不動産登記には公示力はあるが、公信力は認められてない。ということをどこかで聞いたことがあるのではないでしょうか?
①公示力
公示力とは、今誰に権利があるのか目に見えるような形にするための制度(公示の原則)です。
つまり、物権変動(物権の発生、変更、消滅。例えば所有権の移転)について外から認識できるように要求する制度です。
外から認識できなければ、安心して取引関係に入ることはできないため(所有者でない人と売買契約をしても所有権は手に入れられませんし、買ったものに抵当権が付いていれば損をすることになります)です。
不動産登記には公示力が認められているといわれるのは、民法第177条で対抗要件として「登記」を要求しているためです。
動産については、「引渡し」を対抗要件としており(民法第178条)、こちらも公示力を認めています。
つまり、物権変動の「目に見える形」として「登記」や「引渡し」を要求しており、これが「公示力」となり、「対抗要件」となります。
②公信力
公信力とは、物権変動についての外形があり、それを信じて取引をしたものを保護しようとする制度です(公信の原則)。
つまり、本当の権利状態と異なる外観が存在した場合に、その外観を信じて取引関係に入ったものを保護する制度です。
不動産登記には公信力が認められていない、ということは、不動産登記が本当の権利状態と異なっていて、それを信じて取引をしたとしても保護されない。ということになります。
これは、本当の権利状態と異なっている登記が多く存在していること、不動産取引はそう多くなく、取引に入ろうとするものに慎重さを求めてもよいということから、公信力は認めていないとされています。
なお、動産については民法第192条「即時取得」という形で公信力を認めています。
大野