最近、「石破総理が辞任しない」とのニュースが注目を集めています。一部では「自民党総裁は辞めるかもしれないが、総理大臣の座は続けるつもりらしい」との声もあり、政治の仕組みに対する疑問を持った方も多いのではないでしょうか。

今回は、「内閣総理大臣」と「自民党総裁」、それぞれの地位の違いと、その辞職・任期の違いについて、わかりやすく解説します。

「内閣総理大臣」と「自民党総裁」は別の立場

まず大前提として、「内閣総理大臣(総理)」と「自民党総裁(総裁)」は、法律的にも制度的にもまったく別の立場です。

  • 内閣総理大臣:日本国憲法に基づき、国会の指名によって任命される政府のトップ。
  • 自民党総裁:自民党という政党内での代表者であり、党員・議員らによって選ばれます。

つまり、「自民党総裁だから総理になれる」のではなく、「自民党が与党として国会で多数を占めているから、その総裁が総理に選ばれる」構図なのです。

総理大臣の任期:国会が決める

総理大臣には、実は任期というものはありません。憲法上、総理大臣は「衆議院議員の中から、国会の指名で選ばれる」ことになっており、任期は明示されていません。

では、どうなったら辞めるのかというと、次のようなケースです。

  1. 本人の辞任表明
  2. 病気などで職務継続が困難
  3. 内閣不信任決議が可決された場合(総辞職か衆議院の解散を判断します)
  4. 衆議院が解散されたあと、総選挙を経て新たな首班指名が行われたとき(総辞職)

したがって、総理が辞めるかどうかは、国会の動きや本人の意向によるところが大きいのです。

自民党総裁の任期:党のルールで決まる

一方、自民党総裁には明確な任期があります。2025年現在の自民党規約では、任期は3年、連続3期までと定められています。

また、党内の支持を失えば、任期途中であっても辞任勧告や不信任の形で総裁の座を追われる可能性もあります。

党内の力学によって左右される総裁職と、国会全体の意思に基づく総理職。この点が両者の大きな違いです。

「総裁を辞めても、総理を続ける」は可能か?

理論上は可能です

たとえば、自民党内で不満が高まり、総裁の職を辞任・辞任勧告されたとしても、国会で内閣不信任決議が可決されない限り、総理大臣を続けることはできます。

これは過去にも似たような事例があります。

実例:細川護熙内閣と羽田孜内閣(1994年)

細川総理が辞任後、次期総理が決まるまでの間、「党代表ではないが、暫定的に総理を務めた」ことがありました。逆に言えば、「政党の代表でなくても、国会の支持があれば総理を続けることができる」ことを示す例です。

まとめ:政治の安定は「制度」と「信頼」の両輪

  • 自民党総裁は政党内の立場
  • 内閣総理大臣は憲法に基づく国家の最高責任者
  • 総裁を辞めても、総理は辞めなくていい(ただし、国会の信任が前提)

つまり、「総裁を降りても、総理の座にはとどまる」という選択肢は制度的に存在します。しかし、与党の支持を失った総理が、国会で安定的な政権運営を続けるのは極めて困難です。

今後の石破総理の去就に注目が集まる中で、私たち国民としても、制度の背景やその意味を理解しておくことが大切です。

※この記事は2025年7月時点の報道および制度をもとに構成しています。

大野