行政書士試験、平成27年記述問題です。
「権原の性質上、占有者に所有の意思のない他主占有が、自主占有に変わる場合として2つの場合がある。民法の規定によると、ひとつは、他主占有者が自己に占有させた者に対して所有の意思があることを表示した場合である。もうひとつはどのような場合か、40字程度で記述しなさい。」
こそばい問題ですね。
条文の規定を直接聞いてきています。
民法第185条に規定があります。
「権原の性質上占有者に所有の意思がないものとされる場合には、その占有者が、自己に占有をさせた者に対して所有の意思があることを表示し、又は新たな権原により更に所有の意思をもって占有を始めるのでなければ、占有の性質は、変わらない。」
問題文では、①その占有者が、自己に占有させたものに対して所有の意思があることを表示し、の部分が書かれていますので、又は以下を解答すればよいということになります。
①の例としては、借りている物の所有者に対して、「今日からこれは私のものです」ということ、です。
問題に戻りますが、
②(他主占有者が)新たな権原によりさらに所有の意思をもって占有を始める、が回答となります。
例えば、Xが所有する甲建物について賃貸借契約をXと交わしていたYが、甲建物をXから買い受けた場合です。
売買契約を締結し、甲建物を買い取ったことが「新たな権原」の取得ということになります(売買という法律上の原因により所有者としての意思をもって占有を始めることになります)。
そして、所有の意思の有無は、占有ができるようになった事実(占有取得原因事実)によって外形的に判断されます(占有者がどう思っていたかは問いません)。
Yは甲建物を買い取ったわけですから、売買代金を支払っていますし、固定資産税なども支払いなども行うことになるでしょうから、所有の意思は外形から当然認められます。
Xから甲建物を借りたYという事実だけならば、Yの占有は他主占有ですが、Xから甲建物をYが買い取った事実が加わると、Yの占有は自主占有に代わります。
たまに出題される、こういった問題は好きです。
大野