遺産相続をスムーズに行うために重要な遺言書。その中でも「公正証書遺言」は安全性が高く、相続トラブルを防ぐために広く利用されています。しかし、公正証書遺言を作成する際には証人の選び方や人数など、押さえておきたいポイントがあります。
今回は「公正証書遺言と証人」に焦点をあて、わかりやすく解説します。
1. 公正証書遺言とは
公正証書遺言は、公証役場で公証人が作成する遺言書です。特徴は以下の通りです。
- 自筆証書遺言のように手書き不要(公証人が文章化)
- 法的要件が整っているため無効になるリスクが低い
- 公証役場で原本を保管できるので紛失や改ざんの心配がない
このため、遺産相続トラブルを避けたい人に最も安全な遺言書といえます。
2. 公正証書遺言に証人が必要な理由
公正証書遺言を作る際には、証人2人以上の立会いが必須です(民法968条)。
証人の役割は主に以下の通りです。
- 本人の意思を確認する
遺言者が自由な意思で遺言を書いているかを確認します。 - 遺言内容の作成補助
公証人と遺言者の間で内容を正確に文章化する際にサポートします。 - 形式の適正確認
法律上必要な形式が整っているか、立会いによって確認されます。
3. 証人を選ぶときの注意点
証人にはいくつか注意点があります。
- 相続人や受遺者は避ける
相続人や財産を受け取る人は証人になれません。利益相反の疑いがあるためです。 - 成年であることが必要
未成年は証人になれません。 - 信頼できる人を選ぶ
遺言内容や立会い記録を確認する役割もあるため、信頼できる人を選ぶことが重要です。
証人になれない人一覧(公正証書遺言の場合)
区分 | 詳細 |
---|---|
相続人 | 遺言者の財産を受け取る可能性のある相続人全員(配偶者、子、兄弟姉妹など) |
受遺者 | 遺言で財産をもらう人(第三者でも受遺者に指定されている場合) |
未成年者 | 20歳未満(民法上の成年年齢に基づく) |
公証人の配偶者・直系血族 | 公証人やその配偶者、直系血族(子・親・祖父母・孫など) |
使用人・公証人補助者 | 公証役場で遺言作成を補助する職員など、利害関係がある場合 |
ポイント
- 相続人や受遺者は利害関係があるため必ず除外
- 未成年者は判断能力の観点から不可
- 公証人やその身内も関与することができない
- 証人は成年の第三者で信頼できる人が適しています
💡補足
証人は2人以上必要です(民法968条)。適格な証人を確保できない場合、公正証書遺言の作成はできません。
4. 証人がいない場合のリスク
- 証人が不適格な場合、遺言書自体が無効になる可能性があります。
- 遺言者の意思や遺言書の有効性が争われた場合、証人の証言が重要になります。
そのため、証人選びは慎重に行い、必要に応じて公証役場の案内に従うことが安全です。
5. 公正証書遺言作成の流れ(証人を含む)
- 公証役場に予約
遺言作成希望日を公証役場に連絡 - 証人2人以上を確保
信頼できる成年者で、相続人や受遺者ではない人 - 遺言内容の確認・調整
公証人が文章化、必要に応じて遺言者が修正 - 公証人と証人の立会いのもと署名押印
遺言者と証人が署名押印することで完成 - 公証役場で原本保管(希望時)
紛失や改ざんリスクを防止
6. まとめ
- 公正証書遺言は最も安全な遺言書であり、相続トラブル防止に有効
- 証人は2人以上必須で、相続人や受遺者は証人になれません
- 信頼できる証人を選び、立会いのもと作成することが重要
公正証書遺言を正しく作成することで、遺産相続における揉め事を未然に防ぐことができます。証人の選び方や立会いの手順をしっかり理解して、安全な遺言作成を心がけましょう。
大野