遺言書偽造」を主張。刑事告発も検討される事態になった例があります。
3. 遺言書を発見したらどうすべきか
- 封を開けずに保管する
遺言書は勝手に開封せず、封のまま安全な場所に保管してください。 - 家庭裁判所で検認を依頼する
自筆証書遺言の場合、民法第1004条の規定に従い、家庭裁判所で検認手続きを行います。検認とは、遺言書の現状を確認し、開封してもよいかを裁判所が判断する手続きです。 - 専門家に相談する
不安な場合は、行政書士や弁護士に相談して、法的手続きを踏みながら遺言書を扱うことが重要です。
4. まとめ
- 遺言書は故人の意思を尊重する法律文書であり、勝手に開封したり書き換えたりすることは民事・刑事のリスクがあります。
- 実際の相続トラブルの多くは、遺言書の扱い方を誤ったことから起きています。
- 発見した場合は、封を開けずに家庭裁判所で検認すること、そして必要に応じて専門家に相談することが最も安全です。
大野