はじめに:歴代天皇の呼称、いつから「天皇」になったのか?

歴史を学ぶときに混乱しがちなポイントのひとつが、「天皇」の呼び方です。
実は、すべての天皇が最初から「天皇」と呼ばれていたわけではありません。

この記事では、神武天皇から天武天皇に至るまでの呼称の変化を、時代別に年表で整理しながら解説します。

■ 天皇の呼称変遷 年表【簡易版】

時代在位天皇実際の呼称解説
紀元前660年ごろ(伝承)神武天皇呼称なし(後世に「天皇号」追贈)神話上の存在、実在の証拠なし
1~3世紀(弥生~古墳初期)初期天皇(例:崇神天皇)呼称不明(後世に「天皇号」)一部に実在説あり。記紀の記述が中心
4~5世紀(古墳時代)倭の五王(讃・珍・済・興・武)「大王」(おおきみ)中国史書に「倭王」として登場。実在性が高い
6世紀(飛鳥時代前期)継体~欽明天皇など「大王」日本国内でも「大王」と呼称された痕跡あり
7世紀(推古~天智)推古天皇・舒明天皇・天智天皇など「大王」または混在漢文文書ではまだ「大王」表記が中心
7世紀後半~(天武~)天武天皇以降「天皇」日本で初めて「天皇」称号を正式使用
現代今上天皇(徳仁)「天皇」一貫して「天皇」称号を使用。神格性は薄れる

■ コラム:天皇号が定着した背景とは?

「天皇」という称号が定着したのは、国家の制度化と国際関係の変化が大きく関係しています。

● 天武天皇が「天皇」称号を用いた理由

  • 白村江の戦い敗北後、中国(唐)との対等外交を模索
  • 律令制導入で、天の意思を受けた唯一の支配者=天皇という立場を確立
  • 「大王」では中国の「皇帝」より格下に見られるため

● 天皇という言葉の意味

  • 「天」=神・天上の存在
  • 「皇」=中国での最高君主の称号(皇帝)

日本はこれを組み合わせて、「天皇(てんのう)」というオリジナルの称号を創出しました。

■ よくある質問(FAQ)

Q1:神武天皇は本当に存在したの?
A:考古学的には実在の証拠はなく、あくまで神話上の人物とされています。

Q2:なぜ後世の天皇に「天皇号」がつけられているの?
A:8世紀に『日本書紀』『古事記』が編纂される際、歴代の王たちに「天皇号」を追贈することで正統性を持たせたためです。

Q3:「大王」は日本語?それとも中国語?
A:元は日本語の「おおきみ(大きな君主)」で、対外的には中国の史書に「倭王」と記されます。

まとめ:呼称の変化は、日本の国づくりの証でもある

「大王」から「天皇」への変化は、単なる名前の違いではなく、日本という国家が独立したアイデンティティを形成していく過程でした。

呼称時代意味
大王古墳~飛鳥時代前期倭の支配者、国際的には「王」
天皇飛鳥後期以降国家の元首、神格的・独立性を示す

このような背景を知ることで、歴史の奥深さと、現代につながる天皇制の意味を理解する手助けになります。

大野