ロゴ・イラスト・バナー・パッケージなど、デザイナーによる創作物は、ビジネスやブランディングにおいて欠かせない存在です。しかし、完成したデザインの「著作権」が誰に帰属するのか、という点が曖昧なまま業務が進んでしまうことも少なくありません。
実際、「せっかく高いお金を払ってロゴを作ったのに、自由に使えないとは思わなかった」「ポートフォリオに勝手に載せられて困っている」といった相談も、事業者・デザイナー双方から多く寄せられます。
ここでは、デザイナーとクライアント間で起こりがちな著作権トラブルと、それを防ぐための契約上のポイントを解説します。
著作権は、原則“デザイナー側”にある
まず大前提として、著作権法では「創作した者(著作者)が著作権を持つ」とされています。つまり、業務委託でロゴを作ってもらった場合、そのロゴの著作権は、特段の合意がない限りデザイナー側に帰属することになります。
これは「報酬を支払ったのだから自分のもの」と考えがちな発注者にとっては意外かもしれませんが、実務上非常に重要なポイントです。
使用権と著作権の違いを知る
契約書や依頼内容に「使用権を譲渡する」「使用許諾を与える」と書かれている場合、著作権そのものは移転していない可能性があります。
たとえば、「印刷物でのみ使用可」「SNSでは使用不可」「商標登録不可」といった制限がある場合もあるため、どこまで使ってよいのか、事前に明確にすることが不可欠です。
トラブルを防ぐための契約条項3選
デザイン業務を委託する場合には、以下の3つの観点から契約内容をしっかり詰めておくことをおすすめします。
① 著作権の譲渡有無
「納品と同時に著作権を譲渡する」「商標登録を目的とした使用を許諾する」など、権利の帰属と使用範囲を明確に記載します。譲渡する場合には、「著作者人格権(氏名表示権や同一性保持権)を行使しない」旨も盛り込みましょう。
② 使用範囲の明示
「Webサイト、SNS、印刷物などに利用可能」といった形で、どのメディアでどのように使うかを具体的に記載。曖昧な表現はトラブルの元になります。
③ ポートフォリオ利用の可否
デザイナーが自分の実績として、納品したデザインをポートフォリオやSNSに掲載したいというケースは多く見られます。掲載を許可するか、期間や条件付きで認めるか、契約時に合意しておくのが望ましいです。
まとめ:契約はクリエイティブの味方
デザイナーとクライアント、どちらか一方が悪いわけではなく、トラブルの多くは「事前のすり合わせ不足」によって起きています。著作権は感情や誠意ではなく、“法律”と“契約書”で整理されるべき問題です。
信頼関係があるからこそ、曖昧なままにせず、双方の権利と責任を明確にしておく。これこそが、良好な関係を長く続けるための鍵ではないでしょうか。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本