はじめに:建設的な議論とは何か?

私たちは日々、仕事、家庭、SNSなど様々な場面で「議論」や「話し合い」を行います。しかし、知らず知らずのうちにトートロジー(同語反復)や循環論法(同じ主張の繰り返し)に陥ってしまい、議論が空回りしてしまうことは少なくありません。

この記事では、トートロジーと循環論法の違いを踏まえた上で、建設的な議論を進めるために必要な思考のクセ、意識すべき点、話し方のコツについて、実践的にわかりやすくご紹介します。

トートロジーと循環論法とは?【簡単おさらい】

トートロジーとは?

トートロジーとは、「同じことを言葉を変えて繰り返すだけで、意味のある新情報を何も加えていない表現」のことです。

例:「彼は優しい人だ。なぜなら、人に対して優しいからだ。」

このように、主張と理由が本質的に同じで、論理的な進展がありません。

循環論法とは?

循環論法とは、「ある主張を証明するために、その主張自身やそれと同等のことを前提にしてしまう」論法です。

例:「彼の意見は正しい。なぜなら、彼は常に正しいことを言うからだ。」

主張の正当性を証明するための根拠が、最初の主張に依存しているため、議論がぐるぐる回るだけになってしまいます。

なぜトートロジーや循環論法が問題なのか?

  • 議論が前進しない(納得や合意に至らない)
  • 相手に説得力を持たせることができない
  • 誤解や摩擦の原因になる
  • 感情論や詭弁にすり替わる危険がある

特にビジネスや法律、公共の場での議論では、主張に根拠と具体性が求められるため、これらの論法は致命的です。

建設的な議論をするために意識すべきこと【5つのポイント】

1. 「なぜそう思うのか?」を問い続ける

トートロジーや循環論法を避ける最も簡単な方法は、自分の発言に**「なぜ?」を繰り返す**ことです。

理由を説明しようとしたときに、同じ言葉が出てきたら要注意。論理の根拠が同じ場所をぐるぐる回っていないか自問しましょう。

2. 根拠と意見を分けるクセをつける

  • ✕「これは正しい。なぜなら正しいからだ。」
  • ○「これは正しい。なぜなら○○という事例やデータに基づいているからだ。」

意見(主張)と根拠(ファクトや論拠)を明確に分けることで、説得力ある議論になります。

3. 主張には具体例・比較・データを添える

抽象的な主張は、トートロジーに見えやすくなります。

○:「この制度は効率的だ。実際、過去3年間で導入した企業は生産性が20%向上した。」

具体的・定量的な情報を伴うと、論拠の強度が増します。

4. 「立場」と「前提」の違いを意識する

循環論法に陥る人は、無意識に「自分の前提」が絶対だと信じてしまっています
「なぜそれが前提として妥当か?」を常に検証しましょう。

5. 相手の意見を聞きながら、問い返す習慣を持つ

建設的な議論は、主張の押し合いではなく、問い合いです。

「なるほど、そう思うのですね。では、その理由は何でしょう?」

**議論とは「問答」**であり、「説明責任のキャッチボール」だという意識を持ちましょう。

自分では気づかずトートロジーや循環論法を使ってしまう人は?

✔ 自分の話を録音・書き出してみる

声に出したり書いてみると、自分の論理の飛躍や繰り返しが見えるようになります。

✔ フィードバックを受け入れる姿勢を持つ

周囲の人から「それって理由になってないよ」と指摘されたら、反発せずに一度冷静になることが大切です。

他人がトートロジー・循環論法に陥っているときの対処法

1. 攻撃しない、でも放置しない

✕「それって意味ないよ」
○「それって、つまりこういうこと?じゃあ、どうしてそう思うの?」

質問形式で丁寧に「論点の整理」を促すと、相手も冷静になりやすいです。

2. 第三の視点・例を使って気づかせる

議論がこじれているときは、別の文脈や具体例に置き換えてあげると、相手が自分の思考の穴に気づくことがあります。

まとめ:建設的な議論の鍵は「問い」と「根拠」

  • トートロジーや循環論法は、「納得を生まない議論」の代表例
  • 具体性と根拠、そして問い返しの姿勢が大切
  • 自分の前提を疑うこと、相手を詰めずに整理に導くこと

建設的な議論を通じて、職場でもプライベートでも、対話の質を高めていきましょう

大野