旧478条の債権の準占有者に対する弁済は弁済をした者が善意無過失の場合には有効となるという条文である。
これが準占有者という言葉がなくなり、旧480条の受取証書の持参人に対する弁済の有効性も消滅した。
代わって新478条は受領権者以外の者であって「取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者」に対してした弁済は弁済をした者が善意無過失であった場合に限り有効な弁済となる。
受取証書の持参人に対する弁済も、旧法下のように受取証書を持っている者に対する弁済は原則有効とするのはなしになり、この人が上記取引上の社会通念に照らして受領権者としての外観を有する者に当たるかを判断してあたるとして、弁済者が善意無過失なら弁済は有効となる。なお、この後は弁済を受けた者は不当利得となるのであるから真の権利者はこの者に返還請求を行使できる。
具体例でいうと銀行の預金通帳を拾った者がいた、この者が銀行に行き全額預金を下ろすと窓口で言うとする。この時、銀行としては本人確認をするだろう。この場合の銀行が債務者となる、ここでいう弁済した者となる。さて色々銀行が調べた結果、この目の前の人間が預金通帳の持ち主だろうと信じることにつき善意無過失であればこの弁済は有効となる。つまり通帳を拾った者に中身をすべて取られるということになる。
もちろんこれは刑法上は詐欺に当たる。では民事上はどういう処理になるかというとこれで銀行は債務を免れ、預金通帳の真の権利者がその後銀行に来て引き出そうとしてももはや引き出せないという結果になる。
銀行は免責されるということである。もちろん現実にはこの辺りのオペレーションが敷かれているとは思うが法的にはこのような結果になり、いわば成り済ました人間を見つけ出さない限り真の権利者は報われないという結果になる。
西本