最後にその他についてみていきましょう。

①借地権の存続期間を更新後に建物が滅失してしまった場合(法第8条)
ア)存続期間中
借地権の存続期間中に建物が滅失したとしても借地権は消滅しません。

イ)更新後
借地権の存続期間更新後、建物が滅失した場合は解約(放棄)を申し入れることができます(更新前の存続期間中は解約の申し入れはできません。貸主も地代を当てにしているためです。)。
 A)借地権者(借主)
 申し入れ後3か月経過すると借地権は消滅します。
  →建物もないのに地代だけを払うことになってしまうのを避けるため
 B)借地権設定者(貸主)
 存続期間更新後に借地権者が、借地権設定者の承諾を得ないで存続期間を超えて存続する建物を築造した(その後に建物が滅失した)場合に限ります。
 申し入れ後3か月経過すると借地権は消滅します。

②借地権の地代の変更について揉めてしまった場合(法第11条)
 当事者は地代等の額の増減を請求することができます。
 当事者間で協議が整わないときは、裁判で地代について判断してもらうことになります。

ア)増額請求の場合
賃借人は、増額が正当と裁判で確定するまでは、賃借人が相当と認める額の賃料(今まで支払っていた額)を支払えばよいということになっています。
ただし、裁判が確定したときに既に支払った額に不足がある場合には、不足額に年1割の利息をつけて支払わなくてはなりません。

イ)減額請求の場合
賃貸人は、減額が正当と裁判で確定するまでは、相当と認める額の賃料の支払いを賃借人に請求することができます。
ただし、裁判が確定したときに既に支払いを受けた額が正当とされた賃料の額を超えている場合には、超過額に年1割の利息をつけて返還しなければなりません。

③建物の賃料の変更で揉めてしまった場合(法第32条)
 借地権の場合と同じです。

④建物の転借人の対抗(法第34条)
賃貸人は、賃貸人の承諾を得て賃借人から建物を又貸しされた人(転借人)に対して、賃貸借が終了したことを主張できるでしょうか。

賃貸人と賃借人との建物賃貸借契約の終了契機として以下のものがあります。
ア)合意解除(双方の合意)
イ)賃貸借期間の満了又は解約の申し入れ(一方からの申出)
ウ)賃借人の債務不履行解除

ア)合意解除の場合(転借人に対抗できません)
賃貸人と賃借人の建物賃貸借契約が合意解除されたとしても、転貸借契約(賃借人と転借人の契約)は終了しません。
なぜなら、賃貸人は転貸について承諾をしているため、賃貸借契約を解除したからと言って転借人に出ていけということは行動が矛盾していますし、転借人の信頼を害し不測の損害を与えかねないためです。

イ)期間満了または解約の申し入れの場合(法第34条)
期間満了又は解約の申し入れによって建物賃貸借契約が終了したとしても、それだけでは転貸借契約は終了しません(賃貸人は転借人に対抗できません)。
しかし、賃貸人が転借人に対して終了した旨の通知(賃貸借契約は終了したという通知)をすると、通知から6か月経過後に転貸借契約は終了します(賃貸人は転借人を追い出すことができます)。
もっとも、転借人が建物を引き続き使用継続していた場合には、賃貸人は遅滞なく異議を述べない限り、賃貸借契約(貸主と借主の契約)が更新されてしまいます(法第26条2項 転借人の使用継続を賃借人の使用継続と考えます)。

ウ)賃借人の債務不履行解除の場合(転借人に対抗できます)
転貸借契約も終了します(転借人を追い出すことができます)。
これは賃借人、転借人を保護する必要はないためです。

⑤借地上の建物の賃借人の明け渡し猶予(法第35条)
・借地権の目的である土地の上の建物について賃貸借契約がなされている場合で
・借地権の存続期間の満了によって建物の賃借人が土地を明け渡すべきとなったとき
・建物の賃借人が
・借地権の存続期間が満了することを存続期間満了の1年前までに知らなかった場合
・存続期間が満了することを知った時から最高で1年間
・(建物の賃借人の請求により)裁判所は土地の明け渡しを猶予することができます。

⑥居住用建物の特例(法第36条)
・居住用の建物の賃借人が
・相続人なしに死亡した場合で
・婚姻又は縁組の届け出をしていないが、建物賃借人と事実上夫婦又は養親子と同様の関係にあった同居者がいるときは、
・その同居者は、建物の賃借人の権利義務を承継することができます。
・ただし、賃借人の死亡を知ってから1か月以内に承継しないことを宣言した場合は承継しません。

大野