⑳同様本稿も詐害行為取消権の解説を進めていく。債務者がある特定の債権者に対し(この場合、債務者には複数の債権者がいるのを前提とする)、その債権のために担保を供与した場合、(例えば、自己物件に抵当権を設定する、質権を設定するなどの行為が考えられる)か債務消滅行為(単に弁済が考えられる)その担保供与行為をした時点でその債務者に支払い能力が状態に陥っていたこと、かつ、その債務者と受益者(この場合にはある特定の債権者)とが通謀し他の債権者を害することを知っていた(害意ある受益者)場合には、他の債権者は詐害行為取消権を行使できる(新424条の3第1項1号2号)。
さらに、この場合で債務者の担保供与、債務弁済がその債務者がしなくてもよい(義務がない)場合、例えば、まだ弁済期日でない、債権者との契約上、新たな担保供与事由に当たらない場合などにも関わらず、その債務者が担保供与、弁済行為をしたのなら、それが債務者が支払い不能になる前30日以内、かつその行為が債務者と受益者とが通謀して他の債権者を害する意図を持って行われた場合には他の債権者は詐害行為取消権を行使できる(424条の3第2項1号2号)。
これも従来から判例で確立していた話である。条文化されたとだけ考えていてよいだろう。ただ30日以内などの具体的数字は新たに覚えておく必要はある。
西本