不倫――。
芸能ニュースやSNSでもよく取り上げられるこの言葉。
しかし、感情的な問題としてだけでなく、法律上はどう扱われるのかを理解している人は意外と少ないのです。
今回は、不倫が「民事上」でどのような問題を引き起こし、どのような責任を負うことになるのかを整理してみましょう。
■ 不倫は「不法行為」として損害賠償の対象になる
民法709条では、「故意または過失により他人の権利を侵害した者は損害賠償の責任を負う」と定められています。
配偶者がある者と肉体関係を持つ行為(いわゆる不貞行為)は、婚姻関係にある相手配偶者の権利(平穏な家庭生活)を侵害する不法行為と見なされ、損害賠償請求の対象となります。
■ 慰謝料請求の対象となるのは誰?
慰謝料を請求できるのは、原則として 「不倫された側の配偶者」 です。
そして、請求の対象は次の2人です。
不倫をした自分の配偶者(夫または妻)
不倫相手(第三者)
ただし、不倫相手に対して慰謝料請求が認められるためには、
その相手が「既婚者であることを知っていた(または通常知り得た)」ことが条件になります。
■ 慰謝料の金額の目安
慰謝料の金額は一律ではありませんが、一般的な裁判例では以下のような傾向があります。
不倫が原因で離婚に至った場合:100〜300万円程度
離婚には至らず婚姻関係が継続している場合:50〜150万円程度
ただし、婚姻期間・不倫の期間・反省の有無・社会的影響などの事情によって大きく前後します。
■ 離婚原因にもなる
民法770条は、離婚を請求できる事由として「配偶者の不貞行為」を明記しています。
つまり、不倫は離婚請求を正当化する法的な理由になります。
また、離婚の際に不貞行為があった側が慰謝料を支払うケースが多く、
さらに財産分与や養育費にも影響する場合があります。
■ 不倫された側も注意すべき点
感情的になって、相手の不倫をSNSで暴露したり、相手宅に押しかけて詰問したりすると、
逆に 名誉毀損 や 不法侵入 に該当する可能性があります。
正しい手段で権利を行使することが大切です。
弁護士や行政書士に相談し、証拠の整理や内容証明郵便の送付を検討しましょう。
■ まとめ
不倫は「道徳の問題」だけではなく、法律上の責任を伴う行為です。
その本質は、配偶者の権利を侵害したという「不法行為」にあります。
損害賠償(慰謝料)を請求される可能性がある
離婚原因として認められる
不倫相手も法的責任を負うことがある
人の感情と法律が交差するこの問題こそ、「民法」が最も人間らしい一面を見せる場面ともいえるでしょう。
南本町行政書士事務所 特定行政書士 西本